釈然としない決着
「横殴りの雨」
ダサ男は拳を構えた。突然、力男が吹っ飛ぶ。殴る音だけが、辺りに響いた。見えざる攻撃、まさかさっきの三位一体攻撃もこの技で。
「英雄なら、これぐらい避けろよ」
余裕をぶっこいているダサ男、その背後を使子が取る。
「拳血」
彼女の拳が、ダサ男の背を貫く。
「ぐっ」
前のめりになるダサ男を、剣下量声刃が捕らえた。声の刃が体を切り刻む。
「ぐあっ」
追い討ちをかけるように、力男の刃連武が襲い掛かる。
「ぐおっ」
こいつ、ダメージボイスのバリエーション少なすぎとナレーションは思った。
「ダメージボイスってなんだよ」
地面に倒れながらもツッコミを忘れない。そんなダサ男をフルボッコ。
「細マッチョップ」
「拳血」
「集中口撃」
ダサ男は力男と使子のカップルにボコボコにされた。
「ひれ伏すのはてめえだって言っておいて、ボコボコにされるのはどんな気分?」
精神攻撃も忘れない"私"。マジ、ナレーションの鑑。
「おかっ……しいだろ。どう考えてもっ、タイマンの流れだったろうがっ」
息も絶え絶えといった様子で、ダサ男は声を上げる。ナレーション、バカだから流れとか分かんない。てへっ!
「くそっ、ちょっと可愛いじゃねえか」
「――!」
はっ! やってしまった。ダサ男は悶絶を打っている。
可愛いなんて言うから、つい急所を蹴り飛ばしてしまった。思い切り。
「うっ」
力男まで痛そうにしている。男の急所はそれほど痛いのか。
「あの、この人、気絶してませんか?」
使子の言うとおりだった。ダサ男は気を失っている。
「これで終わり?」
力男が唖然と呟いた。なんだこの終わり方は。勝ったのに釈然としない。
「えっと、終わったんなら、とりあえず降りません」
使子たちは、比翼連理の丘を一段ずつ降りていく。"私"は釈然としない気分をぶつけるかのごとく、ダサ男の顔に落書きをして、彼女たちを追いかける。
比翼連理の丘を降り、周囲を見渡す。枝階段の破片が飛び散っていた。
「みんな……」
使子は悲痛の表情を浮かべる。
「僕が捕まらなかったら、こんなことには」
力男は歯を食いしばり、血が滲むほど拳を握っている。見てられない。
「落ち込む暇があったら、彼女たちを探せ」
"私"は彼女たちが死んだと思っていない。死んだと思いたくない。希望を捨てたくはなかった。
「そうですよね。そう簡単にやられるはずありませんよね」
使子はばっと顔を上げ、枝階段の破片をどかし始めた。
「ナレーションも手伝おう」
「僕も」
"私"たちは希望を胸に抱き、彼女たちの姿を探した。




