宿敵と頂点
「アネモイ・ウィンド(150,3000)!」(小鳥遊風花、残り586点)
「ガイアウォール(100,被ダメージ-1500)!駄目だ、光!あとは頼んだ!」(桐生大地、残り84点)
「わかった」
アネモイ・ウィンドが、桐生君の体を貫いた(桐生大地、残り0点)。
「小鳥遊さん。君もここで終わりだ」
桐生君が去った後、月島君はそう言って、カッターシャツのポケットから、見覚えのある瓶を取り出した。
「あなたも………!」
「いや、そうじゃない。寧ろ、君が持っていることがおかしいんだ。これは、スタンダードスターだけが手に入れられるはずなのに。まぁ、天が関係しているのだろうけど」
そして彼は、色的に見て「能力増強」であろう瓶の中身を流し込み、更に同じものをもう一本飲んだ。その後、私の知らない色をした瓶の中身を飲んだ。
「『体力倍増』。部屋の奥の方にあった。準備はいいかい?」
「ええ、いつでも」
「フェガロフォトアルテミス(250,4500)!」(月島光、残り1418点)
「アネモイ・ウィンド(150,3000)!」(小鳥遊風花、残り436点)
しかし、相殺目的のアネモイ・ウィンドも虚しくなるほど、月島君の攻撃は強かった。私は残りの瓶をアドバンスクラスに飛ばすことしかできなかった(小鳥遊風花、残り0点)。
「一つ、いいことを言っておくよ。きっと為になる。バトルイベント規則第十三条、『能力について、各生徒はこれを攻撃や防御、又其の他に使用するとき、自分のイメージに於いて、ある程度自由に使用してよいが、暴走させてはならない。これを犯した場合、退学処分とする』暴走するのは、『能力増強』、又は『体力倍増』の瓶の中身を一日以内に四本分以上飲んだとき。天にも言ってあげてくれ」
「わかったわ。でも、なんでそんなこと知っているの?」
「試してみたんだ、昨日。俺は、天のことはライバルだと思っている。だからこそ、退学処分になんてなって欲しくない」
彼の言葉には、嘘などないと思われた。昨夜は、眠ることが難しいくらいに、月が光り輝いていたから。
「青澤天。何のつもりだ?」
「やぁ、智楯君。君を待っていた」
こうなってしまった以上、風花から風で送られてきた「体力分与」は要らない。残りの「能力増強」と「体力回復」一本ずつをポケットに入れて、三本の「体力分与」を床に叩きつけ、粉々に砕いた。
「高天原の射光(15,300)」(智楯槍都、残り886点)
「オリュンポスシールド(100,防壁:ヒットポイント3000)」(青澤天、残り178点)(オリュンポスシールド、残りヒットポイント2700)
二本の瓶を一気に飲む(青澤天、残り828点)。
「高天原の煌炎(50,1000)」(智楯槍都、残り836点)
繰り出された豪炎を、オリュンポスシールドが断ち切る(オリュンポスシールド、残りヒットポイント1700)。
「真・雷霆スマッシュ(75,750、防御貫通)!」(青澤天、残り753点)
「高天原の陽炎(100,2000)」(智楯槍都、残り736点)
真・雷霆スマッシュは、相殺されるどころか打ち消され、高天原の陽炎は消えなかった。あれは、オリュンポスシールドでは防ぎきれない。とりあえず、避けることにした。テレボルテージミクロ(10,超高速移動)で、彼を抱えて窓ガラスを割る(青澤天、残り743点)。僕と外の地面に負電荷、智楯君に正電荷。思い切り彼を投げ落とすと、彼は電気の力で怪我がないように地面に貼り付けられた。エレクトログルー(5,拘束)(青澤天、残り738点)。そして僕は高翔する。ル・ヴォル・ブレケラヴノス(5,高翔)(青澤天、残り733点)。次にやるのは、絶対に避けられない分、精度や速度を全て無視して威力だけを高めた、天雷スマッシュ(100,2000)。そのはずだった。
「天!俺も入れてくれよ」
光の声だった。一瞬の迷い。そして決断。
「なら、先に光から」
撃ちかけた天雷スマッシュを、光に向ける(青澤天、残り633点)。
「アスピダ・ムーンライト(200,被ダメージ-4000)」(月島光、残り1218点)
僕は、彼の残り体力を見て、絶句した。勝てるのか?いや、勝てる訳がない。
「フェガロフォトアルテミス(250,4500)!」(月島光、残り968点)
「オリュンポスシールド(100,防壁:ヒットポイント3000)!」(青澤天、残り0点)
嘘だろ………?!オリュンポスシールドでも防ぎきれないなんて!
