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愛する君達へ  作者: ぶちハイエナ
3/7

3日目

 夢を見た。

 学生の頃の出来事の夢

 もう忘れていたはずの記憶を掘り出したせいかどこか曖昧で断片的な夢だった。

 学校からの帰り道、突然占い師を名乗る女性が話しかけてきた。

 大きな帽子を被っているせいかはっきりと顔が見えない。

「あなたは愛する人と一緒になると不幸になります」

 急にそんな事を言われた。

 忘れなさそうな出来事をどうして忘れていたのかは分からない。

 その人に何か言い返している自分の声が聞こえない。

 女性が、頬に手を当てた。

 かすかに見える瞳に光るものを見せて立ち去っていく姿が印象的だった。

 その姿に胸が苦しくなった事を思い出す。


 妙な寝苦しさで目を覚ました。この苦しさは夢のせいだろうか。

 激しい雨の音が聞こえる、そういえば週間天気予報で日曜は雨だった事を思い出す。

 消えぬ寝苦しさに違和感を覚えて布団をめくると水をかけられたかのように眠気が一気に覚めた。

 絆が俺の体にしがみ付いて寝ていた。

 寝ぼけてこちらの布団にやってきたのだろうか。

「おとう……さん」

 引き剥がそうとすると絆が目尻に涙を浮かべてそう呟いた。

 父親の夢でも見ているのだろうか、引き剥がそうとした手が止まってしまう。

 その手を絆の頭に持っていくとぽんぽんと子供をあやすように優しくたたく。

 視線を感じて横を見ると恵が体を起こしてこちらを見ていた。

 恵の瞳にも涙が浮かんでいる。

 状況が理解できないが、この状態を見られ続けるのはよくないと思い再び絆を引き剥がそうとするが、

「もう少しだけそのままで」

 恵の言葉でまたしても手が止まってしまった。

「朝食の用意しますね」

 目元を拭うと恵は立ち上がりキッチンへ歩いていった。

 どうしていいか分からなくなってしまい、そのままの状態で目を閉じた。


「朝食できたよ」

 体を揺すられて目を覚ます。

 絆が俺の体を揺らしながら顔を覗き込んでいる。

 いつの間にか二度寝してしまったようだ。

 もしかしたら先ほどの状況が夢だったのかと思ったが、鮮明に残る感触が夢ではない事を告げていた。

 起きて顔を洗いに行く。

 テーブルに戻ると布団は畳まれており2人共テーブルの前に座っていた。

 俺もテーブルに座ると、湯気を立てている味噌汁の香りが食欲を刺激する。

 卵焼きまで用意されており普段1人で作って食べる朝食より豪勢だ。

「「「いただきます」」」

 味噌汁をすする。

 おなじみ味噌のはずなのに出汁の取り方が違うのかさっぱりとして美味しい。

 俺が普段出汁を入れすぎなのだろうか。

 卵焼きも程よく甘くご飯によく合う。

 絆は相変わらず黙々と美味しそうに食べている。

 そんな姿を恵を嬉しそうに眺める。

 なんだかこういう食事風景っていいなと自分の今の状況を俯瞰しながら思う。


 食事の片づけをして外に出る。

 口にくわえたタバコに火を点け空を見上げる。

 空には厚い雲がかかり、昨日の天気が嘘のように雨が地上を濡らし続けている。

 水が大地を打ち付ける音を聞きながら肺に溜まった煙を吐き出す。

 庭に佇む木はこんな天気でもその存在感を失ってはおらず、雨にも負けずその枝葉を空へと伸ばしていた。


 部屋に戻ると2人が俺の借りていたビデオを物色していた。

 変なビデオを借りていなくて良かった。

 週末に見ようと思っていた物で、生憎の天気なので皆で見ることになった。

 アクション、ホラー、ドラマとジャンルは色々で話題になったが映画館で見れなかった物を借りていた。

 絆がホラーが見たいというのでまずはホラーを見ることにした。

 映画が始まってしばらくすると絆がくっ付いてくる。

