泥に散る栄光
今回はパッシェンデールです
泥こそが悪夢の象徴と言われた、、、
ドイツ軍は7月にマスタードガスをイーペルで初めて実戦投入した(「イペリット」という通称の由来)。これは人体の皮膚や粘膜を襲い、皮膚や呼吸器に糜爛や炎症を起こし、眼を焼いて失明に至る場合もあり、非常な苦痛を伴った、
毒ガスの誕生である。
メシヌ高地奪取に続き、作戦の第二段階として、サー・ヒューバート・ゴ将軍率いる第五軍に対しイーペルを見下ろすゲルベルト台地を制圧するという任務が与えられた。多数の砲兵部隊が該当戦域に集められ4日間に渡り準備砲撃を実施したが、これによりドイツ軍は連合軍の攻勢意図を察知しかえって守備兵力を増強した。
それにより我々増強部隊がここの防衛に当たった、
連合軍は重砲3000門弱、砲弾420万発弱を放ち
防衛を崩そうとした、
最悪の戦場が幕を開いた瞬間だった。
戦場は泥に塗れ、
止まれば沈む。
敵兵が突撃の合図を鳴らす。
「敵襲!!!!!」
「来るぞ‼︎構えろ!!!」
敵兵が叫びながら突撃して来る、
「ウオォォォォォ‼︎隊長に続け!!!」
泥に塗れそれでもなお突撃して来る、
「一斉射撃用意!!!」
大隊長が命令を叫ぶ、
「来い‼︎来い‼︎来い‼︎」
小隊長が呟く
「今だ‼︎撃てぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
一斉射撃に敵は倒れ、
「ウオォォォォォ!!!!!!!!」
ダダダダダダダダダダダ
文字通り機関銃が火を吹き、
それに合わせて敵兵が崩れ落ちる、
それでもなお突撃の勢いは落ちない。
「止まるな‼︎進み続けろ!!!」
ボルトアクションの銃特有のリロードに敵兵は更に勢いを増す。
砲撃が敵兵を薙ぎ払う、
敵兵が叫ぶ、
何を思い、
突撃するのかを我々は知らない、
だが一つ分かる、
ここは地獄だ。
「ウオオオオオオォォォォォォォォォオォォ!!!!!!!!!!」
両者叫ぶ、
思いは違えど心は同じだから。
ボルトアクションの銃を何回リロードしても敵兵は更に増えていく。
有刺鉄線が砲弾で吹き飛ぶ、
目の前で水しぶきを上げ敵が倒れる、
隣にいた仲間が首を押さえ倒れる、
撃たれた。
敵兵がすぐそこまで迫る、
咄嗟にナイフと銃剣を用意する。
「用意は出来てる、、、さぁいつでも来い!!!」
白兵戦の始まりだった。
「ウラァ‼︎」
石で敵兵を殴る味方、
「助けてェ!!!助けて、、、助けてくれェェ!!!!!」
泥で滑り、
そのまま上がって来ない敵兵、
「くらえェ!!!」
敵がスコップで味方を殴る、
「クソが‼︎死ねェ」
その敵に向かって銃剣を刺す、
「イダィィィィ!!!」
敵兵の手を銃剣が貫通する、
味方が敵兵を手で押し倒してそのまま拳で殴る。
「くたばれッ!!!くたばれッ!!!死ね!!!死ねェ!!!!!!!!」
「ウワァァァァァアァァァァアアア!!!!!」
敵兵が殴り掛かって来る、
「クソッ‼︎くらえェ!!!」
それに合わせてそばに有った味方のヘルメットで殴り返す。
「もう嫌だ、、、もうい
ダン!!!!
片腕を無くした味方が敵兵に撃たれる、
「助けて、、、、助けェ
ゴスッ‼︎ゴスッ‼︎
逃げる敵兵に向かっては味方がハンマーを振り下ろし敵兵が口から血を吐く、
髪を掴みまるで悪魔のように、
地獄だ。
さっきいた味方も敵兵の銃剣に刺された
中には敵兵を撃てない若者さえいる、
やがて毒ガスが充満し、
最悪の戦場は時間が経つに連れて静かになった、
連合軍の歩兵が全滅した、
これによりパッシェンデールの戦いは終わった、、、
後には敵と味方の死体だらけだったと言う。
この戦いでの死者は14万弱だったと言う、、、
敵も味方も死んだ、
最悪の戦場は両軍の全滅と言う形で終わった、、、
この期間、地表状態は悪かった。絶え間のない砲撃は排水用の用水路を破壊してしまい、季節外れの大雨と相俟って、付近一帯は泥濘と満水の砲弾孔で覆い尽くされた。危険と判断された地帯には泥の上に通行用の板が渡されるなどしたが、当時の兵士が帯びた装備は約45kgにもなり、足を滑らせて砲弾孔にでも落ちればそのまま溺死する危険があった。これにより5人に1人が溺死した、辺りの樹木は葉も枝も吹き飛ばされて幹のみとなり、埋葬された戦死者の遺体は雨や砲撃で掘り返されてしばしば地表に露出した、、、