子猫の家 1-3
「鬼ごっこ!鬼ごっこがいい!」
相談が纏まったところで、教会の中からシャオランも出てきました。
私の真後ろでしたので、先に気づいた子供たちの表情はぱっと明るくなります。
「あ!シャオ兄!シャオ兄も鬼ごっこしよ!」
子供たちの中の女の子がシャオランに駆け寄りました。
様子を見に来たのでしょう。
シャオランは私の隣に並ぶように位置取り、屈んで女の子の頭をぐりぐりと撫でます。
「オレ休憩させて貰えるんじゃないんすか?疲れたっすよ」
「やぁーだ!シャオ兄も一緒が良い!」
女の子はシャオランに撫でられて嬉しそうでした。
微笑ましい光景を見ていると、女の子がこちらにちらっと目線を送ってきます。
私は微笑ましい気持ちでいっぱいになり、自然と笑みが溢れておりました。
「シャオラン、わたし鬼役務める。ゆえにシャオラン共に遊ぶ」
お願い、と言うように同じ色の瞳を見つめる。
シャオランの手を頭に置かれたままの女の子も、上目遣いでシャオランに懇願するように見つめていました。
シャオランは私と女の子の目を交互に見つめて、観念したようにがっくりと肩を落とします。
「わーかったっすよ!ほらほらチビ共!鬼のマオ先生に見つからねぇように隠れるところ探すっすよ!」
シャオランは女の子を抱き上げて肩車をしてあげます。
子供たちははしゃいでわーいと声をあげました。
私は結い紐で縛りにくく癖のある髪をまとめ上げます。
「各位逃走準備!カウント終了後、わたし動く!」
「おらー!散れ散れチビ共ー!」
修道服の袖を捲り、走りにくい格好ですが鬼のマオ先生の完成です。
シャオランと子供たちはきゃあきゃあ甲高い声を上げて、四方に走り出しました。
私は努めて大きな大きな声で数を数えて、10まで数えるとまずは辺りを見回して、青い空の下に広がる草原を走り始めます。
パーティのように毎日楽しいことがある訳ではありませんが、小さくて細やかな幸せのある教会兼孤児院。
それが、私の営む"子猫の家"の日常なのです。
第一話「子猫の家」終了。