やはり補正は掛ける方を間違っていた
冬休みの課題(結局終わらなかった)やら実力テストやらで遅くなってしまいました!申し訳ありません!
遅くなった代わりに長くしたんで、許して下さい!
これからの更新は週末になると思います。
毎日更新するなんて言ってたのは一体何処の誰なんですかねぇ。
俺は町に向かう人の流れに逆らって先程まで防衛戦の最前線に向かっていた。すれ違う人の話を聞くに報酬はきっちりと出るらしい。しかし、多くは望めないとの事。まあ、あれだけ人がいれば全員が満足するだけの報酬を払えないのは仕方の無い事だろう。
そんな事より、俺には広辞苑が手元に無い事の方が問題なのだ。
そのため先程から前線だった方に歩いているのだが、人が多い、多すぎるのだ。人混みの隙間を縫う様に動いているが全く前に進んでいるきがしない、むしろ後ろに下がっている様な気がする。しばらく人混みに逆らって歩いていてふと思った。これ、横に抜けたら問題無いんじゃないかと、なので斜めに人混みを突っ切っている。そのまま少し歩いているとようやく人混みを抜けた。
「や、やっと抜け出せた。人多すぎるだろ・・・・正月の大宰府かよ・・・・・」
人混みを抜けたは良いものの、斜めに歩いていたためおおよその見当を付けていた場所がわからなくなっていた。
「くそ、結局しらみ潰しに探すはめになるのかよ」
前線になっていたのは結構な範囲だ、加えて投擲したため落ちている場所がはっきりしていない。森の中まで飛んでいったかもしれないし、魔物の体内に留まっている可能性もあるのだ。
「考えてもしょうがないな、可能性があるもの全部に当たってみるか」
身体強化を発動し、魔物の死体をひっくり返しながら町の側に進んでいく。しかし、広辞苑どころか、穴の空いた死体すら見つからない。
「もっと向こうか?棍棒持って走り回ってたからよく覚えてないな・・・・」
せめて何か目印になるような物があれば良かったのにな。・・・・・ん?そういや、ここまであの狼みたいな魔物の死体を見てないな、あれを見つける事ができれば見つけられるかもしれないな。
「よし!そうと決まれば行動だ!」
狼の死体を探しながら走る。するとすぐに見つけることができた。
「あったあった。となると、この辺を探せばあるだろ」
狼に空いていた穴の向きからして森の方にあるのはまず、間違いないだろう。しかし、問題はそこからだった。
広辞苑は最後に当たった魔物の体内に入っているようで、とても素手では取り出せそうもなかった。
「どっかにナイフかなんか落ちてないかな」
辺りを探してみるがナイフどころか剣の一本すら落ちていなかった。あるのは狼の爪と牙くらいだった。
「もう、この狼の牙使おうかな・・・・」
辺りに刃物がなかったので狼の牙を折ろうとして牙を握った瞬間手が切れた。
「なっ、はぁ!?ちょ、触っただけで切れるとか切れ味おかしいだろ!」
傷口を押さえて止血をする。
「さて、牙を触れないとなると、直接頭を使うしかないな」
狼を引きずっていき、狼の顎を使い、肉を引き裂き、ゴブリンの中から広辞苑を引っ張り出す。広辞苑は何故か血に濡れてはいなかった。
「何で濡れてないのかは、後で考えるとして、取り敢えず町に戻るか」
『町に戻るのはちょっと待って下さい~』
突然声が響いた。慌てて辺りを見回すが当然人はいない。気のせいかと思い再び歩き出そうとすると、また声がした。
『待てって言ってるじゃないですか、人の話を聞かない人は嫌われますよ~』
「だったらそっちも姿を見せたらどうなんだ」
『ヒントあげるから見つけてみて~』
「何でそんな事をしなきゃならないんだよ。普通に姿を見せろ」
『いやいや、普通に登場してもつまんないじゃん?と言う訳でヒントその一~』
「おい!お前の方が人の話を聞いてねえじゃねえか!」
『ターラン♪私は今貴方のすぐ側にいます。さて、私は今何処にいるでしょ~か?』
「魔法で姿隠したりされてたら俺は見つけきらんぞ」
『姿は隠してないよ~。ヒントその二~、私は貴方のよく知るものです』
