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一章 第1話 どうすりゃいいんだ?

初めての作品です。お手柔らかにどうぞ。

感想もお待ちしております。


”ビービービー [協働型ヒューマノイドロボット「和導《WADO》」WD-12] が暴走を始めました。全員今すぐに回避行動を取ってください”

警報音とともに、無機質な緊急アナウンスが体育館内に響き渡る。



「おいおいおい!こんなすし詰め状態でどうやって逃げろっていうんだよ」

「うわぁ!!やめてくれぇ!」- グシャ

「キャー!!死にたくない!死にたくない!」- ボキボキ



阿鼻叫喚の嵐とともに、今までに聞いたことない異音を全身で受けながら、ただただ先生や生徒、保護者たちの亡骸が広がっていく様子を見ていた。頭部を潰され身体のみが後からバタンと無機質な音を立てて倒れた生徒、雑巾のように身体をねじられて絶命した生徒。


小さい頃から俺達の生活を支えてくれていたはずのロボットたちが、今まで見たことのない動きで無慈悲に人間を蹂躙していく。


まさに地獄絵図。気持ち悪さすらもう無い。何も考えられない。

俺の元にも死神(ロボット)がやってきた。


ああ、俺の人生も終わりなんだな。

せめて、彼女にこの気持ちを伝えたかったな。


グシャ



「八百くん、授業中ですよ起きなさい」

「八百くん、八百くん、起きて!」


肩を揺すられた刺激で俺は目を覚ました。


「あ、頭がある!痛ぇな!う、う~んここはどこだ?」

「まぁ、変な夢でも見てたのかしら、早く150ページの冒頭から読んで」


俺は今生きてるのか?なぜだ?頭を潰されたはずじゃ?


先生の指示など耳に入らず、蓮司は動転していた。

吹島(ふきしま)先生、今は西暦何年の何月何日ですか?」

「何を変なこと聞いてるのよ、今は西暦2158年の7月7日、七夕でしょ!寝不足は良くないわよ!」


これは、ひょっとしてタイムリープしたのか。

まさか俺がタイムリープすることになるとは思ってなかったなあ。

しかも、西暦2159年ってことは2年生の夏かよ。

どうすりゃいいかなぁ、とりあえず目立っちゃうから教科書読んどくか...


------------

西暦2160年3月9日


「今日でこの学校も卒業か、思えば色々あったなあ」


俺、八百蓮司(やお れんじ)はこれまでの3年間を必死に振り返っている。

客観的に評価するならこの学園の男子高校生の平均を地でいくような男である。

成績は中の中、部活は帰宅部、外見も5段階中の3といった具合だが、強いて言うならボードゲームだけは大得意で、特に将棋アプリ「WOW将棋」で九段であることが取り柄だろうか。

地方都市、松舞市松舞の一地主である八百家の三男坊として何不自由なく、甘やかされて育ってきた。


最初は地主の息子ということでクラスの中で若干からかわれることもあったが、俺はこれまでの三年間で「調和」という普遍的なスキルを磨きあげ、完全に周りに溶け込むモブキャラとしての地位を確立した。そんな感じで3年間の懐古を刹那に済ませたころ、こちらに声をかけながら一人の男が近づいてきた。


「おい蓮司、卒業式もうすぐ始まるぞ!」


この男は同じクラスで友人の吉峰武寿(よしみねたけひさ)通称ヨシ。

小学生からのなじみで、もうかれこれ10年以上の付き合いがある。

俺より少し背が高く、勉強やスポーツも平均以上にでき、おまけにルックスも良い部類に入るだろう。

そんなヨシが俺と同じ3組である理由についてだが、それはこの学園の特殊なクラス分けシステムによるものだ。

簡単に説明すると、この学校では生徒の総合力(体力、思考力、理解力、精神力、道徳心の5つの指標)を100点満点で算出し、その点数に応じて配属クラスが決定される。

点数は筆記試験や日頃の生活態度、課外活動などの成果に応じて与えられ、各学年150人の内の上位30人が1組(Sクラス)、残りは特に点数関係なく2~5組までバランス良く振り分けられると聞いている。生徒は自分の点数を知るすべがないため、いい意味で分断が起こりにくいシステムと言えるかもしれない。まあ、ヨシと同じクラスになったのは偶然ということだ。


「卒業式は9時から体育館だよな、もうそろそろ行くか」


そしてヨシと2人で卒業式の入場待機場所まで向かうため、俺達3年生のいる2階から1階に降りる階段に向かう廊下を歩いていると、階段にさしかかる目前の、廊下を曲がってすぐの見えづらい端の場所に黒猫柄の刺繍が施された薄紫色のシンプルなかわいらしいハンカチが落ちていることに気づいた。

「誰のだろう?FUWAってもしかしてSクラスの不破さんのかな?」

蓮司はローマ字でFUWAと書かれたハンカチを拾い、不破を探し始めた。


「ハンカチを落とすなんて不破さんも人間っぽいところあるんだな」

「まあ確かに絵に描いたような完璧超人って感じだもんなぁ」


不破玲奈(ふわ れいな)はこの学園の元生徒会長である。成績優秀でスポーツ万能、性格も良くおまけに類いまれな美貌も持ち合わせているという、非の打ち所がなさ過ぎる優等生だ。

平凡な俺とそんな優等生では関わりがなさそうなものだが、俺は彼女と一度だけ話したことがある。

それは2年生の夏休み直前、読書にハマり、タイトルで興味が惹かれる本を探しに学園の図書館に手頃な本を借りに行ったときのことだ。

この学園の図書館は蔵書数も多く、割と最近刊行されたものも幅広いジャンルで取りそろえられているため、わざわざ本屋に行って買うよりも、断然コスパが良い。そのため俺は夏休み前の放課後の時間を余さず使ってゆっくりと本を選んでいた。


