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蒼雷の高翔  作者: 氷華 青
19/31

弦楽と休日

ショートホームルームの後、本番前日の歌練をした。そう言えば、明日はコーラス大会だったと、ショートホームルームでの桃原先生の話を聞いて、はっと気づいた。それほどに、今回のバトルイベントには集中していた。歌練は、煌輝の様子がおかしかった以外は順調に進んだ。彼は一体どうしたのだろうと、彼を問い質したい気も起きた。しかし、パートリーダーとして、前日の練習に集中しない訳にはいかなかった。


Fuka『天、知らなかったら、気をつけて。月島君が試したみたいなんだけど、『能力増強』か『体力倍増』の瓶を一日に四本以上飲むと、能力が暴走するらしいの』17:09

天『気をつけるよ、ありがとう』18:05


知らなかった。教えてくれた風花に、感謝だ。


コーラス大会は、一年生はアドバンスクラスの優勝で終わった。熱心な練習の成果は、あまり出ることがなかった、なんてことはなく、他のクラスも同様か、それ以上だったのだろうと感じる程に、どのクラスも素晴らしい合唱だった。ピンククラスの優勝は叶わず、三位に終わってしまったが、次の学校行事である文化祭、この学校では鈴蘭祭と呼んでいるが、この鈴蘭祭こそは優勝することを心に誓った。


つるか『みんな、コーラス大会お疲れ様。ところで、そろそろ練習の日を決めたいのだけど、どうしよっか?』19:38

Fuka『みんな、練習入れる日をチャットしてこう!』19:42


全員の練習可能な日が揃った。そして、僕は弦歌とのマンツーマンレッスンも約束した。マンツーマンレッスンの日は、明日だ。楽しみに思いながら、僕は眼を閉じ、レム睡眠に移行した。


夏と言えども、朝はいい空気だ。僕は自転車で行くと言い張ったのだが、ギターを持っていくので、親が送ってくれることになった。海の近くにある、弦歌の家だ。場所は、昨日まで知らなかったのだが、弦歌にチャットで教えてもらった。僕のギターは、青空のような色をしている。これは、僕の名前に合わせたのと、音が青空に響き渡るようにという二種類の意味を持っている。テストがあったのと、バトルイベントやコーラス大会があったのとで、ほぼ練習が出来ていなかったので、僕は今、ほぼ完全なる初心者だ。そんなことを考えること十分。弦歌の家に着いた。少し緊張しながら、チャイムを押す。すると、直ぐに弦歌は出てきてくれた。

「おはよう、天!」

「おはよう、弦歌。今日はよろしく」

「うん。少しでも上手くなれるように、サポートするね!ってのは社交辞令で、本当はそろそろ急がないとヤバいんだけどね」

「わかった。でも、テストとか色々あって、練習出来てなかったんだ、ごめん」

「いいよ、テストはしょうがないし。とりあえず、あたしの部屋まで上がって」

「ありがとう」

美辻家は清潔感があった。そして、弦歌の部屋はとても広かった。

「うわぁー、広っ」

「まぁ、楽器置かないといけないからね」

「弦歌がいつも使ってるギターはどれ?」

「これかな」

彼女が取り出したのは、深い赤色のエレキギターだった。

「ちょっと、弦歌の演奏聴きたいな」

「いいよ。ちょっと待ってて」

そう言って彼女は、色々機器を準備し始めた。コードを大きな箱に繋ぐ。後から知ったのだが、アンプというらしい。そして、僕がギリギリ知っている、ピックを取り出す。黒いピックだった。チューナーで調律して、準備完了、といった感じだった。

「オッケー?」

「うん。じゃあ、いくよ?」

そして彼女が演奏しだしたのは━━━彼女の右手が素早く動く━━━back numberの「大不正解」のイントロ部分だった━━━よく見ると、弦を押さえる左手の動きも激しい。すごく、上手だ。驚いた。そして、感動した。彼女に、こんな特技があったなんて、中学校時代から彼女を知ってるのにほとんど気づけてなかった。僕は、初めて思ったかもしれない。彼女のことを、「カッコイイ」と。僕も、早くこんな風になりたいと思った。こんな人に教えてもらえるなんて、とても名誉なことだとも思った。弦歌は、完璧にイントロとサビの部分を弾き終えた。

「す、凄い!上手いなぁ。僕、弦歌に教えてもらえるなんて、すごくツイてるよ」

「ありがと。次は、天があたしに演奏聴かせられるくらいにまで、上達しといてね!よし、今からやろっか!」

「うん!」

テスト期間に、指だけは暗記していただけあって、ワンフレーズは弾けるくらいに上達した。「ワンフレーズ」というのは、カバー曲投票で決定した、「シュガーソングとビターステップ」、「This game」の中の、「シュガーソングとビターステップ」のワンフレーズのことだ。一時間でワンフレーズ弾けるようになったので、今後の上達が予想できてとても楽しくなった。誰得な情報だが、僕のピックは白色である。その後も練習を続け、午後六時になる頃には、「シュガーソングとビターステップ」はほとんど弾けるようになっていた。弦歌の教え方が上手いのだ。