よく知るものと言われたが、辺りに人はいないし、魔法を使う親しい人も特にいない。当然何かに化けているとしてもこの世界の植物や動物など全く知らない。
「悪いが全く心当たりが無い」
『ん~、よく知るって言っても会話をするのは初めてだもんねぇ~』
「それをよく知るとは言わないだろ」
『会話はしたこと無いって言うよりは、出来なかったって言うべきかな~』
「出来なかった?」
言葉の意味がわからず眉を寄せる。
『そんな顔しな~い。じゃ、ヒント追加ね~、これ言っちゃうと答えを言ってるようなものだけどね~』
「ここまでのヒントを欠片も理解出来ていないんだが?」
『まあまあ、これ聞けばわかるから。その三~、今貴方の手元にある物~。これだけ言えばわかるよね?』
「手元にあるもの?手元にあるものって言えば広辞苑くらいなんだが・・・・まさか広辞苑なのか?」
『ピンポーン、正解正解、私が広辞苑ですよ~』
「俺の知ってる広辞苑は喋ったりしないぞ」
『それは、まあ、ここ異世界ですし?』
「お前が喋れるのは別にいいんだ」
『あ、いいんだ』
「ただ、このままだと俺は本と話す痛い人になるんだが」
『ああ、その事ね』
「俺の今後の世間体に関わる重要な事なんだから軽く考えないでくれ」
『心配無用!私が人化出来ないなんて一言も言ってないじゃないですか!』
「出来るのか?」
『さあ?やってみなけりゃなんとも言えません』
「期待したじゃねーか、死ね」
『ドストレートッッッ!流石にそれは酷すぎません!?』
「取り敢えず出来るのか出来ないのかはっきりさせろ」
『全くせっかちですねぇ』
「社会的に死にたくないからな」
『んじゃ、いきますよぉ~。『人化』!』
その言葉と共に広辞苑が輝きだした。思わず手を離してしまった。
『痛っ!ちょ、落とさないでくれません?』
「悪い手が滑った」
次第に光は大きくなり、光が収まると、そこには一人の少女が立っていた。満面の笑顔+目元に横ピースで。
「うざっ」
「酷い!」
「いや、初対面で笑顔+横ピースとかイラッとするだろ」
「なるほど、勉強になります」
「でだ、聞きたいことが山ほどあるんだが」
「どんときやがれってんですよ!」
「よし、じゃあ聞こう」
「はいはい」
「お前本当に広辞苑なのか?」
「ええ、それは間違いないと思いますよ。ただ、この世界での私は魔導書みたいな立ち位置っぽいですけどね」
「なら、お前を読めば魔法の知識が得られるのか?」
「得られるはずですよ。脳が無事で済むかは知りませんけど」
「賭けをする気にはならんからパス」
「まあ、そうなりますよね」
「で、何でこのタイミングで出てきた?」
「何となくですね」
「そんな気はしてた。お前魔導書なんだろ?」
「さっきも言ったじゃないですか」
「こうやって会話出来る位の知能があるなら魔法使えんの?」
「いや、さっき目の前で人化の魔法使ったじゃないですか」
「・・・・・となると俺はお前以下って事になるのか」
「ああ、貴方のステータスの事ですが、あれ細工したんで本来の数値の表記じゃないですよ」
「どういうことだ?」
「貴方の本来の数値はあれに表記された数値の倍位です」
「それでも倍止まりなのかよ・・・・」
「あ、後適正魔法に雷と闇が追加されます。後、黒魔術も使えますよ」
「魔術?それって魔法とは違うのか?」
「てんで違いますよ。魔術は直接肉体と精神に作用するんです」
「それは幻覚とかそんな感じか?」
「メジャーなのはその辺りですね」
「まあ、その辺は後で考えるとして。それより数値って成長すんの?」
「異世界人なので上限は取っ払ってあるみたいですよ」
「それは使えば成長する類いなのか?」
「ええ、使えば使うほど成長しますよ。因みにこの世界の人間の限界値は各数値千位になってます」
「各数値千ってこっちの人間に例えるとどんな感じだ?」
「陸上世界記録保持者とボディビルダーとの者を足して倍にした感じですね」
「普通に人外じゃねーか」
「この世界の人間の基準値が高いんじゃないですかね~」
「勇者はどうなるんだ?」
「そのさらに三倍以上が最低値になります」
