ギルド報酬と世界の酷似点
呼び出しが掛かっていたので言われるままにギルドに向かっていた。
「なあクロア、ステータスプレートってどんな風に作るんだ?」
「遺跡から出土した良くわからない不思議な金属に血を垂らしたらステータスが出てくるわ」
「良くわからない金属なのに何でそれに血を垂らしたらステータスが出てくるってわかってるんだ?」
「そんな事を私に訊かれてもわからないわよ」
「よくそんな物を使おうと思ったな」
「遺跡から出てきたって事は昔の人も使ってたってことでしょ?だからよ」
「普通そうは思わんだろ」
「もう多くの冒険者の手にに渡ってるからどのみち回収は不可能でしょ。だからもう考えるのを止めたのよ」
「まあ、体に影響が無いなら問題無いけどな」
「あんたも大概よね」
「んじゃステータスプレートには何が書かれるんだ?」
「馬車で見た紙と大体同じよ」
「え?作れるんならプレート要らなくね?」
「プレートなら紙と違って頑丈でしょ?」
「まあ、確かにそうだな」
「だから最初に多少の手間が懸かっても長い目で見れば特になるでしょう?」
「そうかぁ?」
「細かい事を気にしてると禿げるわよ」
「そう細かい事でもないと思うけどな」
「そう言えばあんた、魔法の練習をするって言ってたけど使える様になったの?」
「ああ、その事か。それならーー『ストップ、すぐに使いこなせる様になったと言うと可笑しいので誤魔化して下さい』ーー心配すんなさっぱりだ!」
「どこにも安心感を、与える要素が無かったと思うわよ」
「誰も安心しろとは言ってない」
「心配すんなって言ったじゃない」
「心配するなイコール安心しろって訳じゃないからな?」
「何よそれ」
「そういや姫さんどうした?」
「先にギルドに行って待ってるわよ」
「待たせると怒る感じ?」
「さあ?」
「それにしてもステータスプレートかどんな感じなんだろうな」
「さっき説明したわよね?」
「実物見ないと何とも言えんだろ」
「それもそうね」
そんな事を話してるうちにギルドに着いた。
「流石にまた何か飛んでくるって事は無いよな」
俺は恐る恐るギルドの戸を押す。念のため身体強化を発動しておいたが杞憂に終わった。
「流石にないか」
「あ、バイレンさん!やっと来てくれました。ええとこちらがステータスプレートです。それとこちらががギルド章になります」
「ギルド章?」
「ええ、何処のギルド出身なのかを証明するために必要ですから」
「何処のギルド出身かを証明する必要があるのか?」
「実はギルド間の競争が激しいので優秀な人材を保有している事をアピールしてより多くの依頼を集めたいのでこのような事をしているんです」
「それだと問題が起こったら責任元がバレるんじゃないか?」
「それが唯一の問題です」
「大変なんだな」
「ええ、毎日の様に始末書の山が・・・・」
「問題児しか居ないのか?」
「優秀な人も居るには居るんですが・・・・・」
「それ以上に問題児が多い、と?」
「そうなんですよ。でも給料が良いのでこの仕事をやっているんですけどね」
「背に腹は代えられないって事か」
「そうです。それとお願いですからあまり問題を起こさないでくださいね」
「・・・・・善処する」
「その間が心配ですね」
「カッとならない限りは大丈夫だと思う」
「本当にお願いしますよ?上が仕事をしないので私に全部廻ってくるんですから」
「そうとう苦労してるな」
「ええ、だからこれ以上私の仕事を増やさないで下さい」
「んじゃ、何か俺に出来そうな依頼はあるか?」
「あ、その前にこれを」
そう言って彼女が渡してきたのは巾着袋だった。試しに振ってみるとチャリチャリと金属の擦れる様な音がした。
「何だこれ?」
「それは先日の殲滅戦の報酬です」
「貰っていいのか?」
「殲滅戦の最前線にいたんですよね?」
「何でそれを?」
「黒髪の冒険者って聞いてパッと思い付いたのが貴方だっただけです」
「・・・・・どういう風に言われてたのか訊いても?」
「黒髪のバーサーカーって言われてましたよ。なんでも狂笑を浮かべながら魔物を撲殺していたとか」
「・・・・・・・・」
「あれ、もしかして違ってました?」
「いや、合ってるよ、合ってるけどもそよ呼び名はあんまりじゃねーの?」
「一体何をやったんですか?」
「何ってゴブリンの持ってた棍棒を振り回してただけだぞ」
「だけって結構な事やってますよ」
「いや、それより何か依頼はないか?」
「話を聞く限りですとゴブリンの群れ位なら問題無さそうですね」
「あるのか?」
「いえ、今は特に依頼はありませんね」
「無いんかい」
「暫くすれば新しく入ると思うので勇者召喚が終わった位にまた来てみて下さい」
「わかった」