「天、すっごく上手くなった!」

もう一度言うが、弦歌の教え方が上手いのだ。

「ありがとう。弦歌のおかげだよ」

「いえいえー。あ、もうこんな時間なんだね。どうする?」

「一応親には六時って言ってあったんだ」

「なら、終わろっか。明日は家で自主練だよ?」

「わかってるよ。するなって言われてもしたいくらい」

「それはよかった。でも、二番終わってから大サビに入るまでのとこは、まだやらないでね。次に教えるから。あ、『This game』は自分でやっててもいいよ」

「了解。じゃあね。今日はありがとう」

「うん。バイバイ!」

空は紅く染まり、僕に夕焼けの美しさを改めて思い出させる。一日の終わりは、やはり夕焼けであるべきだ。それでも最近の人間は、夜になっても活動を続けちゃうんだけど。僕も、こう言っておいてその中の一人である。結局、午後十一時半までギターを練習して、眠りについた。


休日の生活リズムは、よく狂う。いつもなら、十一時に寝て六時に起きるのに、昨日は十二時に寝たし、さっきは九時に目を覚ました。ベッドから出ると、今絶対に見てはいけないものを見てしまった。シンプルなフォルムに、青色のボディ。そう、ギターである。十時には止めよう、十時には止めよう。こう思った時は、だいたい結果はわかっている。そう、いつの間にか十時半になっていた。これはまずい。お腹がすいた。こうなったら、ブランチだ。やはり、狂いまくっている。ギターの影響、「所為」とは言わない、もあるのだが。その後、服を着替えたり、その他もろもろしたりして、十一時に。親に車で最寄り駅まで送ってもらって、電車に乗って学校の最寄り駅まで。そこで、夕辺と合流する。

「おう、天」

「やあ、夕辺」

喉の調子を確認する。うん、大丈夫だ。

駅の近くに止めさせてもらっている自転車に乗り、僕らは次に戊奈、硯人、村詩と合流する。彼らも自転車に乗って、五人で向かったのは、近くの、と言っても自転車で三十分以上かかる、カラオケ店。今日は、バドミントン部の五人でカラオケ大会だ。僕は、カラオケに行ったことがまだ三回ほどしかないから、あまり慣れてはいないけれど、その三回の全てで、最初に歌ったのは米津玄師さんの「ピースサイン」だった。そう、僕と風花があの日歌った歌だ。今日も、「ピースサイン」を歌う。しかし、結果は八十八点と、一番得意な歌にしては低かった。というのも、硯人はスピッツの「楓」で九十二点を叩き出していたし、夕辺に関しては、ヨルシカの「ただ君に晴れ」で九十三点を出していた。夕辺と戊奈が一緒に「This game」を歌っていたので、今後の為にしっかり聴いておいた。僕らがカラオケに行く時はいつも、スコアアタックというものをする。五曲歌って取れた点数の合計が一番高かった人の勝ち。最下位はカラオケ店の一階の自販機のポテトをみんなに奢る。その中での硯人の「楓」と、夕辺の「ただ君に晴れ」だったのだ。僕は、戊奈といい勝負をした。米津玄師さんの曲、「アイネクライネ」で八十九点を出すなどして、危なく、戊奈に勝つことが出来た。みんなでポテトを食べて、また歌って、とても楽しかった。今度は、「ピースサイン」よりも「アイネクライネ」の練習をしておこうと、心に誓ったのだった。結局、カラオケ店には七時間くらいいた。夜八時になって、暗い道を夕辺、村詩と一緒に自転車で帰る。戊奈と硯人とは、現地解散した。彼らは、家からそのまま自転車で来たのだ。僕ら三人は、駅から自転車だから、一緒に帰ることになった。

「天、ギターどうだ?」

「『シュガビタ』はなんとか弾けるようになったけど」

「おお。いいな。また今度、俺ん家に練習しに来るか?」

「あ、是非!」

「オッケー。夕辺は、ドラムどうなんだ?」

「まぁ、姉さんに教えてもらってなんとか」

「いいねぇ、お前ら。俺はまぁ、通常運転で頑張ってるから」

「村詩の場合は通常運転が常人のものとかけ離れてるんだよなぁ」

「そうでもないんだが。まぁ、二人とも、合同練のときに成果見せあおうぜ!」

『おう!』

「お、もう駅だな。じゃあな!」

『おう!』

村詩は駅と言えど、別の駅から乗るのだ。そして、僕と夕辺はそれぞれ別方面に帰る。だから僕は、一人になってしまう。

「じゃあね、夕辺」

「おう。またな」

「うん」

その後は家で、喉の調子を伺いながら、少し暑くなってきた夜を過ごした。


そう言えば作曲をしなければならないということに気づいたのは、寝る前だった。

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