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蒼雷の高翔  作者: 氷華 青
20/31

戦意と平和

夏休みに入った、ある晴れた日のこと。今日もせっせとランニングしているのは、僕らバドミントン部。夏休み明けに個人戦があるので、と言ってもあと一ヶ月あるのだが、現在絶賛練習中だ。

「うあー、あちぃー」

そう言って走っている戊奈を、常に頭から水を被って涼しげな潮と、瞬間移動しながら走る昇輝と、体に電流を流して体力を回復しつつ走る僕が抜かす。

「うぉっ、おい、待ってくれよ!」

戊奈が急いで走って追いついて来る。なんだ、もっと走れるじゃん。そうしていつものランニングは終わった。

「じゃあ、今から、ノックで」

という翔飛先輩の指示。ノックとは、誰かに打ってもらったシャトルを打ち返す練習だ。先輩たちはすごくいい打球をする。同級生の中にも、いい打球をする人はいる。たとえば、潮。僕らも、たまにはいい打球をするけど、ノックで「たまに」では駄目だ。ノックのシャトルは、言うなれば「死んだシャトル」だ。試合では、「生きたシャトル」が飛んでくる。それに対応するには、「死んだシャトル」はしっかり打てないと意味がないのだ。鷲一先輩が打ってくれたシャトルが、高く上がる。ここは、スマッシュ。公式の試合の練習の為に、ル・ヴォル・ブレケラヴノスは使わない。自分の脚力だけで、翔ぶ!しかし、思ったより跳べず、最高打点でのショットは断念。そうか、やっぱり僕はこれくらいしか跳べないのか。自分の能力をようやく自覚するが、遅すぎる。一ヶ月後は大会なのに。その後はパターンをした。パターンとは、オールショートや攻め・守りがあり、三人と一人に分かれて、オールショートでは一人の方がネットの近くに返し、攻めでは一人の方がスマッシュやプッシュなど、攻撃的なショットをする。守りは攻めの逆で、三人の方が攻撃的なショットを打つので、それをできる限り返すのが一人の方の仕事だ。ノックも楽しいが、それ以上に楽しいのはパターンだ。特に、攻め。守りは難しいが、攻めなら簡単だからだ。難しいことから逃げていては駄目だけど。パターンのあとはゲームだった。ゲームとは、無論、練習における試合のことだ。今日は、と言ってもほとんどいつもは、四点先取のゲームだった。最初はクラスメイトで、ダブルスのペアでもある、中山(なかやま) 礼人(れいと)との試合だ。

「ラブオール、プレイ!」

僕がサーブをする。シャトルは高く上がり、礼人はスマッシュの構えをとる。来る。しかし、スマッシュはあまり角度がついていなかったので、簡単に返すことができた。後ろにいるので、前に落とす。フットワークで礼人は前に来て、ヘアピンを打つが、今度は僕がロブで対応し、礼人はまた後ろに行かなければならなくなった。体勢を崩しながらの礼人のクリアは、浅かったので、スマッシュで叩く。

「ワン、ラブ、青澤リード」

僕のサーブ。礼人のカット。反応しきれなかった僕は、コートに膝をついてしまった。

「オーバー、ワンオール」

礼人のサーブ。クリアで対応する。スマッシュ。必死にとる。ネット際に入ったシャトルは、そのままコートに落ちた。

「オーバー、トゥー、ワン、青澤リード」

僕のサーブ。クリア。フットワークで追いつこうとするが、深い。クリアを打つが、浅かった。礼人のスマッシュ。伸びたので、なんとか返せた。が、ネット際に高く上がったシャトルは礼人のプッシュの餌食となった。

