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蒼雷の高翔  作者: 氷華 青
16/31

救済と交渉

ピンククラス防衛戦線は、何とか守ることができた。当初からの目的である、僕の点数温存も達成できた。しかし、ピンククラスはあの戦いで二十八人を失った。そしてさっき、煌輝を失った。遊撃部隊三人が無事であれば、ピンククラスは残り十一人。まだ、始まって一時間半も経ってない。ただ、統率者のいない勢力など、たとえ二クラス分でも比較的簡単に処理できるものだ。僕の計算によれば、パープルクラスもネイビークラスも、残り一人ずつだ。そう、目の前のこいつらだ。

「助かったなぁ、青澤。でも、もう守ってくれるやつはおらんでぇ」


━━━「頑張れよ、ピンククラス。この結果的に、ネイビークラスはピンククラスに大敗や。次は勝つで」━━━

━━━「なあ、青澤。ピンククラス、応援してるぜ」━━━

あれは、何だったのか。


「ふざけんなッ!こんな事までして僕を倒したかったのか?こんな事するくらいなら、正々堂々と来いよ!お前らのせいで煌輝は………。彼は、ここでやられるべきじゃなかった。やられるはずじゃなかったのに!いいか!僕は絶対にお前らを倒す!これは僕の為じゃない!焔煌輝の、犠牲を無駄にしない為だ!」

慣れない大声と、途中で何故か溢れてきた涙のせいで、僕の声は震えていたと思う。

「ほう、ええ度胸や。ホワイトグングニル(100,2000)」(伊達白、残り565点)

「ようやく青澤の登場か。マーキュリーインパクト(20,100)」(天野星、残り711点)

天野君のマーキュリーインパクトは、速かったと思う。でも、今の僕には、止まって見えた。天野君がマーキュリーインパクトを放出する前に、風花の周りにシールドを生成する。オリュンポスシールド(100,防壁:ヒットポイント3000)(青澤天、残り653点)。その後、テレボルテージミクロ(10,超高速移動)で風花の元に瞬間移動し、マーキュリーインパクトをかわす。恥ずかしながら、あれだけキレたけど、僕はまだ冷静だ。ホワイトグングニルがオリュンポスシールドに当たり、ホワイトグングニルが砕ける(オリュンポスシールド、残りヒットポイント1000)。

「真・雷霆スマッシュ(75,750、防御貫通)!」(青澤天、残り503点)

「そんなもん、効かんでぇ!ミッドガルドシールド(100,防壁:ヒットポイント10000)!」(伊達白、残り465点)

二人に向かった真・雷霆スマッシュは、その前に生成されたミッドガルドシールドを、僕のイメージ通りに貫通し、彼らを射抜いた(天野星、残り0点)(伊達白、残り0点)。

「嘘………だろ?」

「また………やられてしもたやと?」

「今のお前たちじゃ、僕には勝てない。わかったか。次は、人道的にも正しい方法で立ち向かってこい」

「痛感した。反省しとる」

「ああ、俺もだ。すまなかった」

「謝罪はこのバトルイベントが終わってからだ。わかったなら、さっさと僕の目の前から消えてくれ。さもなければ、第七条違反者として通告する」

バトルイベント規則で脅すと、二人は抜かしたままの腰を携えて保健室に向かった。

「天━━━」

腕の氷がなくなった風花が何か言う前に、僕は彼女に向かって土下座した。

「ごめん!あんな乱暴な戦いを見せて。けど、君がまだ臨戦態勢でいてくれてよかった」

「大丈夫。守ってくれて、ありがと。ヒーリングウィンド(50,回復 最大得点の50%)」(小鳥遊風花、残り686点)(青澤天、残り828点)

「回復、ありがとう。さてと、ここに、瓶の秘密が隠されてるかもしれないんだね?」

「あの人たちは、暗号が書かれたドアがあるって言ってた」

「あれか」

「そうだと思う」

「『法に従え。頭を使え』、か。そして、『3、8、13、18、15』という数字。なるほど、わかったぞ。たぶん、この暗号は煌輝も直ぐにわかったはず」

「え、そうなの?!それで、答えは?」

「この『法』っていうのは、バトルイベント規則のことで、『頭を使え』っていうのは、頭文字を使えってこと。この数字は、規則の第何条の頭文字を使えばいいかを示している。だから、答えは、第三条の『き』、第八条の『そ』、第十三条の『の』、第十八条の『ほ』、第十五条の『し』で、『基礎の星』。スタンダードスターの事だ。だから、スタンダードスターじゃないあの二人が開けようとしても、開かなかった。でも、僕や織田さんは簡単に開けられる」