 怖いなら見なければいいのにと思うのだが、これが怖いもの見たさというのだろうか。

 ジャパニーズホラーは見た目の怖さというより心を震え上がらせるような怖さがある。

 子供の頃は俺も苦手だったが、いつの間にか見れるようになっていた。

 怖くないわけではないが他の映画では感じられない面白さがあることに大人になって気付いた。

 いつの間にか恵も俺のくっ付いてきていた。

 絆にいたってはいつの間にか俺の後ろに隠れて背中にくっ付いている。

 怖いシーンや話があるたびに背中越しにびくっと震える感触が伝わってくるのが面白い。

 くっ付かれて別の意味で心臓がどきどきしていたが、怖くて何かにしがみついていたい気持ちは分かるので何も言わなかった。

「全然怖くなかった」

 映画が終わると余裕ぶった顔で絆が言っているが、あの状況を見せた相手によくそんな言葉を言えるなと逆に感心してしまった。


 アクション映画を見ているときは絆は俺の前に座り体を寄りかからせて楽しんでいた。

 恵も隣に座っていたが、距離が近い。

 先ほどのホラー映画の怖さが抜けていないのだろうか。

 すごい状況だと理解できてはいるがあまり考えると大変な事になりそうなので映画に集中した。

 人気の香港アクションスターの映画は俺的に外れはなかった。

 昼食を食べ終えて見たドラマは洋画で船が沈む物語だった。

 少し涙腺を刺激されてしまうが涙を見せるのが恥ずかしくて我慢する。

 恵からは鼻を頻繁にすすり目元にハンカチを持っていく仕草見えた。

 目の前の絆も鼻をすすっていたので泣いているのだろう。

 映画を見終わると絆が俺に熱い視線を送る。

 色っぽい雰囲気ではなく、何か訴えかけるような瞳。

 泣いていたせいか濡れた赤い瞳が言葉以上に心に響く。

 かける言葉を探している間に絆がトイレに行くといって立ち去った。

「面白かったですね」

 場の雰囲気を誤魔化すように隣の恵が俺にそう言って顔を向ける。

 泣いていたせいなのか儚さを感じさせる表情が胸を打つ。

 女っ気のなかった俺にはこの状況は心臓に悪い。

 強まる鼓動が耳に届きそうだ。

「タバコを吸ってくるよ」

 恵にもこの音が聞こえてしまいそうで逃げるように部屋を出る。

 手にしたタバコの箱は空だった。

 そういえば昼食後に吸ったのが最後だった。

 部屋に戻って財布を取るとポケットに突っ込む。

「タバコ買ってくるよ」

「いってらっしゃい」

 恵が先ほどとは違ういつもの見慣れた微笑を浮かべて送り出してくれる。

 絆はまだ戻ってきていないようだ。


 傘を差して酒屋の自動販売機へ向かう。

 朝よりも雨脚が弱まったおかげで歩くのは苦ではない。

 雨のせいか昨日と違って日中だというのに空気が冷たく重い。

 上にもう1枚着てくればよかった。

 今更部屋に戻るのも面倒だったので体を温めるためにも小走りになる。

 踏み出す足から水が跳ねズボンの裾を濡らす。

 アパートから坂を下ると大きな道に出るとそばには少し大きめの公園がある。

 道が曲がって視界が悪いため事故が多いと聞く。

 そのせいか雨のせいかは分からないがいつもは明るい雰囲気の公園が妙に不気味に見えた。

 もしかしたら朝に見たホラー映画のせいかもしれない。

 道路を渡ってしばらく進むと酒屋が在る。

 湿った衣服に若干の不快感を覚えながらも目的の自動販売機に到着するとタバコを購入した。

 ついでに横にあった飲み物の自動販売機でコーヒーも買った。

 その場で開封するとひさしの下にあるベンチに座って煙を吸う。

 一昨日から色々な事があり過ぎて久し振りの1人の時間だ。

 この状況は一体何なんだろう。

 あまりにも急な展開に流されるがままになっていた。

 突然隣の部屋にやってきた女の子、急激に仲良くなった大家さんの娘。

