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真実  作者: 南波航助
2/7

2:疑惑

「おい、寝るなよ!」

「あ、すいません」

俺は助手席にいた浅野の頭を叩いた。

「次、当時の学級長だった川野浩助の所行くぞ」

「はぃ」

赤いワゴン車のエンジンをかけた。俺らは十年前の教師変死事件の真相を探るため、調査を続けているところだった。

「すいませ〜ん」

浅野がインターホンを鳴らした。ドアが開き、一人の女性が現れた。

「何ですの?」

「ちょっとお話がしたくて、あの〜浩助さんはどちらに?」

「浩助?浩助なら隣町にいますけど・・・・・・どちらさん?」

「申し遅れました。警察の物です」

浅野はサッと警察手帳を見せた。女性の目が変わった。この事件がよほど衝撃的だったものなのかもしれない。

「何か、やったんですかあの子」

「いえ、そう言うわけでは〜」

俺は汗をかきながら手を振った。女性から詳しい居場所を教えて貰い、俺らはその場を後にした。再びエンジンの寂れた音を鳴らしながら車を走らせた。

「おいおい、もしかしてここかよ」

俺は大層立派なお屋敷を指さした。

「そうですね」

浅野は冷静に言った。インターホンは無くライオンの顔をしたノックを二回ほど鳴らした。

「どちらさん?」

さっきの女性にそっくりな二十代前半の男が現れた。

「浩助さんですか?」

「そうだけど」

「お話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「え、セールス?」

「違います!」

浅野は警察手帳を見せた。

「何の用ですか、刑事さん」

「お邪魔させて頂いても良いですか?」

「あ・・・・・・はい」

俺らはずうずうしくも中へと足を踏み入れた。

「ハーブティーです」

それはそれは美しい女性が紅茶を入れてくれた。

「家内です」

「そうなんですかぁ〜お美しい」

「いえそんなぁ」

女性は顔を赤らめ、キッチンへと戻った。

「寝るな、浅野」

ソファーにもたれかかりまぶたを閉じている浅野を小声でしかった。川野は苦笑いをしていた。

「す・・・・・・すいません!」

いきなり大声で浅野は叫んだ。

「馬鹿!」

俺は頭を叩いた。

「大丈夫ですよ」

川野は紅茶を飲みながら言った。

「ところで川野さん、お仕事は何を?」

「私ですか?いやぁ〜ちょっとIT関連の仕事を」

「なるほどねぇ〜」

やっぱり世の中は足より頭なのか、と俺は感じた。

「あの〜、刑事さん。話って何ですかねぇ?」

「あ、すいません。お話というのは・・・・・・十年前の教師変死事件のことについて何ですが。当時あなたはクラスの学級長でしたよね。それでお話をと思いまして。ちょっと気になってしまたものでぇ〜」

川野の顔色が変わった。異常なほどにだ。紅茶を降ろし、口を開いた。

「あぁ、あの事件は幼い私にとって衝撃的なものでしたよ」

「そうだと思います。あのぉ〜もうしつこく聞かれたと思うのですがぁ、何かお心当たりはありますかねぇ」

「いえ、特には無いですよ」

「そう何ですかぁ。では、多田先生を恨んでいた生徒などはどうでしたか?」

「はぁ・・・・・・・まぁ生徒を平気で殴る先生でしたから、嫌われてはいましたよ」

「ほほう、どんなことで?」

「忘れ物だとか、授業態度とかで」

「中でもどんな人が恨みをもっていましたかねぇ」

「いやぁ〜十年前のことですからぁ。ちょっと覚えてないです。すいません」

川野は少し笑いながら言った。

「ありがとうございました。失礼します」

「え、もうですかぁ?」

「はい。またお伺いするかもしれません」

「また?・・・・・・いいですよ。ではお気を付けて」

「ありがとうございました」

俺らは家を後にした。最後まで川野の奥さんはお辞儀をしていた。良くできた人間だと俺は感心していた。となりのこいつに比べると正反対のようだ。

「三田さん、何か今思いましたぁ?」

「いや、何も」

こいつ勘が鋭いな、そこだけは感心できる。

「ところで、何でまた来る何て言ったんですか?」

「いやぁ〜ちょっとね。川野、何か知ってるぞあいつ」

「何でです?」

「あいつ、俺らが刑事だと言って十年前のことをはなしたら途端に顔色を変えた。異常なぐらいだっただろ」

「そうなんですかぁ?私寝てたから全然覚えてないです。ははは」

浅野は何故か笑っている。こいつ、馬鹿か?と俺は思った。

「あいつの話じゃぁ恨んでいる奴は大勢いるって言ってたな。生徒全員回るぞ」

「えぇ〜、本当ですか。嫌だなぁ」

「黙れぇい」

俺は一気に車のアクセルを踏んだ。

「あ、あそこにいるのって如月真之介じゃないですかぁ?」

浅野は窓の外を指さした。

「総理大臣の如月かぁ?」

「はい」

「ホントだ。演説か何かかなぁ」

俺はどうでも良い思いで総理大臣を横切った。

「そういえばぁ〜如月真之介の息子も優秀なんだってなぁ〜」

「そうなんですか」

「何か、科学者らしいよ」

「すごいですね」

どうでもいいような感じに浅野は言った。

「確かぁ〜、名前は如月裕也だったけなぁ〜」

俺は自分で言った言葉に衝撃を受けた。

「あれ、如月裕也って・・・・・・おい浅野、ファイルにその名前無かったか?」

「えっとですね」

浅野はのろのろとページをめくっていく。

「あ、ありますよ。如月裕也って」

「総理大臣の息子、天才科学者・・・・・・なんかありそうだな。・・・・・・おい浅野、聞いてんのか?」

浅野は寝ていた。いびきをかきながらだった。

「怪しいなぁ・・・・・・まだまだ調べる価値はありそうだ!」

俺はアクセルを強く踏んだ。

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