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蒼雷の高翔  作者: 氷華 青
15/31

狡猾と失望

「お前ら」

「ん、どうした?」

「俺、思うんだが」

「何を?」

「今から、校舎の色んなとこ回って、なんか使えるモンねぇか探してみねぇか?」

「それはいい提案だ。ならば、二人ずつに分かれよう。クロガネ君と迅雷君が一棟で、僕と焔君が二棟。それでどうだ?」

まずい。何とか単独行動に持っていかねぇと。その瞬間、俺はいい事を思いついた。

「いいぜ」

「煌輝にしては、やるじゃねぇか」

「やるだろぉ、俺にしては。って、俺にしてはだとぉ?!」

「待て、やめろ、こんなとこで点数使うな!」

「んなことわかってらぁ」

「おお、煌輝が物わかりのいいヤツでよかったぜ」

「能力は使わねぇから、歯ァ食いしばれ」

学校中に、鈍い音(とクロガネの叫び)が響き渡った。

「と、いうことで………。一旦別行動だ。クロガネ君、迅雷君、幸運を祈る」

「俺らは大丈夫。煌輝を任せた」

「ああ」

「んじゃあな」

「おう。大河に迷惑かけんじゃねぇぞ」

「わかってら」

そして、二人は一棟に駆けて行った。それを見送る大河を置いて、俺はニトロエンジン(5、移動速度推進)で二棟の遠くまで逃げた。(焔煌輝、残り804点)交わして三十秒で勇との約束を破ったわけだが、気にするまい。そのまま生物準備室のドアを蹴破り、中へ。と、思っていたのだが。それは、既に開いていた。前述の動作をすることなく、中へ。助かったな、ドア。そして、その中には、人がいた。風花だった。『来ちゃダメ』、そう、眼で訴えかけていた。

「おっと、邪魔者や。フリーズロック(10,人身固定)」(伊達白、残り775点)

強い力で、後ろ手に縛られ、いや、後ろ手に凍らされた。

「この、能力は………!」

「別に俺は隠れるつもりないで。そう、伊達や。久しぶりやなぁ、焔」

「そして、パープルクラス委員の、天野だ。以後よろしく」

「ほんで、今思っとるであろう『何のつもりだ』について解説すると、天野」

「おう。俺ら、パープルクラスとネイビークラスは、このバトルイベント中だけ効力を持つ、同盟を結んだ。理由は、まず、俺がクラスメイトから聞いた、クリムゾンクラスが多用していた瓶薬のことを二クラスで調査するため。二つ目は、伊達が提案した、対青澤網をより強固なものにするため。三つ目は、単なる戦力の増強」

天野が話している間に、伊達が風花の方へ強く押してきた。俺はそれにたじろぐことはなかったが、素直に横に座った。

「説明を続けると、天野の情報を聞いて、俺は直ぐに、生物準備室やと思ったわけや。ほんで、バトルイベント開始直後から、天野と共にここまで急いで来た。そしたら、小鳥遊さんがこっちに走って来たってことや」

「そこからは、説明は簡単。この中に隠れて、伊達がさっきのようにフリーズロックをかければ、さっきお前が見た状況が作り出せるってわけだ。まぁもちろん、呼びたいのはお前じゃなくて、青澤だったんだがな」

「テメェら、自分が何やってんのかわかってんのか?」

「わかっとる。けど、俺らはこれに関してバトルイベントの規則には違反してないで。バトルイベント規則第九条、『バトルイベント中、点数のなくなった生徒に対して何人も能力攻撃を行ってはならない。行った場合、補習室にて八時間の自習、且つ反省文千字の提出を課す』。第十二条、『各クラスは、同じ学年であれば、同盟を結んでも構わない。その期限は、各クラス代表委員の同意の元で、自由に決定してよい』。第十七条、『バトルイベント中、職員が使用しない教室は本校生徒が自由に使用してもよい』。第二十一条、『バトルイベント中の生徒の生徒に対する監禁は、第九条に違反しない方法に於いて、且つ第十七条に違反しない教室を使用している場合に限り、これを認める』。な?違反してないやろ?」