「うっわぁ、勝てる気しねぇ」
「まあまあ、別に戦う訳でもないでしょう?」
「向こうからちょっかい掛けて来ないとも限らんだろ」
「そうなったら私がぶっ飛ばしますけど?」
「具体的にどうする気だ?」
「魔力弾ぶちこんでな内臓破裂させます」
「世界中を敵に回しかねんから止めてくれ」
「え~」
「世界戦争とかマジ洒落にならんから止めろ」
「そこまで言うならわかりましたよ」
「何かの弾みで人を殺しそうだなお前」
「そんな事ないです!それより、町に戻らないんですか?」
「お前は本以外に変化できんの?」
「フッ、楽勝ですよ。何に化ければいいんですか?」
「服の中に隠せて、言葉を話しても怪しまれない生物」
「リクエストのレベルが高いですね。私はそんな生物知りませんよ」
「わかった。なら今は一先ず本に戻っといてくれ、明日調べる」
「恐ろしい探求心で」
「よく言われる」
「じゃあ、明日頼みますよ?この本の姿だと自由に動けないので」
「任せとけ」
俺は本を抱え町に戻ろうとして気づいた。
「あ、俺金持ってねぇ」
「ちょ、それじゃ町に行っても宿取れないじゃないですか!」
「しゃーない、魔法の練習でもするか」
そう思い直し森に入った。
「先ずは火魔法からだな。火がないと何も始まらん」
そして身体強化の魔力の流れを外に向かわせる様なイメージで魔力を流したら一瞬火が灯ったが、すぐに霧散した。
「魔力の扱い難し過ぎんだろ」
それから三十分ほど火を出し続けてようやくまともに火を扱える様になった。
「あー、腹減った。何か食える物無いかな」
「ゴブリンでも食べたら良いんじゃないですか?」
「いや、人形の魔物を食う気にはならんだろ」
「まあ、そうですよね」
「茸とか生えてないのか?」
「探せばあるんじゃないですか?」
「何が食える物か判らないけどな」
「何の為の鑑定だと思ってるんですか?」
「ああ、そんなのあったな」
「完全記憶とは何だったんですか」
「魔物食糧化があるって事は魔物を食えるのか?」
「ええ、本来なら食べたら死にますがその技能があれば食べても大丈夫ですよ」
「なら、狼でも焼いて食うか」
「え、あ、本当に食べるんですか?」
「ん?食えるんだろ?あ、薪集めるから手伝ってくれ」
「食べれると言ってもどうなるかは未知数なんですよ」
「後悔先に立たずって言うだろ?」
「そういうもんですかねぇ」
「そういうもんだよ」
引っ張って来た狼を調理しようとして捌く為の刃物が無いことに気づいた。
「包丁がねえな」
「土魔法で作れば良いじゃないですか」
「土魔法ってそんな事できんの?」
「ええ、土魔法は万物の形状等を司っているので」
「でも、土の包丁なんかで切れるのか?」
「えっと、この世界で土魔法は元の世界で言う原子の陽子、電子、中性子の配列から弄れるみたいですよ」
「え、じゃあ、錬金術みたいな感じ?」
「ええ、この世界の人達は土の形状変化させるだけの魔法だと思ってるみたいですけどね」
「んじゃ、土魔法で鉄の包丁でも作りますかね」
「先に土の形状変化を練習した方が良いんじゃないですか?」
「そうか?」
「原子の配列を弄る魔法はまだ存在しないので基礎をしっかりしないと魔法開発なんて出来ませんよ」
「まあ、気長にやるさ」
「あ、物切るだけなら風魔法で出来ますよ」
「え?なら首切り離しといて」
「何で私が」
「俺土魔法の練習してるから」
「はあ、わかりましたよ」
土魔法の練習をしていたがこれまた形状を維持させれる様になるまで一時間近く掛かった。
「うぉぉぉお!切れ味がねぇぇぇぇえ!」
土魔法で試しに包丁を作ってみたが木葉すら切れなかった。
「・・・・・もう、刃の部分はこいつの牙で代用したらどうですか?」
そう言ってきちんと切り離した狼の頭を持ち上げて見せた。
「あ、それいいかも」
あの狼の牙はゴブリンを豆腐の様に切る事が出来たので包丁の刃の素材としては申し分無いだろう。そうと決まれば顎を砕いて牙を取り外そう。身体強化に加えて靴に物質強化を使い、下顎目掛け踵落としを打ち込む。
「オラァ!」
