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蒼雷の高翔  作者: 氷華 青
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戦神と陽神

「生物準備室の話です」

「ほう?」

「先生もわかられていることでしょう。生物準備室の奥にあるドア、あれには、暗号が入っている。僕には、わかりました。あれが何を意味するのか」

正確には、音無き声に、だが。

「あのドアか。私が取り付けたのではない。私が赴任したときから、あったものだ」

「あれは、『基礎の星』、つまりスタンダードスターにしか開くことができないという暗号でした。アドバンスクラスには、開く権利はないということでしょう」

「ああ、それがどうしたんだ?」

「あの暗号は、誰のものですか?」

『お前にその交渉は不可能だ』

もう、僕は疲れていた。苦手な思考を散々巡らせ、勉強会を計画し、この交渉も開始した。挙句、前者は失敗し、後者も失敗しかけている。ストレスと責任で、僕の心は燃え滾っていた。これでは、駄目だ。この、音無き声の主に任せるしかない。そして、僕は底のない水の中に身を投じた。




『あの暗号は、誰のものですか?』

「お前にその交渉は不可能だ」

その瞬間、視界は開けた。

『頼んだぞ、もう一人の僕』

俺は、俺だけでいたいのに。まぁ、ここは協力しよう。

「あの暗号は、私が作った」

「部屋の内装も、変えたのでしょう?薬瓶を置けるように」

「ああ、そうだ。瓶を並べたのも、作ったのも私だ。だが、それがどうした?それが何かまずいのか?」

「まずいも何も、バトルイベント規則第十四条を参照してみてください」

「『アドバンスクラスは、基本的に敗北してはならない。敗北した場合、その学年のアドバンスクラス全員に補習室での週末講座一日七時間二日分を課す』、か。要するに、これだけスタンダードクラスにアドバンテージを与えておいて、負けるなとはどういう事か、と言いたいんだな?」

「流石、化学担当だけはありますね。素晴らしい考察力だ。そうですね、それでは物足りない」

「君のその態度でそれはよくわかった」

「要するに、スタンダードクラスにアドバンテージを与えておいて負けるなということはこのバトルイベントという行事の目的上絶対にない。よって、アドバンスクラスにも同じように、こういった部屋があるのでしょう?と言いたいのです」

「なるほど。それに関しては、他の先生に訊いて欲しい。私は、この制度が始まった三年前の年、三年生の学年主任をやっていたから、校長の要望を請けてあそこを拵えただけであってね、アドバンスクラスに対しては、その年に三年生のアドバンスクラス担任をしていた方に訊いてみたらどうだい?」

「了解しました。その方はどなたでしょうか?」

「彼だ。紺野先生だ。もう、私には訊かないでくれ」

「まだ何か、隠しているのでしょうが、まぁ、いいでしょう。それでは、契約をしませんか?」

「内容によるな」

「アドバンスクラスがこのバトルイベントに勝利すれば、あなたがこの部屋や瓶に関することを洗いざらい俺に教える。俺が負ければ、俺はこの学校から出ていきましょう」

「本当に、出ていくんだな?出ていくということは、退学処分を受けるという事だぞ?」

「そういう事でしたか。俺はてっきり、一旦下校する事だと………まぁ、それでいいでしょう」

「君が退学処分を受けるというのなら、契約をしよう」

「わかりました。では、紺野先生を呼んで頂けると嬉しいのですが」

「まぁ、いいだろう。紺野先生!」

「何でしょうか?」

「彼が、話があるとの事ですので」

「端的に話せ、智楯」

「スタンダードスター、薬瓶、部屋。これらはアドバンスクラスにはないのですか?」

「端的でわかり易かったぞ。実を言えば、ある、とだけだ。自分で探せ」

「ヒントなどは?」

「なくてもわかると、俺はお前を評価している」

「了解しました。では、失礼しました」

アドバンスクラスを放っておいて大丈夫だろうか。

『待て。放っておいてはいけない。アドバンスクラスに戻れ』

「煩い。俺はまだ、お前がもう一人の俺だとは認めていない」

『どうすれば、認めるんだ?』

「ならば、こうしよう。戦闘時は、お前の直感的判断力が必要だから、お前に代わる。だが、交渉時とか、日常生活は俺に代われ。思考が必要だ。もし、変わらなくても、俺は知らない。お前が出る時、中から指示を出さないだけだ」

『わかった。約束する』

「ならば、交代だ」

俺はゆっくりと、両眼を閉じた。




徐に、両眼を開く。今は、僕の体だ。

「いいか、戻るぞ」

『ああ。派手に暴れろ。俺はお前に、ある程度の信頼を寄せてる』

「僕もな」

走ってアドバンスクラスに向かう。速水から戦況が送られてきた。速水、残り12点。砂田、残り35点。対して青澤は、残り353点。職員室がある一棟を離れ、二棟へ。アドバンスクラスの教室に入った途端、状況が呑み込めた。中にいたのは、青澤天、ただ一人。彼はこちらを見て、不敵に微笑むのだった。

『勝てるのか?』

「わからない」、というのが僕の答えだった。




「倒した。アドバンスクラスを、二人一気に」

喜んだ途端、私が三棟の方に見たのは、クリムゾンクラスの三人だった。

「天!あの三人、私がこれで食い止める!天は智楯君を!」

瓶を見せて、言った。彼は、頷いた。

「クリムゾンクラス三人!宣戦布告します!」

「受けるわ、小鳥遊さん!久しぶりね」

一人は、織田さんだった。

「一人ずつでいいだろ?光」

「ああ」

あとの二人は、桐生君と月島君だった。

「じゃあ、まずは私が。あなた達が手を汚すまでもないわ」

「絶対、リベンジするから!」

「能力増強」の瓶を手に取り、飲む。

「そ、それは………!」

「始めるわよ。スラッシュウィンド(100,1000)!」(小鳥遊風花、残り586点)

「うわっ!」(織田綾音、残り0点)

「これは油断できないな。次は俺でいいか?」

「もちろん。俺に出ろと?まぁ、出てもいいけど」

「そんなこと、言わねぇよ」

「スラッシュウィンド(100,1000)!」(小鳥遊風花、残り486点)

「ガイアウォール(100,被ダメージ-1500)!」(桐生大地、残り684点)

スラッシュウィンドがガイアウォールで無効化されている間に、「体力回復」の瓶を飲む(小鳥遊風花、残り736点)。

「スィモス・ガイア(200,2500)!」(桐生大地、残り484点)

「スラッシュウィンド(100,1000)!」(小鳥遊風花、残り436点)

三本のスラッシュウィンドで相殺する。そして、もう一本!

「スラッシュウィンド(100,1000)!」(小鳥遊風花、残り336点)

「ガイアウォール(100,被ダメージ-1500)!」(桐生大地、残り384点)

「スラッシュウィンド(100,1000)!」(小鳥遊風花、残り236点)

「スィモス・ガイア(200,2500)!」(桐生大地、残り184点)

「体力回復」と「能力増強」を飲む(小鳥遊風花、残り736点)。イメージを作り直す。いけるかな?でも、やってみるしかない。

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