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蒼雷の高翔  作者: 氷華 青
9/31

絶対と趣味

「80点で、何とかできる?」

「何とかする」

織田さんは何かを差し出した。僕は受け取ろうとする。

「お前たちがどれだけ協力しようと、俺には勝てない。ロンヒ・オブ・ニケ(10,500)」(智楯槍都、残り911点)

織田さんに向けられたその槍を、彼女は避けた。そして、『何か』を投げてくれた。それを無事に受け取る。

「飲んで!それが私の80点分!ディストラクションショック(50,200、追加ダメージ100)!」(織田綾音、残り69点)

僕が頷いたのを彼女は見ていないかもしれないが、気にせず『何か』の正体であった瓶の中身を飲む。疑っていた訳ではないが、しっかりと80点追加された。(青澤天、残り84点)

「無駄だよ、織田。アスピダ・オブ・イージス(30,被ダメージ-1000)」(智楯槍都、残り881点)

「雷霆スマッシュ改(35,500)!」(青澤天、残り49点)

「お前たちが何をしようと、無駄だ。アスピダ・オブ・イージス(30,被ダメージ-1000)」(智楯槍都、残り851点)

全てがあのシールドで防がれる。それなら………。トランスミッション(5×対象、意思伝達)で織田さんに伝える。(青澤天、残り44点)

「無駄じゃない!」

「雷霆スマッシュ改(35,500)!」(青澤天、残り9点)

「同じことをしても、意味はないだろう?学習しろ。アスピダ・オブ・イージス(30,被ダメージ-1000)。それは防げる」(智楯槍都、残り821点)

トランスミッションで僕が伝えたのは、こういったことだ。


『今から、作戦を伝える。僕が雷霆スマッシュ改を撃ったら、何とかして智楯君を追い詰められるように奇襲をかけよう。これに賛成なら、今から「無駄じゃない!」って叫んで欲しい』


「シールドブレイク(50,防壁破壊)!アッドディストラクション(15,他の技に『追加ダメージ350』効果を付与)!」(織田綾音、残り4点)

「いっけぇぇぇぇえ!」

「うっ!」(智楯槍都、残り321点、追加ダメージ350)

「これで、ブレイクグロウを使えば………」

「俺は、負けるのか………?」

智楯君は、何故か気を失ったように、夏の空のような澄んだ蒼い眼を閉じた。




『代われ!』と、音のない声が叫んだ。その瞬間、視界は消えた。音も聞こえない。声も出せない。底のない水の中にいるみたいだ。いつの間にか閉じていた眼を開けると、視界は開けたが、薄暗い。そして俺は、そのまま眼を閉じた。




「高天原の射光(15,300)」(智楯槍都、残り306点)

開かれた智楯君の眼は、夕焼け空のような紅色をしていた。そして、織田さんは彼の光に射貫かれた。

「ごめん、青澤君。やられちゃった」(織田綾音、残り0点)

もう、僕も無理だ。

「青澤天。此処まで良くぞ頑張った。僕は君を讃えよう。否、もう此処で終わらせるが最善だろう。残り9点、孤立無援で如何すると言うのだ?」

「一つ、お願いがあるんだけど………、いいかな?」

「可能な要請ならば、聞き届けよう」

「今の君ができる最強の技で、倒して欲しいんだ」

「その要請を請けるのは………可能だ。では僕の、最も(きょう)たる技で貴殿の息の根を止めてやろう」

眼の色どころか、口調まで違う。そして、織田さんを倒した技も、高天原の射光だった。絶対、アテナの能力じゃない。あれはアマテラスだ。これじゃまるで………。

「アフターグロウ(150,2000)」(智楯槍都、残り156点)(青澤天、残り0点)