 長い物語を詰め込んだ映画のように急展開の連続だ。

 流されながらも受け入れていた自分もいることに今更ながら驚いている。

 2人の事を想うと悪い気はしない、むしろ安心する言っていいほどに心は凪いでいる。

 凪ぐといっても色々な表情や仕草を思い出すだけで荒れ狂った海のようになる。

 情緒不安定なんだろうか。

 まるで青春時代の恋心のようだと苦笑する。

 手にして熱いコーヒーを1口飲むと、ほろ苦い味が口に広がった。

「恋か……」

 口に出してしまったことで妙に納得してしまった。

 首を振ってその気持ちを否定する。

 未成年相手に何を考えているのだろう。

 大家さんも自分の娘を男の部屋に気軽に送り出さないで欲しいものだ。

 冷える体に温かいコーヒーを流すと、もう1本タバコを取り出して火を点ける。

 庇から垂れる雨粒をぼーっと見ているとタバコは徐々に短くなっていった。

 吸い終わったタバコを灰皿に入れると気分を変えるように勢いよく立ち上がる。

 明日からは仕事だ。仕事が始まればこんな事を考えてる暇もなくなるだろう。

 傘を差して来た道を今度はゆっくりと戻った。


「ただいま」

 ドアを開けて濡れた傘を外に立てかける。

「おかえりなさい」

 わざわざ恵が出迎えてくれた。

 その表情を見ると送り出してくれたときの微笑みは消えていた。

 絆と何かあったのだろうか。

 部屋に戻って絆を探すが姿が見えなかった。

 さすがにまだトイレという事はないだろう。

「絆は?」

 振り返って後ろにいた恵を見る。

 先ほどより表情が陰っている気がする。

 本当に絆と何かあったのだろうか。

「その……」

 必死に言葉を押し出そうとしているが続きは聞こえてこない。

「何かあったの?」

「それが……」

 恵の視線が隣の部屋へ向く。

 隣の部屋に帰ったのだろうか。

 絆の様子を見るために部屋を出ようとすると、俺を引き止めたかったのか恵が手を伸ばすが、俯き手を引っ込めた。

 そのまま時が止まったように何も言わない恵に「様子を見てくるよ」と一言告げて今度こそ部屋を出た。


 絆の部屋の呼び鈴を鳴らす。

 少し待っても部屋から出てくる気配がないのでドアをノックした。

「おーい絆、いないのか?」

 また待ってみるが反応がない。

 ドアノブに手をかけ軽くひねると簡単に開いた。

 どうやら鍵はかかっていないみたいだ。

 もしかしたら寝ているのかと思い「お邪魔します」と部屋の中にも聞こえるように声をかけて入る。

「えっ、なんだこれ」

 部屋の中には絆はいなかった。

 絆がいないどころか部屋には何もなかった。

 まるで誰も住んでいないかのように生活の気配を感じない。

 押入れを空けても何も入っていなかった。

 少しの間と言っても多少の荷物はあってもいいのではないだろうか。

 そういえばご飯も着替えもないと絆が言っていた。

 越してきたばかりで何も用意できていなだけと思っていたが本当に何もなかったのか。

 絆がいない部屋で絆の存在の痕跡を探すように部屋の隅々まで見渡した。

 すると入り口近くのキッチンの上に封筒があることに気付く。

 すぐにその封筒を手に取る。表にも裏にも何も書かれていない。

 封をされていない封筒の中には1枚の便箋が入っていた。

 それを開いて目を走らせる。

『啓へ


 短い間だったけど本当に楽しかった。

 もっと一緒にいたかった。

 でも、一緒にいればいるほどお別れが辛くなりそうなので少し早いですが私はいなくなるね。

 こんなお別れの仕方でごめんなさい。

 優しくしてくれてありがとう。

 すごく嬉しかった。

 大好きだよ。


 あの約束を忘れないで。


 絆 』


 大切な何かが欠ける音がした。

 便箋を持つ手が震える。

 いなくなるってなんだ?