「オーバー、トゥーオール」

礼人のサーブ。高く上がる。ん?少し飛びすぎじゃないか?見逃してみる。やはり、アウトだった。

「オーバー、スリー、トゥー、青澤リード」

僕のサーブ。高く上げる。クリア。深いのは知っている。フットワークで追いつく。スマッシュ。礼人は返そうとするも、できなかった。

「ゲーム、青澤」

一試合目は、なんとか勝つことが出来た。しかし、礼人は僕と互角だ。次は、僕より強い人との対戦になると思う。

案の定、次は僕より強い夕辺だった。

「ラブオール、プレイ!」

夕辺のサーブ。ショートサーブなので、前に落ちる。ロブで返す。夕辺が跳ぶ。来る、スマッシュ!と思いきや、カットだった。反応出来ず。

「ワン、ラブ、緋空リード」

夕辺のサーブ。また前に落ちる。ヘアピン。ヘアピンが返ってくる。上手い。ロブ。カットも頭に入れながら、少し後ろに下がる。しかし、返って来たのはクリア。ここは、スマッシュ!しかし、浮いた。ドライブ。前にドロップ。またヘアピンが返ってくる。それは、僕のラケットに当たることなく、コートに落ちた。

「トゥー、ラブ、緋空リード」

夕辺のサーブ。前に落ちる。ロブ。カット。危ないながらもとる。ヘアピン、逆サイド。これまた危ないながらもロブで対応。体勢を少し崩しながらの夕辺のスマッシュ。なんとか返す。ネット際へ。夕辺は、とれなかった。

「オーバー、ワン、トゥー、緋空リード」

僕のサーブ。また、上げる。カット。これもキツい。なんとかロブ。返って来たのは、無慈悲なスマッシュ!もう、対応しきれない。

「オーバー、スリー、トゥー、緋空リード」

夕辺のサーブ。また前に落ちる、と思っていた。しかし、勢いよく後ろに飛んだシャトルは、そのままコートに落ちた。

「ゲーム、緋空」

完敗だ。あのサーブで決められたのは、とても悔しかった。夕辺はショートサーブしか打たないという先入観が、僕をこの結果に導いたのだ。ただ、単に実力の差もあったのだが。

次は、昇輝との対戦だ。

「ラブオール、プレイ!」

僕のサーブ。高く上がったシャトルを、昇輝が打つ。スマッシュ。速すぎて、追いつけなかった。能力を使っていないのに、この速度はすごい。

「オーバー、ワン、ラブ、日野リード」

昇輝のサーブ。ショートサーブ。ヘアピン。逆サイドにヘアピン。なんとかロブで返す。スマッシュ、ではなく、カットだった。

「トゥー、ラブ、日野リード」

昇輝のサーブ。ショートサーブ。ロブを打って、コートの真ん中に戻る。スマッシュが来たが、ネットに止められた。

「オーバー、ワン、トゥー、日野リード」

僕のサーブ。慣れないが、ショートサーブを打ってみる。なんとか打てた。ロブが返ってくる。スマッシュ。昇輝が体勢を崩した。前に上がる。スマッシュ寄りのプッシュで決める。

「トゥーオール」

よし、いい調子だ。僕のサーブ。ショートサーブ。しかし、失敗した。浮いたサーブは、叩かれた。

「オーバー、スリー、トゥー、日野リード」

昇輝のサーブ。ショートサーブ。ロブを打って、コートの真ん中へ。返って来たのは、スマッシュ。しかし、速すぎてラケットに当てることすらできなかった。

「ゲーム、日野」

「よし、じゃあ、集まってー」

翔飛先輩の声。どうやら、練習終了のようだ。いつからか練習を見に来ていた顧問の先生の少しの話も終わり、

「ありがとうございました!」

と言って、練習は終わった。

「いやー、今日も疲れたなー」

「今日のゲーム、三回中全勝だったぜ!」

「ゲームと言えば、今から部室で『クラロワ』やるか?」

『いいねぇー』

おいおい、会話がゲームに切り替わるの早すぎだろ。でも、こんなバドミントン部が、僕は好きだったりする。ちなみに「クラロワ」とは、スマホゲームの「クラッシュ・ロワイヤル」のことだ。そして、今日も平和な夏の一日が過ぎた。

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