歌唱と架橋
今日も授業という睡眠時間(特に数学)が終わり、紺野先生にまた怒られ、放課後。そろそろコーラス大会の練習をしなければならないということで、今日は初練習をした。三部合唱の編成で、僕は男子パートのリーダーをさせてもらった。中学時代は吹奏楽部に所属していたので、音楽に関しては少し詳しい。
「はーい、じゃあ、男子は練習始めよう!」
「おう」
というクラスメイトもいれば、知らぬ存ぜぬでスマホゲームをする者もいる。僕は溜め息を吐きそうになった。そのとき、横で誰かが一歩前に出た。
「いいか、テメェら。今は練習の時間だ。練習しねぇ奴は━━━」
煌輝は、一番近くにいた、以前彼が僕を机に叩きつけた時に、剣人(クロガネ君)と一緒に煌輝の後ろにいた、迅雷 勇(ヘラクレス)のスマホを取り上げ、
「━━━こうだ。」
何の躊躇いもなく熱を加えてただの溶けた鉄の塊にした。みんな呆気にとられて、開いた口が塞がらなかった。
「おい、どうしてくれんだよぉ、煌輝!何で俺なんだ!他にもいっぱいいるじゃねぇか、スマホ見てた奴!」
勇が泣いて煌輝にしがみつく。煌輝は笑みを浮かべながら、一瞬でスマホを直す。そう、忘れていた、彼の復元能力。
「あ、ありがてぇ」
「練習中は二度と━━━」
「━━━スマホは触らない」
煌輝が言おうとしていた言葉を、ある意味悟りを開いた勇が途中から紡ぐ。
「ただし、俺はスマホで歌の歌い方を調べていたんだ」
「横持ちしてた奴が良く言うぜ」
「なっ!バレてたのか」
二人はいつも通り、笑っていた。そして、誰もスマホを触るクラスメイトはいなくなった。CDをかけて、コブクロの『未来』が流れる。男子は、スマホを触っていた割には上手かった。聞こえてくる女子の声も、とても上手だ。これは、賞を取れるかもしれない。
そして、一時間程の歌練が終わり、遅れてクラブに行く。
「おう、天」
「やあ、夕辺。ちょっと話があるんだ」
「ん、何だ?」
「文化祭でバンド発表をするんだけど、一緒にやらない?」
「いいじゃん。何の楽器でやればいい?」
「できればドラム」
「オッケー、ドラムなら家にある」
一人目の当てが何故彼だったかというと、彼はその長身とセンスで、運動も芸術系もなんでも出来そうだったからと、彼の姉は吹奏楽部でパーカッションだったと聞いたから。とりあえず、一人目確保。そして、もう一人もバドミントン部だ。
「村詩。ギター得意だよね?」
「まあ、得意って程でもないが」
「文化祭でバンドをやるんだけど、入ってくれないかな?」
「もちろん、断る理由なんてない」
「ありがとう、でも、やって欲しい楽器はギターじゃないんだ」
「何をやればいい?」
「ベース」
「なら大丈夫だ。ちなみにメンバーは?」
「それは俺も気になるところだ」
「えっと、ピンククラスの僕と、小鳥遊風花と、美辻弦歌と、スカイブルークラスの佐倉心と、夕辺と村詩」
「女子三人はよく知らんな」
「心は、バドミントン部だよ?」
「どれどれ?」
「ほら、あそこ」
僕は、二つ隣のコートで練習している心の方を指す。
「ああ、あの子か」
「もしかして、狙ってたり?」
「ないない」
「俺もないわ」
彼女は別に不細工なわけではないと思うが、彼らの視点と僕の視点とは、当然違う。さて、これでバンドメンバーは集まったのだから、明日は風花に報告しておかないと。
翌日。
「風花、バンドメンバー集まったよ!」
「え、本当?誰、だれ?」
「ベースがパープルクラスの村田優詩で、ドラムがアドバンスクラスの緋空夕辺」
「わかんないなぁ、まぁ、とりあえず、チャットのグループ作ろっか」
「うん」
その日の学校生活では、歌練以外は普段と変わらない、いつも通りの日々を過ごした。
Fuka『あ、全員集まったね!このバンドのヴォーカルの小鳥遊風花です、これからよろしくーーー!こんな感じで最初は自己紹介していきましょー!』21:34
天『ギターの青澤天です。僕は全員のことをよく知ってるので、最初は架け橋になれたらと思います。これからもよろしく!』21:37
つるか『ギターの美辻弦歌です。これからよろしく!』22:03
こころ『キーボードの佐倉心です。よろしく!』22:07
村詩『ベースの村田優詩です。一応ギターとベースはよくわかってます。よろしく!』22:12
夕辺『ドラムの緋空夕辺です。この中では一番練習不足だと思うので、自主練頑張りたいです。これからよろしく!』22:23
Fuka『よし、みんな済んだね!とりあえず、明日少しの間だけ集まって欲しいのだけど、ピンククラス前に16:00で大丈夫かな?』22:32
こころ『オッケーだよ!』22:40
天『オッケー』22:41
村詩『了解っす』22:52
つるか『オッケー!』23:03
夕辺『わかりました』23:15
もう連絡もないようだし、早く寝よう。