確かにそうだ。やり方はどうであれ、こいつらのやってる事は合法だ。まだ動く足で、地面を思い切り踏み鳴らしたが、ただ虚しいだけだった。

「さてと………伊達、ちゃんとそいつら見といてくれよ?」

「わかっとるわ。天野のほうこそ、ちゃっちゃとその暗号、解読してぇや」

「ああ」

何?暗号?いや、そんなことより、この氷の手錠を解かないと。少しずつ炎を出し、徐々に氷を溶かしていく。十秒で溶けた。(焔煌輝、残り794点)

「風花、風花」

天野に目を遣っている伊達に配慮しつつ、風花に声をかけ、自分の手が自由であることをジェスチャーで伝える。

「今から風花のも解くから」

「ありがと」

「おっと、そんなことさせへんで。ホワイトグングニル(100,2000)!」(伊達白、残り675点)

首筋に冷たいものが当たる。その瞬間、俺の心は恐怖で支配されてしまった。

「ええか?これが当たれば、お前は即死や。そうゆうこともよう考えとけ。フリーズロック(10,人身固定)」(伊達白、残り665点)

「くっ」

「今度解いたら、容赦なくズドンや」

「わかった。なら、こうしてるのも暇だから、暗号を俺にも見せてくれないか?解けるかもしれねぇ」

これは俺の単純な興味だった。

「まぁ、もうなんにも狡いこと考えてなさそうやから、見したるわ。立ってくれ」

「持ってこれないのかよ?」

「扉に書いてあるんやから、しゃあないやろ」

「お、伊達。あ、連れて来たのか」

「おう。こいつにも手伝てもらおと思てな」

「どれどれ?『法に従え。頭を使え』?ちょっと考えたら、わかりそうだな」

その文言の下には、『3、8、13、18、15』という数字が彫られていた。そして俺は、一瞬見ただけで既に答えを出していた。

ここで、話はバトルイベント規則の話をしよう。


バトルイベント規則

・第一条『このイベントは、定期考査、及び実力考査最終日の一週間後迄に行われる。それ以外の開催は、基本的には認めない』

・第二条『このイベントでは、生徒の総合得点に応じた点数をヒットポイントの代用とする』

・第三条『教員の点数に関しては、他学年担当教員の製作した考査を受けることにより、担当教科の点数のみがヒットポイントの代用となる。又、該当する考査は1,000点満点とする。その使用に於いては、第二条の生徒に於いてのものと基本的に同じであるが、不測の事態を除いて、生徒に対して攻撃してはならない。あくまでも、生徒のバトルイベントであることを念頭に置くように』

・第四条『臨戦態勢について、以下のように定義する。ヒットポイントが一以上の生徒を、臨戦態勢の生徒とする。臨戦態勢でなくなった場合、該当する生徒を敗北と扱い、全て保健室にてバトルイベント終了まで待機とする』

・第五条『勝利について、以下のように規定する。臨戦態勢の生徒の中で、二クラス以上の者が存在する間は、バトルイベントは続行となる。臨戦態勢の生徒が或る一クラスの所属のみになった場合、そのクラスの勝利が認定され、バトルイベントは終了する』

・第六条『クラスの敗北について、以下のように規定する。クラスに臨戦態勢の生徒が一人もいなくなった場合、そのクラスを敗北とみなす』

・第七条『敗北した生徒は、出来る限り速やかに保健室に移動すること。臨戦態勢の生徒の妨害となった場合、補習室にて一時間の自習、且つ反省文千字の提出を課す』

・第八条『総攻撃、専守防衛など、軍師命令を行うことを許可する。但し、臨戦態勢でない者に対しての軍師命令は行ってはならず、従ってはならない。もし行った若しくは従った場合、関係する者全てに対して反省文五百字の提出を課す』

・第九条『バトルイベント中、点数のなくなった生徒に対して何人も能力攻撃を行ってはならない。行った場合、補習室にて八時間の自習、且つ反省文千字の提出を課す』

・第十条『各クラス、任意で軍師を立ててよい。但し、軍師以外はクラスの戦略を企ててはならない』

・第十一条『各クラス代表委員は、基本的にバトルイベント中のクラスの主権を持つ。但し、同盟や、条約を結ぶ場合、その場に赴くことが出来ない場合に限り、主権を委託してもよい』