いや、しかし、僕の仮説は間違っていると思いたい。

「実に愉しき時であった。青澤天。貴殿には感謝する。アドバンスクラスのモチベーションを上げるのに、貴殿らスタンダードスターは利用させて頂こう」

「好きにしてくれ」

2000点分の攻撃を受けた僕は、色々なショックと不安で立ち上がることができなかった。

『これより、ショートホームルームを開始するので、各自ホームルーム教室へ戻って下さい』

この放送を聞くまでは。


ショートホームルーム。桃原先生の連絡は続く。

「━━━というわけで、反省もあるだろうが、来週は実力テストだから、まだ気を引き締めて頑張ってくれ。そして、実力テストの次の週には、体育祭がある。そこでなんだが、体育祭の競技に、『コロッセウム』というものがある。その参加者を募集したいのだが、誰かどうだろう?」

「先生、それ一人っすか?」

「ああ、各クラス一人ずつだ」

「じゃあ………俺は、青澤天を推薦します」

「ふぇ?」

そこは「俺が行きます」だろっっっっっ!

「他、立候補者はいないか?」

シーン。おいおい。

「青澤君、参加するか?」

「あ、立候補者がいないなら、やります」

大歓声に、拍手喝采。おいおい、さっきまでの静寂はどこいった。それにしても、焔君、いいのか?いつもなら、こういうのに積極的なのに。




今の俺じゃ駄目だ。今は部活と、新技の練習に励む時間だ。

「天、ファイトー!」

俺は後ろの席から、隣同士でハイタッチする青澤と小鳥遊を見ていた。




「コロッセウム」には、グラディエーター(このクラスでは僕)ともう一人、サポーターという人が必要だそうだ。僕は、小鳥遊さんにお願いした。彼女は、快諾してくれた。

これで、いいはずだった。


放課後。織田さんがどこからあの瓶を持ってきたのか不思議に思いながらも、クイズ研究部の活動に参加する。クイズ研究部のメンバーは、ざっくり言うと、クリムゾンクラスの月島君、桐生君、戊奈(ぼな) 春兎(はると)君、清村(しむら) 硯人(けんと)君。戊奈君と清村君は、バドミントン部で、二人は大親友だ。パープルクラスの村田(むらた) 優詩(ゆうし)君、日本橋(にほんばし) 文之(ふみゆき)君。村田君は、バドミントン部だ。ピンククラスは僕一人。そして、アドバンスクラスの、砂田君、速水君。今日はさらに、緋空君も体験に来ていた。ご覧のように、兼部勢が多い。そんなクラブだと思ってもらえばいい。そして、僕らクイズプレーヤー達には、『僕のヒーローアカデミア』のヒーローのように、通り名がある。僕は、ギリシャ神話が好きで、その中でもアテナが好きなので、「アテナ」。月島君は「ムーンライト」。桐生君は「アップル」。村田君は「イーグル」。日本橋君は「日文」。砂田君は、「カタトゥンボの雷」。速水君は、「Layer」。戊奈君と清村君は、「ボナパルト」と「硯人」だ。桐生君の「アップル」の由来は、好きなバンドらしい。

さてと。今日は、クイズ研究部のちょっとした部内戦がある。ダブルスで、ランダムにチームが決まる。籤によって決まったチームメイトは、ムーンライトだった。とりあえず、ムーンライトでは長いので、本人の了承より、光と呼ぶことにする。問読みは、一年上の三崎(みさき)先輩。男子なので、もちろん苗字だ。他のチームは、「ボナパルト」(戊奈と呼ぶことにする)と「硯人」(硯人と呼ぶことにする)、「アップル」(大地と呼ぶことにする)と「Layer」、「イーグル」(村詩と呼ぶことにする)と「日文」、「カタトゥンボの雷」(謎太君と呼ぶことにする)と緋空君(夕辺と呼ぶことにする)がある。五チームでの対抗戦だ。ちなみに、括弧の中の名前やその他は全て許可をもらっている。「村詩」は、みんなそう呼んでいる為だ。