特に仕事も無い様なのでギルドを後にして司書館に向かう事にした。
「クロア司書館みたいな建物ってどこにある?」
「司書室なら城の中にあったはずよ」
「城って誰でも入れるのか?」
「日が昇っている間は自由に出入りできるわよ」
「んじゃまだ日が高いから大丈夫だな」
「入っている内に日が落ちたら出られなくなるわよ」
「司書室でずっと書物を読んでるつもりだが?」
「そ、それならいいんじゃない」
「お二人共、誰か忘れてませんこと?」
「あら、スフィナ様何処に行ってたんですか?」
「何処に行ってたも何もお二人がわたくしを無視して出ていったんじゃありませんの!」
「悪い、完全に忘れてた」
「わたくし、人に存在を忘れられたのは初めてですの」
「んで、城に向かってる訳だがほんとに入って大丈夫なのか?」
「ええ、今は勇者召喚の、真っ最中だから王族は皆教会に居るから城の警備は適当になってるわ」
「荒らしに行くみたいに聞こえるな」
「お二人が仰ると冗談に聞こえませんので止めていただけません?」
「そんな事をするわけないだろ」
「いえ、お二人ってだけで心配なんですの」
「そんなに信用ない!?」
「心外ね。城にある資料に興味は無いわ」
「興味があったらどうする気だ?」
「無論侵入するわ」
「ほらやっぱりそういうことをやるつもりじゃないですの」
「いいから行くぞ時間が勿体無い」
「うう、わたくしは悪くありませんわ」
「私だって悪くないわ」
「煩い二人とも同罪だ」
「そう言うあんたもよ」
「はいはい」
「言わなくてもわかると思うけどあれがこの国の城よ」
前方に視線を戻し見てみるとそこにあったのは西洋風の城だった。
「普通の城だな」
「普通じゃない城ってどんなのよ」
「しっかし本当に何の検査も無いんだな」
「するだけ無駄だもの」
「そういやクロアお前司書室の場所ってわかんのか?」
「スフィナ様の方が詳しいんじゃない?」
「どうして何も調べて来ないんですの?」
「必要ないと思ったから」
「はあ、着いてきて下さいな」
「おお、姫様が役に立ってる」
「そのわたくしが役立たずみたいなレッテルを貼るのは止めていただけません?」
「じゃあ、逆に訊くけど何か出来るのか?」
「そ、それは、きっと何かあるはずですわ!」
「クロア、どう思う?」
「何も無いんじゃない?」
「だよな」
「・・・・・・着きましたわ」
「お、ありがとさん」
「わたくしの待遇の向上を要求しますわ」
「具体的にはどうしろと?」
「そこは自分で考えて下さいまし」
「さーて読むか」
「スルーは酷いですわ!」
「お前の待遇についてはこの世界の文化を調べてから、かんがえるわ」
「明日までは、期待出来そうにありませんわね」
手近にあった、本を取り席につく。
(今なら念話しても大丈夫かな)
『呼ばれた気がした!』
(喧しい!呼ぼうとしたが叫んでくんな)
『で?で?何の話をするんですか?』
(ガンガン叫んでるがジャックは大丈夫なのか?)
『問題無いです。辺りに黒魔術使える人は居ませんでした)
(ならいい、この国の、情勢について少し調べてくれるか?)
『良いですけど、どうしてそんな事を?』
(知っといて損はないだろ)
『わかりました。ちょっと行ってきます』
(ちょっと待て、どうやって合流するか決めておこう)
『あ、転移するんでそこは大丈夫です』
(まじ?)
『まじです。じゃ、行ってきます』
(なるべく見付かるなよ)
『楽勝ですね』
その言葉と共に広辞苑が霞む様に消えた。
「・・・・・・消えた」
俺は読んでいた本を戻すと生物について書かれている本を探した。
「結構多いな」
「王国の城の司書室よ少なかったら話にならないじゃない」
「あー、クロア、生物について書かれている本を探してくれ」
「それならこれね」
「え、早っ」
「さっきまで読んでたから」
「なるほど」
「でもどうして生物の本を?」
「元の世界とどの程度違うのか把握しておきたいからな」
「あー、確かに把握してないと思わぬ事故に繋がり兼ねないわね」
「そう言うこった」
それから朝まで本を読んでいてわかった事は、この世界で食糧になっている生物は元の世界の生物とあまり変わらない。
また、この世界で神聖視されているのは元の世界宜しく蛇だった。やはり脱皮をすることから不死の象徴として崇められているらしい。よってあいつの姿は蛇になるだろう。
そこまで調べ終わり一息ついた所で目を覚ましたスフィナが駆け込んで来た。
何事かと思い訊くと
「お二人共!今日は勇者召喚の儀式完了の日ですわよ!」
との事。正直何故駆け込んで来たのかわからない。
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