取っ手に手を掛け、ドアを開けようとする。やはり、簡単に開いた。

「やっぱり、ここだったんだ」

あの瓶と同じような瓶が、ずらりと並んでいた。その下には、効能が書いてあった。「能力増強」、「体力回復」、そして━━━あった。「体力分与」。織田さんが使ったのは、これだ。僕は、とても小さいそれらの瓶を、三本ずつ拝借した。

生物準備室を出ると、奥でビリジャンクラスとアドバンスクラスが戦っているところが見えた。中間テストのときと同じように、ビリジャンクラスが押されている。

僕らの作戦はこうだった。瓶を回収できたら、煌輝はビリジャンクラスとアドバンスクラスを蹴散らし、できるだけ僕が智楯君に届くようにする。そして、三棟では、クリムゾンクラスとスカイブルークラスが二棟に来るのを防ぐ為に、ピンククラス残留部隊が阻止する。でも、今は煌輝がいない。その役目を、僕がやらなければならない。

「風花は僕のサポートに専念して欲しい」

「わかった」

自分で蹴散らし、自分で届く!

「真・雷霆スマッシュ(75,750、防御貫通)!」(青澤天、残り753点)

真・雷霆スマッシュは、対象を貫通し、壁に当たると消える。よって、一発放つと、大半を掃討することができる。さっきの一撃で、ビリジャンクラス六人と、アドバンスクラス十四人を倒した。これで、廊下にいるのは、僕と風花だけになった。皆、何事かと思っただろう。三秒後に、敗北者たちの視線が全て、僕に集まった。その中には、夕辺の姿もあった。

「さっきの………天がやったのか?」

「ああ」

「すげぇな」

「ありがとう。じゃあ、僕は先を急ぐから」

「おう。頑張れよ!」

正直、今は『頑張れよ!』という言葉を聞きたくなかった。僕は彼の方を向かずに、ただ走りながら手を挙げてひらひらとさせた。

ビリジャンクラスの中には、誰もいなかった。恐らく、ビリジャンクラスは敗北したのだろう。アドバンスクラスの前に着いた。ドアを開け放つ。中にいたのは、謎太とLayerと姫路さん。恐らく、軍師だろう。しかし、肝心の智楯君がいない。僕は風花に瓶を渡し、一人でアドバンスクラスの教室に入った。

「天、まさか一人で乗り込んで来るとはね」

「智楯君は?」

「彼なら、職員室に行ったよ」

「………そんなことどうでもいいけど、あなたを倒す」

「もう一つ訊くけど、アドバンスクラスは残り何人?」

「智楯がまだ臨戦態勢なら、四人だね」

「………もう始めるよ。百鬼夜行(120,ゴースト五体、ウィッチ三体、フランケン一体召喚)」(姫路霊奈、残り673点)

「容赦ないなぁ。真・雷霆スマッシュ(75,750、防御貫通)!」(青澤天、残り678点)

真・雷霆スマッシュは召喚されたものを全て消し去り、姫路さんをも貫いた。

「あぁっ!」

「天、つっよ」

「謎太、これは協力しないと」

「わかった」

「二対一でも必ず勝つ!真・雷霆スマッシュ(75,750、防御貫通)!」(青澤天、残り603点)

「ヘルメスカラネア(50,300、味方全員に自分の戦況伝達)!」(速水令也、残り532点)

真・雷霆スマッシュは、ヘルメスカラネアで相殺された。

「問題。日本三大奇書とは、『ドグラ・マグラ』、『虚無への供物』と何でしょう?」

「『黒死館殺人事件』!」

「正解。だけど、もちろん攻撃を与えるよ。黒死館殺人事件(75,200、追加ダメージ250)!」(砂田謎太、残り630点)

「黒死館殺人事件って、どんな技?!」

衝撃波が僕に襲いかかる。すんでのところでかわし、真・雷霆スマッシュを放つ(青澤天、残り528点)。しかし、それもかわされ、一対一の状況を作り出そうとした僕の思惑は簡単に、成す事を辞さなければならない状況となった。状況を打破する方法を頭の中で巡らせる。しかし、詰むのは簡単だが打破するのはとてつもなく難しい。人生ってそんなもんだと、痛感した。




速水から、戦況が送られてきた。相当悪い状況のようだ。残り三人、僕を除いて二人。相手は、青澤天。僕は考えるのが苦手だ。暗記ならば、赤子の手をひねるより簡単にできる。定期テストの現代文なども、所詮は暗記なのだ。だからこそ、文系の僕がいる。

『やめろ。俺は理系だ』と、音無き声がする。

「五月蝿い。誰が何と言おうと、僕は文系だ。事実、テストの点数も文系の典型だろう」

「誰と話している?」

「失礼しました、学年主任、草野先生。少し、考え事を」

「考え事」、という言葉が出たのはありがたかった。

「君も、考え事をすると声に出してしまうタイプの人間か」

「そうですね」

作り苦笑いをする。

「そして、話とは?」

「生物準備室の話です」

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