一回戦。早押し五マル二バツ。五問正解で決勝戦に上がれて、二問不正解で敗退。三チームが上がれる。

「第一問。波の発生源と観測者との相対的な/速度の存在によって、音と動く物体の波の周波数が異なって観測される現象を何という?」

これから使う/(スラッシュ)は、いつ回答者が押したかを示している。押したのは、日文だ。

「ドップラー効果」

「正解!」

チーム「パープルクラス」、一マル。

「第二問。思考節約の原理や思考節約の法則、思考経済の法則とも呼ばれる、ある事柄を説明するため/には、必要以上に多くを仮定するべきでないというものを何という?」

押したのは、謎太君。

「オッカムの剃刀」

「正解!」

早すぎ。

「持ち問題なので」

なるほど、持ち問題は取りたいよね。チーム「緋空トゥンボ」、一マル。おい、チーム名、誰が付けた。

「第三問。腕に着/ける装飾品をブレスレットと云いますが、足に着ける装飾品は何という?」

全員が、死に物狂いでボタンに飛び付く。しかし、回答権は謎太君に渡った。

「アンクレット!」

「正解!」

取りたかった。これは全員の持ち問題だ。チーム「緋空トゥンボ」、二マル。

「第四問。ギリシャ神話で、ゼウスの頭/から武装した姿で生まれたとされる、技術・学芸や戦いなどをつかさどる女神を何という?」

押したのは僕。

「アテナ!」

「正解!」

これは素直に嬉しい。持ち問題だから。チーム「ムーンアテナ」、一マル。

「第五問。マケドニア王アレ/クサンドロス三世の家庭教師であったことでも知られ、その多岐にわたる自然研究の業績から『万学の祖』とも呼ばれる古代ギリシアの哲学者は誰?」

押したのは戊奈。

「あー、誰だっけー?プラトン!」

「残念!」

チーム「クリムゾンクラス」、一バツ。

「正解は、アリストテレス」

「あー、そっかー!」

「ドンマイ、戊奈」

これは硯人の声。彼はとても優しいが、ノリが悪い訳ではない。つまり、周りに配慮したノリ━━━僕は彼を最高だと思う。

「第六問。家計の総消費支出に占める食/費の割合のことを何という?」

押したのは日文。

「エンゲル係数」

「正解!」

チーム「パープルクラス」、二マル。

「第七問。ノーベル文学賞を日本/人で初めて受賞したのは川端康成ですが、日本人で二番目に受賞したのは誰?」

押したのは村詩。

「日本人で初めて受賞したのは川端康成ですが、二番目は………大江健三郎!」

「正解!」

押してからその先の問題文を予想する。これはよくあることだ。チーム「パープルクラス」、三マル。

「第八問。“全てがゲームで/決まる”という異世界に召喚された天才ゲーマー兄妹が一癖も二癖もあるゲームに挑み、奇想天外な方法を駆使して攻略していく様をコメディタッチで描いた、榎宮祐によるゲームファンタジー小説は何?」

とてつもなく早いスピードで押したのは、夕辺。

「『ノーゲーム・ノーライフ』!」

「正解!」

「夕辺、はえぇ」

「大好きだからな」

チーム「緋空トゥンボ」、三マル。たまにこんな問題もあるのだ。

「第九問。クリミア戦/争での負傷兵たちへの献身や統計に基づく医療衛生改革で有名な、イギリスの看護婦、社会起業家、統計学者、看護教育学者は誰?」

押したのは光。

「ナイチンゲール」

「正解!」

「光、ないすぅ」

「おう」

チーム「ムーンアテナ」、二マル。

その後、「緋空トゥンボ」、続いて「パープルクラス」が決勝戦へ、「ムーンアテナ」と「クリムゾンクラス」は四マル一バツ、「Layers」は三マル、という展開に。

「第二十四問。その名には、『海賊版』という意味がある、歌手・米津玄師のアルバムは何?/」

僕は、押すのに迷った。あと一つバツがつけば、負けだから。けど、押すしかないと、結論付けた。だって僕は、米津玄師さんのファンだから。

「BOOTLEG」

「正解!」

ここで、予選の勝負は着いた。

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