 便箋を放り投げると部屋を出た。

「絆ー!」

 返事は返ってこない。

 傘を差すのも忘れて走り出す。

 あてなどない。

 ただ絆の名前を叫びながら走る。

 冷たい雨が体を濡らしていく。

 時折すれ違う人が奇異な目で俺を見る。

 そんな事気にしている場合じゃない。

 タバコなんて買いに行かなければよかった。

 すぐに帰ればよかった。

 濡れた服が体に張り付く。

 濡れた靴が走る足を重くする。

 それでもただひらすらに走った。


 どこをどう走ったかは覚えていない。

 辺りが暗くなり心臓が張り裂けそうなほどに鼓動する。

 いつの間にか雨は止んでいた。

 絆を見つけることは出来なかった。

 息を整えて少し冷静になった頭で大家さんに聞けばいいだけだと今更になって気付く。

 走る力が出ずにアパートへと歩く。

 まずは着替えないと風邪をひいてしまうな。

 濡れたせいでが走って温まった体の熱を容赦なく奪う。

 そんな俺に追い討ちをかけるように風まで吹く。

 体がぶるりと震えた。


 部屋に戻ると恵が出迎えてくれた。

「びしょ濡れじゃないですか」

 タオルを持ってきて体を拭いてくれる。

「絆は見つからなかったよ」

「絆ちゃんは帰ったんです」

 俺の体を拭きながらぽつりと零した。

「知ってるのか?」

「私も突然お別れを言われました。それをどう伝えたらいいか悩んでいたら、啓さんが走って行ってしまって。アパートの近くを探してもいなくて心配になってここで待ってました」