無事に下顎を粉砕し、顎から外れた牙に土魔法で柄を付ける。物質強化を掛けているので物を捌く分には問題無いと思いたい。
「うーん、なんかイメージと形が違うんだよなぁ」
「慣れないうちはそういう事もありますよ」
「すげぇ、肉が豆腐みたいに切れるぞこれ」
作った包丁を使い狼を調理する。
「狼だけで済ませる気ですか?」
「ここには狼しか無いからね、仕方ないね」
「しかし、ナイフを無駄に沢山作ってどうするつもりですか?」
「え?投げるに決まってるじゃん」
「魔法のある世界で投擲武器ですか・・・・」
「仕方ないだろ、こっちの方が確実なんだから」
「うーん、否定は出来ませんが」
「取り敢えず食事を取っていいか?」
「私は別に食べなくても平気なので全部食べていいですよ」
「あーい」
狼を噛み切ろうとしたが、全く噛み切れなかった。
「何だこれ、むっちゃ硬ぇ」
「いや、魔物ですよ?普通に食べれる訳無いじゃないですか」
ならばと、身体強化を発動し、強引に噛み切る。
「しかも、不味い」
「どんな味ですか?」
「何とも言えん。塩が有れば美味くなるかもしれん」
「この世界で塩等の調味料は高級品ですよ」
「やっぱりか~」
「しっかし、不味い不味いと言いながら良く食べますね~」
「朝も昼も食って無かったからな」
「知ってますよ。ずっと持たれてましたし」
「食い終わったら魔法や魔術について聞きたいんだが、いいか?」
「それ聞かれなかったら私の存在意義が無くなるじゃないですか」
「盾」
「なっ!」
「冗談だよ」
「いや、目が本気でした」
「なんの事やら」
「それで、何の魔法について聞きたいんですか?」
「主に黒魔術についてだな」
「何故それを?」
「黒魔術って精神に作用するんだろ?」
「ええ、そうですよ」
「お前みたいに知能埋め込んでゴーレムでも製作したいなと」
「言っておきますけど、私はイレギュラー中のイレギュラーですからね」
「だろうな、でなきゃ勇者組の性能がエグい事になる」
「エグいなんて次元じゃないですよ。そんな事になったら魔王側なんて十秒持ちませんよ」
「勇者が反乱起こしたら教会はどうするつもりなんだろうな」
「さあ?強制送還でもするんじゃないですか?」
「そんなった場合俺達はどうなるんだ?」
「教会側に認識されてなければ残りそうですね」
「なら教会に目を付けられない様にしないとな」
「そうですねぇ目立たない事が得策だと思いますよ」
「うっし、じゃあ、色々と解説してもらいますかね」
「まっかせーなさーい」
「なーんか不安感を煽るな」
「フッ、その代わり私からも条件が有ります」
「このばで払える物で命以外なら」
「私を盾に使わないで下さい!」
「・・・・・・善処する」
「その間は何ですか!その間は!」
「まあ、そうならない為にも魔法と魔術について教えて下さいな」
「ええ、一晩で一流とまでは言いませんがその手前位までは鍛え上げてやりますよ」
そう言って始まった解説兼修行は恐ろしくスパルタだった。それはもう魔力枯渇で倒れる度に魔力を注入され、強制的に意識を覚醒させられ、再び魔力が枯渇するまで魔法を撃たされ、魔力が尽きれば再び魔力を注入されるという行為が一晩中続いた。
「も、もう勘弁して下さい」
「まだまだぁ!まだ飛距離も威力も甘っちょろい!」
「ね、眠い」
「『アンイプナス』!私が良いと言うまで寝かせんぞぉ!」
「こいつに主導権持たせたのは失敗だった」
眠りそうになれば魔法で眠気をとばされるとか鬼の所行だ。お陰様で適正属性の魔法はある程度使える様になったけどな!
「空が明るくなってきましたね」
「こんなキツイ完徹は初めてだ」
「二時間睡眠を取ったら町へ出発しましょう」
「お前の魔法のせいで全く眠くないんだが」
「仕方ないですねぇ『イプナス』」
その言葉を最後に俺の意識は闇に閉ざされた。
どうしてこうなった!
何もかもストーリー考えて無かった私のせいだよこんちくしょう!
本当計画性の無い自分が嫌になるなぁ。
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