復活の戦士たち
突然、地面に二つの影が映った。
「逃がさねえぞ、英雄さんよぉ」
「今度は負けませんよ」
空からダサ男とウワンが降ってきた。いつの間にか、地面に水のツタが張り巡らされている。彼らは水のツタに着地した。落下の衝撃を吸収したらしい。
「なんてしつこい男だ」
ダサ男は誰かを睨みつけている。ナレーションは気づかない振りをした。
「てめえ、自分が睨まれてるって分かってんだろ」
急所を蹴ったことを根に持っているようだ。器が小さいなぁ、とナレーションは思いました。
「つくづくムカつく女だ」
結婚式をめちゃくちゃにした男が言うセリフではない。
世界中の人に聞いてみろ。みんなダサ男のほうがムカつくって答えるぞ。
「もう一回言って。聞こえなかったわ」
ダサ男は耳の穴をほじっている。ムカつく。絶対コテンパンにしてやる。
「来いよ。俺とウワンのコンビに勝てるもんならな」
甘い。ナレーション軍団の絆を見せてやる。
使子と力男のいつ軍団になったという視線が痛い。
「――ならばミーも軍団の一員にしてもらおうか」
この声は! あぁ、彼女のものだ。頬に涙が伝うのを感じる。
「シバールさん!」
使子の嬉しそうな声が聞こえる。
「やぁ、レディたち。また会ったね」
シバールは生きていたのだ。
「はっはっは、わらわも混ぜてもらおうか」
颯爽と姿を現すマージョに安堵した。生きていてくれた。
「マージョさん、生きていたんですね!」
使子のほっとしている様子が伝わる。彼女を庇って、マージョは落ちていった。罪悪感もあったのかもしれない。
「当然じゃ。わらわは世界一の魔女じゃぞ。そう簡単にはやられんよ」
マージョはニヤリと笑った。その表情に心強さを感じた。
「――私もいるあるよ」
くるくると回転しながら、カンフが降ってきた。
「カンフさんも無事だったんですね!」
「当たり前ね。死なないと約束したあるよ」
使子とカンフは手を取り、喜び合う。ナレーションも輪の中に入った。嬉しい。無事でいてくれて。
「――オレも来た」
黒マントをなびかせ、遊花が姿を現す。
「遊花さん!」
ぎゅっと抱きつく使子。ぽんぽんとあやす遊花。ずるいと割り込むナレーション。
"私"たちは無事を喜びあい、抱きしめあった。彼女たちのぬくもりに涙が出そうになる。
「ホント、無事で良かったな。俺も嬉しいぞ。さぁ、俺にも抱きつ……」
考える前に手が出た。それは彼女たちも同じだった。女子の輪に入ろうとする不届き者、ダサ男の顔面に六つの拳がめり込む。
ダサ男は吹っ飛んだ。手を上げた使子たちとハイタッチを交わした。めちゃくちゃ小気味良い音が鳴った。
もう一回やりたい。あっ、もうみんな手を下ろしてる。もう一度上げてくれた。優しい。
「何やってるんですかあなたは?」
「一人ぐらい男が混じってもバレないと思ったんだよ」
「そんなわけないでしょ」
「返す言葉もねえや」
無様に倒れるダサ男を、ウワンが抱き起こした。さっさとどっか行かないかなぁ。
彼女たちと楽しくお喋りしたいのに。
早くどっか行けという視線を送った。送り続けた。ダサ男は気まずそうに目を反らした。勝った。
「ちっ、お望みどおりに退散してやるさ。目的を果たしたらな」
ダサ男は指を鳴らした。その顔で指パッチンとか笑える。
「おい」
ダサ男は眉を釣り上げて怒っている。鏡を見ればいいのに。
「はい、手鏡です」
ウワンは手鏡を取り出した。なんで持ってるんだろう?
「なんだこれは?」
ようやく気づいたみたいだ。顔の落書きに。
「絶対てめえの仕業だろ」
なぜナレーションだとバレた。
「こん中じゃ、てめえが一番落書きしそうだからだ」
なるほど、ナレーションのことをよく分かっている。ダサ男と呼ばれるだけはあるな。
「呼んでんのてめえだけだろ。ったく顔に落書きするかよ普通。イケメンが台無しじゃねえか」
大丈夫。落書きがなくてもイケメンではない。イケメンであろうはずがない。世の中のイケメンに謝れ。
「俺、そんなに酷い顔してる?」
「性格が酷いのは確かですね」
右腕のウワンにまでバカにされ、ダサ男は膝から崩れ落ちた。