 そういえば恵が何か言おうとしてたのに聞かずに飛び出してしまった。

 恵にまで心配をかけて俺は何をやっているんだろう。

「脱いでください」

 気力なく俯いている俺に恵が言う。

「風邪ひいてしまいますよ」

 もう手遅れかもしれないと心の中で呟く。

 一向に動き出さない俺に痺れを切らしたのか強引に服を脱がそうとする。

「お風呂もいれてありますから、脱いだら入ってください」

 上半身を裸にされてしまった。

 さすがにまずいと思って脱衣所に向かう。

 濡れた服を洗濯機に入れると風呂に入った。

 冷えた体に温かいお湯が染みる。

 脱衣所に恵が入ってくる音が聞こえた。

「絆ちゃん、またきっと会えますよ」

 どこか自信のある声だ。

「家は知っているのか?」

「分かりませんが、絆ちゃんもまた会えるって言ってましたから」

 体が一気に脱力する。

 それならそうと手紙に書いてほしかった。

 あんな書き方をされたせいでもう二度と会えないのかと勘違いしてしまった。

 最悪のケースまで想像してしまった。

 今度会ったら文句の1つでも言ってやろう。

「啓さん、優しいんですね。こんなになるまで必死に探してるなんて」

「優しくなんてないよ。絆が変な手紙を残すから慌てただけだよ」

「一昨日会った絆ちゃんをこんなに心配するんだから、やっぱり優しいですよ」

 そんな事はないと思ったが、何を言っても言い返されそうなのでやめておいた。

 本当にまた会えるのだろうか。

 また会えればこの何か欠けてしまったような虚しさが癒えるのだろうか。

 お湯に体を深く沈ませながら答えの出ない想いにふける。


 風呂から上がる。

「食事の用意ができてますよ」

 体にだるさはあったが食べれなくはなさそうだ。

 せっかく恵が用意してくれたのだから粗末にしたくない。

 テーブルに着くと3人分の食事が用意されていた。

 風呂に入っている間に絆が帰ってきたのだろうか。

 部屋の中を見渡したが恵の姿しかない。

 肩が力なく落ちる。

 気力が抜けてその場に座り込んでしまう。

「私も念のため用意していたんです」

 力なく項垂れる俺の下に恵が近づいて来た。

「元気出してください」

 頭を引き寄せられ柔らかいものが当たる。

 恵の胸に抱かれているとすぐには気付けなかった。

 春のような暖かなぬくもりと花のような香りに包まれる。

 それに安心してしまったのか涙が込み上げてきて、抑える事も出来ずに恵の胸の中で泣いてしまった。

 何で涙が出るのか自分でも分からなかった。

 悲しみからくるものなのか、安心から来る物なのかさえ分からない。

 恵は何も言わずただ俺を抱きしめてくれた。

 情けないとは思ったが今はこのぬくもりに甘えていたかった。

 子供のように恵の腕の中で泣いた。


「ご飯冷めちゃいましたね」

 俺が落ち着いたの見計らったように恵が話しかけてきた。

「ごめん」

「いいんですよ。温め直してきますね」

 恵は俺から手を離すと料理を持って台所に歩いていった。

 途端に恥ずかしくなる。

 いい大人が二十歳にも届かない女の子の胸の中で泣いてしまった。

 なんで泣いてしまったのかなんて自分でも分からなかったが、たった3日で俺にとってこれほどまでに絆は大きな存在になっていたことだけは分かった。

 それでも恥ずかしいものは恥ずかしいので火照った顔を両手で冷やす。

 きっと顔が赤くなっているだろう。


「恥ずかしかったですか」

 いつの間にかそんな俺を恵が見下ろしていた。

頬に手を当てその顔にいつもの微笑を浮かべている。

 いや、いつもより少し意地悪そうな顔かもしれない。

「二十歳にもならない女の子の胸で泣く大人の男の気持ちを分かったほしい」

 恵の顔を見ていられなくて目を逸らす。

「私少し前に二十歳になりましたよ。それに高卒で社会に出てますので子供じゃないです」

 少しムッとしているのが声色から伝わる。

 怒らせてしまっただろうか。

 テーブルに料理のを置く音が聞こえる。

 恵が逸らした俺の顔の前に来て座ると目線を合わせてきた。

「だから、遠慮なく甘えてください。私も辛いときは甘えさせてもらうので、おあいこです」

 そう言ってにっこりと微笑んだ。

 その笑顔が先ほど体を包んでくれたぬくもりとは違い、心を優しく温めてくれた。

 言葉の意味を考えようとすると、

「さあ、食事にしましょう」

 恵が場の雰囲気を変えるように手を一度叩く。

 半ば強引にテーブルの前に移動させられると恵と一緒に夕食を食べた。

 その後は洗い物も恵がやってくれて、食後のコーヒーを飲みながらテレビを見ながら他愛のない話をした。

「そろそろ戻りますね」

 20時くらいになった時恵がそう言って腰をあげた。

 同じアパートに住んでいるので帰るのではなく戻ると言ったのだろう。

「今日は色々ありがとう。本当に色々と……」

 玄関まで恵と一緒に行くと今日のお礼を伝える。

 思い出してしまってまた恥ずかしくなる。

「いいんですよ。せっかく仲良くなれたので、たまには今みたいに一緒に食事したりしましょう」

「ああ、そうだね」

「約束ですよ。それではおやすみなさい」

「おやすみ」

 玄関から出て行く恵を見送った。

 振り返った時に自分の瞳に部屋が映る。

 この部屋はこんなにも広かっただろうか。

 2人がいなくなった部屋が異様なほどに広く感じてしまった。

 何もする気も起きず、寝る準備をして横になった。

 布団に入って落ち着いたせいか体が少しだるいことに気付く。

 やはり雨で体を冷やしたのがいけなかったのだろう。

 明日ひどくなっていない事を祈りながら目を閉じた。    

 次の日やっぱり風邪ひいてしばらく寝込んだのは忘れられない思い出になった。

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