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怪力男の現彼女と四人の歴代彼女たち  作者: 音無威人
あくまで序章に過ぎない
7/10

復活の戦士たち

 突然、地面に二つの影が映った。

「逃がさねえぞ、英雄さんよぉ」

「今度は負けませんよ」

 空からダサ男とウワンが降ってきた。いつの間にか、地面に水のツタが張り巡らされている。彼らは水のツタに着地した。落下の衝撃を吸収したらしい。

「なんてしつこい男だ」

 ダサ男は誰かを睨みつけている。ナレーションは気づかない振りをした。

「てめえ、自分が睨まれてるって分かってんだろ」

 急所を蹴ったことを根に持っているようだ。器が小さいなぁ、とナレーションは思いました。

「つくづくムカつく女だ」

 結婚式をめちゃくちゃにした男が言うセリフではない。

 世界中の人に聞いてみろ。みんなダサ男のほうがムカつくって答えるぞ。

「もう一回言って。聞こえなかったわ」

 ダサ男は耳の穴をほじっている。ムカつく。絶対コテンパンにしてやる。

「来いよ。俺とウワンのコンビに勝てるもんならな」

 甘い。ナレーション軍団の絆を見せてやる。

 使子(じぇるこ)力男(りきお)のいつ軍団になったという視線が痛い。

「――ならばミーも軍団の一員にしてもらおうか」

 この声は! あぁ、彼女のものだ。頬に涙が伝うのを感じる。

「シバールさん!」

 使子(じぇるこ)の嬉しそうな声が聞こえる。

「やぁ、レディたち。また会ったね」

 シバールは生きていたのだ。

「はっはっは、わらわも混ぜてもらおうか」

 颯爽と姿を現すマージョに安堵した。生きていてくれた。

「マージョさん、生きていたんですね!」

 使子(じぇるこ)のほっとしている様子が伝わる。彼女を庇って、マージョは落ちていった。罪悪感もあったのかもしれない。

「当然じゃ。わらわは世界一の魔女じゃぞ。そう簡単にはやられんよ」

 マージョはニヤリと笑った。その表情に心強さを感じた。

「――私もいるあるよ」

 くるくると回転しながら、カンフが降ってきた。

「カンフさんも無事だったんですね!」

「当たり前ね。死なないと約束したあるよ」

 使子(じぇるこ)とカンフは手を取り、喜び合う。ナレーションも輪の中に入った。嬉しい。無事でいてくれて。

「――オレも来た」

 黒マントをなびかせ、遊花(あそぼっか)が姿を現す。

遊花(あそぼっか)さん!」

 ぎゅっと抱きつく使子(じぇるこ)。ぽんぽんとあやす遊花(あそぼっか)。ずるいと割り込むナレーション。

 "私"たちは無事を喜びあい、抱きしめあった。彼女たちのぬくもりに涙が出そうになる。

「ホント、無事で良かったな。俺も嬉しいぞ。さぁ、俺にも抱きつ……」

 考える前に手が出た。それは彼女たちも同じだった。女子の輪に入ろうとする不届き者、ダサ男の顔面に六つの拳がめり込む。

 ダサ男は吹っ飛んだ。手を上げた使子(じぇるこ)たちとハイタッチを交わした。めちゃくちゃ小気味良い音が鳴った。

 もう一回やりたい。あっ、もうみんな手を下ろしてる。もう一度上げてくれた。優しい。


「何やってるんですかあなたは?」

「一人ぐらい男が混じってもバレないと思ったんだよ」

「そんなわけないでしょ」

「返す言葉もねえや」

 無様に倒れるダサ男を、ウワンが抱き起こした。さっさとどっか行かないかなぁ。

 彼女たちと楽しくお喋りしたいのに。

 早くどっか行けという視線を送った。送り続けた。ダサ男は気まずそうに目を反らした。勝った。

「ちっ、お望みどおりに退散してやるさ。目的を果たしたらな」

 ダサ男は指を鳴らした。その顔で指パッチンとか笑える。

「おい」

 ダサ男は眉を釣り上げて怒っている。鏡を見ればいいのに。

「はい、手鏡です」

 ウワンは手鏡を取り出した。なんで持ってるんだろう?

「なんだこれは?」

 ようやく気づいたみたいだ。顔の落書きに。

「絶対てめえの仕業だろ」

 なぜナレーションだとバレた。

「こん中じゃ、てめえが一番落書きしそうだからだ」

 なるほど、ナレーションのことをよく分かっている。ダサ男と呼ばれるだけはあるな。

「呼んでんのてめえだけだろ。ったく顔に落書きするかよ普通。イケメンが台無しじゃねえか」

 大丈夫。落書きがなくてもイケメンではない。イケメンであろうはずがない。世の中のイケメンに謝れ。

「俺、そんなに酷い顔してる?」

「性格が酷いのは確かですね」

 右腕のウワンにまでバカにされ、ダサ男は膝から崩れ落ちた。

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