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第1話

「ふっふっふ……これでようやく…」



青白い大きな月が輝く真夜中。


明かりのついていない薄暗い部屋には薄気味悪い少女の笑い声が響き、薄紫色の煙が充満していた。


少女は『ぽわん…ぽわん…』と輪っかの形をした煙が出るフラスコの中身、ドロドロとした液体をいかにも高級そうなカップに移す。


紅茶が似合うそのカップに入ったのはドロッとした粘度の高い禍々しい液体で…異様な光景だ。



「二千年前から作り続けた"これ"がようやく完成したぞ!」



アッハッハッハッハッ…と高笑いしてから一拍おいて少女はグイッとカップに入った液体を飲み干した。



「………ゔっ…」



すると心臓の辺りを両手で抑え苦しみ始めたではないか。今にも死んでしまいそうな青白い顔をして膝を着いた。


そしてガクッ…と息を引き取った……………ように見えた。



「……………ペッ」



少女は何事もなかったようにムクっと起き上がり口の中の砂を吐き出すようにペッペッと口に残った液体を吐き出した。



その時、月が顔をのぞかせる窓に影が浮かび上がった。



「…………おいおいなんだよ。まだ死んでねぇのかババア」


「ババア言うな!二千歳を超えた今でもこうしてピチピチなロリの容姿をしておるではないか!まったく…我にそのような口をきくのはお主だけだぞ、死神のフィガロよ」



フィガロはローブをはためかせながら部屋の中へ。



「おいババア!とっとと死ねよ!俺様の仕事が…」

「フィガロ?我のことはなんと呼べと教えたかな?ん?」



先に大きな宝石が着いたペンのようなものをフィガロの顔に突きつけるとたちまちフィガロが嫌な顔をしだした。



「…ババa、じゃないシャーロット!!これでいいだろ!!早く杖を下ろせ!!」


「ふんっ!分かればよい」



シャーロットはふふん、と鼻高々に笑う。



「で、さっきは何やってたんだよ」



床に落ちて粉砕されたカップを見ながらフィガロがそう言った。



「あぁ、つい先日異国から来た商人に『絶対に人を殺せる劇薬』の作り方を教えて貰ってな。それを試していたのだ」


「……………死んでねぇじゃねぇか!!どうなってんだよ!!」


「そんなのは我の方が聞きたい」



シャーロットはツーンとそっぽを向いた。フィガロはフィガロで困り果て頭を抱えていた。



「まったく…これじゃあいつまで経っても俺様の仕事が終わんねぇよ…はぁ〜〜今夜は忌々しい月が出てやがるしついてねぇぜ」


「ついてないのも我の方じゃ!劇薬のレシピを安くない値段で買ったのに…とんだ大損をこいた………」


「馬鹿だなぁ〜〜お前………………?おい、シャーロット」



先程とはうってかわり真剣な顔をしたフィガロが窓の下…広がる深い森を見てそう言った。



「もぉ〜〜〜!!何度も何度も!!予定にない客ほど面倒臭いものはないのに!!!!」



駄々をこねるように手足をバタバタさせたシャーロットが宝石の着いた杖を窓へ向け一振するとバンッとひとりでに窓が開いた。そしてスっ…と浮いたシャーロットは窓の外へ……。



「フィガロ、家の中を荒らすでないぞ!」



小さな子供に言いつけるように言ったシャーロットは空高く昇りどこまでも広がる深い森を見下ろした。


「北の奴らもよく飽きないなぁ。そろそろ引越しを考えるか」


そんなことをブツブツと言いながら目の前に杖で魔法陣を描いていく。


招かれざる客は空に浮かぶシャーロットに気が付いたのか次々と箒に乗り宙へ…



その間に魔法陣を完成させたシャーロットは自身の人差し指の腹を切り魔法陣へと血を飛ばす。


その瞬間、魔法陣はオーロラのように神秘的な光を放ちながら発動した。



「もう来なくていいぞ!!!北のオズにもそう伝えろ!」



シャーロットが両腕を揃えて前に伸ばし、左右に大きく開いた時、もう侵入者はどこにも見当たらなかった。



「北出身の奴らはどうしてこうも粘着質なのか…」



疲れた疲れたとふよふよ浮きながら出てきた窓へと帰ると、何故か室内が炎上していた。



「なっ、なっなっ、なんじゃこれは?!?!………はっ!フィガロ!あやつどこいった?!…ん、これは…」



窓に貼り付けてある1枚の紙……そこには汚い字でこう書いてあった。


"いや〜なんか腹減ってそこら辺に置いてあったパンを暖炉で焼こうとしたら、部屋に燃え移っちゃった☆お前も死なねぇし、俺帰るわ。消火よろしく"



「馬鹿者!!!それはパンではなく爆炎雲じゃ!!……っもぉ嫌じゃ!!!我は引っ越すぞ!!!!」



窓をバンっと開け放ち杖を一振すると部屋の中にもくもくとした雲が集まり霧のような雨が室内に降り注いだ。



「まったくフィガロのやつ!なんてことをしてくれるんじゃ!我の大事な大事なアンティークが消し炭じゃないか!今度我の魂を狩りに来た時には毛虫にしてやるぅ〜〜〜!!」




そう叫んだシャーロットの声が月が照らす薄暗い空に木霊するのであった。

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