「なんか面白そうな本ないかなあ」

色々なコーナーをブラブラ見て回っていると、人工知能の専門書が並ぶコーナーでにらめっこしている不破の姿があった。

ボブカットの美しい特徴的な銀髪に黒猫の髪留めをしていて、学園のものなら誰でも一目見ただけで彼女と分かる。


「これも違う、うーんこれも違うわね」

なにやら相当選書に苦労している様子だ。

本とにらめっこしている彼女は可憐でありながらも、芯の強さを感じさせる印象で、今まで何度も見たことはあるのに普通にときめいてしまった俺は少しの間彼女に見惚れていた。

するとこちらの様子に気づいた彼女が声をかけてきた。


「もしかして、あなたもこの棚の本を探しているの?もしそうならすぐに退()くわ」

「いや、特にこのコーナーで探したいものがあるわけじゃないんだ。色々見て回ってみようと思ってね」

「あらそうなの、でもここに来たということは少なからず人工知能に関して興味があるんでしょう?」

「まあもちろん興味はあるかな、今では当たり前に俺達の生活に溶け込んでるけど、どんな歴史を辿ってここまで浸透したのかは小中学校と高校で習った範囲のものしかないし」

「そうよね、自分で調べようと思わないと一般的に出回っている情報しか得られないから、人工知能の発展の軌跡を辿ることも無いわよね」

「歴史を学ぶならおすすめの本があるから紹介するわよ」


不破さんは人工知能にかなり造詣が深いようで、俺におすすめの1冊を教えてくれた。

[私たちはどこに向かうのか~人工知能との共生と足跡~]というタイトルで、人工知能という概念の勃興から、人工知能を搭載したロボットが俺達の生活にどのように溶け込んでいったのか、そしてそれが社会構造にどのような影響を及ぼしたのかということに関して網羅的に分かりやすく解説してくれる本であるそうだ。

著者は一人ではなく、「世界人工知能連盟(World Federation for Artificial Intelligence) 略称WFAI」という組織によって書かれたものであることも分かった。WAFIはもちろん聞いたことがある団体名で、「人工知能を活用して貧富の差がなく争いのない平和な世界を目指す」をモットーに活動している団体である。とにかく人工知能を活用することで人類全体の生活を豊かにすることを一番に据えた団体という印象である。

人工知能の歴史に興味があったし、何よりあの不破さんが薦めてくれた本であることから、すぐに借りることを決めた。

その後は不破さんに一応自分の名前とお礼を伝え、「気にすることはないわ」と短い返答を受けた後はまたぶらぶら図書館内を散策して何冊か面白そうな本を借りた記憶がある。


今まで話したことがなかったが、外見だけではないこの気さくな雰囲気と親しみやすさが彼女の魅力をさらに引き上げていることをこの身で感じた。

彼女にとっては他愛もない小さな出来事なのだろうが、その出会いで俺は彼女にそれとなく惹かれていた。

惹かれたとは言っても特に行動を起こしていないため、それ以降は関わりも伸展も何もなかったが。

このハンカチを拾ってそんなことをふと思いだし、もし想いを伝えるなら今日しかないかもなと思った。


「卒業生代表で答辞読むし慌ててたんじゃねえか?」

「確かにそうかもね、それならもう待機場所に居そうだし行ってみるか」

ヨシとそんな会話をしながら、卒業生の待機場所に向かうことに決めた。


そして待機場所に着くと、そこには不破さんが級友と談笑している姿があった。

なんだか話しかけづらいが、他の人に頼むのも気が引けるし、何よりずっと持っている方が怪しいためすぐにハンカチを渡すことにした。


「不破さん、このハンカチって不破さんの?」

「あ、ええそれは私のものよ、どこかで拾ってくれたの?」

「うん、1階に降りる階段の近くに落ちてたよ。」

「拾ってくれてどうもありがとう。あなたは確か八百くんよね、2年の夏休み前に図書館で会って本をおすすめした」

「俺のこと覚えてるの?」

「ええ、私一度会って話した人の顔と名前は覚えてるもの」

「さすが元生徒会長だな、じゃあ答辞がんばってな」

「ええ、どうもありがとう」


心臓が飛び出しそうだったが、平静を保ってなんとかハンカチを渡すことに成功した。

様々なものごとが数値化されて生活はこんなに便利になっている現代なのに、恋愛感情などの人間の心の動きはままならないものだ、などと物思いにふけっていたが、「蓮司!もうそろそろ卒業式始まるぞ」とヨシに呼ばれたため空想世界から身を引き剥がし、卒業式入場の待機列に並んだ。


「それでは、第58回私立翠光寺学園卒業式を挙行いたします。卒業生入場。」

2年生の放送部員のアナウンスで、卒業生は1組を先頭に入場を始めた。

人生3度目、卒園式を含めると4度目の門出に、俺の気持ちは特に高鳴ってなどいなかった。

前述の通り、刺激の無い平凡な3年間の学園生活、浮ついた話はもちろん無かった。


卒業生たちは席についた後、タイムテーブルに従って粛々と式は進行し、現生徒会長が代表として送辞を終えた後、不破さんが答辞のために壇上に上がった。


不破さんが答辞を読み上げるべく蛇腹折りの原稿を広げた次の瞬間、体育館は地獄と化した。

いや、このとき「世界全体」が、ロボットによる侵略によって、地獄と化していたのだった。

このときの俺は、自分が世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれていることなど知る由もなかったのである。


最初の作品でわからないことだらけなので、どんどんアドバイスいただければ嬉しいです。

2話目以降も書けたら順次上げていきます。

展開は考えてるのですが、それをまとめられるかは未来の自分に期待することにします。

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