・第十二条『各クラスは、同じ学年であれば、同盟を結んでも構わない。その期限は、各クラス代表委員の同意の元で、自由に決定してよい』

・第十三条『能力について、各生徒はこれを攻撃や防御、又其の他に使用するとき、自分のイメージに於いて、ある程度自由に使用してよいが、暴走させてはならない。これを犯した場合、退学処分とする』

・第十四条『アドバンスクラスは、基本的に敗北してはならない。敗北した場合、その学年のアドバンスクラス全員に補習室での週末講座一日七時間二日分を課す』

・第十五条『勝利クラスが決定せずに下校時刻となった場合、そのバトルイベントは次の平常授業の日に持ち越しとする。その場合、各クラス間での条約があればそれに従いつつ、出来る限り持ち越された日に原状から再開出来るようにすることを義務とする』

・第十六条『バトルイベント終了後、ショートホームルームを行い、その後は放課とする』

・第十七条『バトルイベント中、職員が使用しない教室は本校生徒が自由に使用してもよい』

・第十八条『補習室について、以下のように規定する。補習室に入室可能な者は、教員と補習対象の生徒のみである。それ以外の者が入室した場合、どのような理由であれ、補習室にて二時間の自習を課す』

・第十九条『バトルイベント中の生徒の生徒に対する殺傷は、これを禁ずる』

・第二十条『バトルイベント中の生徒の生徒に対する買収は、貨幣に直接関係しない価値を双方が得ることが出来る場合、これを認める。買収された生徒は、その後も所属クラスは自らのクラスと見なされる』

・第二十一条『バトルイベント中の生徒の生徒に対する監禁は、第九条に違反しない方法に於いて、且つ第十七条に違反しない教室を使用している場合に限り、これを認める』

・第二十二条『バトルイベントに参加する全生徒は、バトルイベントも学校生活の一環であるということを意識すること』

・第二十三条『この規則に記されているもの以外では、バトルイベント参加者は国内の法を犯してはならない』

・第二十四条『この規則の改定については、本校生徒会執行部が提起し、全校投票に於いて賛成過半数となった場合、認定される。これ以外の改定方法については、認めない』


とまぁ、こんな感じだ。軍師である天と俺と大河は、戦略に役立てるためにこの規則を丸暗記したから、暗唱できる。

「まだわからんのか?」

「おお、まだだ。すまん」

「まぁ、俺らもわからないからな」

「この、『法』っていうのは、なんなんや?」

「すまん、わかりそうって言ったが、やっぱわかんなかったわ。もう戻る」

「俺もついてくわ。天野、はよう解いてや」

「わかってる」

風花はちゃんと、俺が離れる前と同じ場所に留まっていた。本当は、逃げていて欲しかったが。こちらを向いた風花は、一瞬で何かに気づいたように、入り口のドアの方を向いた。

「風花………。なんで?」

その間だった。ドアのところにいた天に向かって、伊達がホワイトグングニルを投げようとしていたのは。

「天!危ない!」

「食らえ!」

ニトロエンジン(5、移動速度推進)でホワイトグングニルと天の間に割って入る(焔煌輝、残り789点)。狙っていた通り、ホワイトグングニルは俺の背中にぶっ刺さった(焔煌輝、残り0点)。

「煌輝………」

「俺のことより、伊達だ!あと、奥に天野もいる」

「ありがとう。でも、煌輝。バトルイベント規則第七条、及び第九条を覚えてる?」

「ああ。第七条、『敗北した生徒は、出来る限り速やかに保健室に移動すること。臨戦態勢の生徒の妨害となった場合、補習室にて一時間の自習、且つ反省文千字の提出を課す』。第九条、『バトルイベント中、点数のなくなった生徒に対して何人も能力攻撃を行ってはならない。行った場合、補習室にて八時間の自習、且つ反省文千字の提出を課す』。それがどうしたんだ?」

「早く保健室に行ってくれ。君が妨害と見なされるかもしれないし、僕が攻撃を当ててしまうかもしれない」

「そんな………ことかよ………」

俺はその時の天の、いや、青澤の冷たい声に驚き、慄いた。そして立ち上がって、逃げるように保健室に向かった。

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