「か、完敗だ………」
「お疲れ、天。次も、勝負しよう。智楯は俺が倒す。じゃあな、俺のライバル」
「ああ」
僕は、彼にライバルと認められていることに、歓喜した。窓の外を見ても、智楯君はいなかった。そう言えば、遊撃部隊はやられちゃったのか。
危なく、逃げ仰せた。
『とりあえず、月島は強い。まずは、紺野が言っていた部屋を探そう』
「僕も同意だ」
『二棟は危ない。まずは一棟だ』
「今は交代した方がいいのではないか?」
『いや、ばったり出くわした時のために、直感のお前の方がいい』
「わかった」
一棟を探し回るも、何もなかった。
『二棟に行く時は気をつけろ』
「わかっている」
二棟を素早く通り過ぎ、三棟へ。一階、何も無し。二階、月島がいた。しかし、見つからずに三階へ。三階、怪しげな部屋発見。入って見ると、奥にドアがあった。確定演出だ。彫られた文字を見ると、『ギリシャの最初に賭けろ。15、14、12、25、空白、1、4、22、1、14、3、5』とあった。
『『ギリシャの最初』はアルファ、『賭ける』はベット。だから、アルファベットだ。数字はアルファベットの順番で、その通りに読むと『only advance』。アドバンスクラスのみ』
「ここで合ってるな?」
『ああ。できるだけ迅速に探せ』
「ああ」
「能力増強」、「体力回復」、「体力分与」、「体力倍増」、………。
『待て。一つ、気になるものがあった』
「どれだ?」
『「防壁生成」だ。これはお前には必要だろう?』
「ああ、そうだな。拝借しておこう」
『気になるものを持っていけ。体力分与などは、絶対に要らない』
「わかっている」
結局、持ち出したのは「能力増強」二本と、「体力回復」五本と、「体力倍増」一本と、「防壁生成」三本だった。それぞれ瓶の大きさが違うので、持っていくのが困難な物も簡単な物もある。例えば、「体力倍増」などは、結構大きめの瓶に入っているので、一本しか持ってこれなかった。「防壁生成」以外を一本ずつ飲む(智楯槍都、残り1802点)。
『技は、俺が提示した中から直感で選べ』
「おう」
それから、技をいくつか提示された。
その後、少し歩くと、見つかった。月島だ。
「よう、智楯。君で最後なんだ。さぁ、倒させてくれよ」
「そうはさせない。僕が負けるわけがない」
「フェガロフォトアルテミス(250,4500)!」(月島光、残り718点)
「防壁生成」の瓶を叩き割る。すると、もちろん防壁が現れた。防壁がフェガロフォトアルテミスから僕を守る(防壁、残りヒットポイント500)。更に、イメージを改めたアフターグロウ(150,4500)を撃ち込む(智楯槍都、残り1652点)。
「アスピダ・ムーンライト(200,被ダメージ-4000)」(月島光、残り18点)
「終わったな」
「まだだ!」
月島はそう言って、色からして「体力回復」であろう瓶の中身を飲む(月島光、残り1668点)。
「まだ、終わってない!俺は絶対に、君を倒す!俺のライバルに誓ったんだ!フェガロフォトアルテミス(250,4500)!」(月島光、残り1418点)
「いいか、そんなことはできる訳がない」
「防壁生成」の瓶を再び叩き割る。そして、先ほどから聴こえていた、『次の月島の攻撃を凌いだら、代わってくれ』という言葉通りに、僕はまた暗い水中に身を預けた。
フェガロフォトアルテミスは、放ったあとの反動が大きい。この距離なら、俺の槍は届く。こいつを今倒す為なら、代わってもらうしかない。
「次の月島の攻撃を凌いだら、代わってくれ」
どうか、届いてくれ。俺を、信じてくれ。俺たちの身体が、「防壁生成」の瓶を叩き割った。その後、深い水から、俺は引き戻された。行くなら、今だ。今を逃せば、敗ける。新たな技を。防がれない、最強の技を。
「アリスィア・ロンヒ・アテーネー(250,1500、防御貫通、回避不可)」(智楯槍都、残り1402点)
「うっ!マジか!嘘だろ?!」(月島光、残り0点)
「スタンダードスターがどれだけ頑張ったって、俺には勝てない。だが、いい戦士だ。お前も、青澤も。いつかこの定理が崩れて、俺が敗れた暁には、俺はこの学校を退学してやる。超えてみろ、自分たちの力で」
「ああ。早速次に超えてやる。だが、退学なんて考えちゃ駄目だ。君だって、俺の大事なライバルなんだから」
「いや、これはある人物との約束なんでね。残念ながら、今更変えることはできない」
「その約束、君を打ち破った後で打ち破ってやる」
「それは頼もしい。期待している。だが、俺は絶対に負けない」
『これより、ショートホームルームを開始するので、各自ホームルーム教室へ戻って下さい』
放送が流れたので、月島にクラスに戻るよう促す。彼は、去っていった。
『やるじゃないか、僕』
「ああ。俺たちは、二人で一人だ。もう、離れてはならない。協力すれば、こんなに簡単に勝てるのだから」
『そうだな。二人で一人、良い言葉だ』




