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殲滅戦と持ち物の紛失

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年も私坂咲悠人を宜しくお願いいたします。

俺とクロアは人の流れに沿って町の端まで来た。しかし、魔物など何処にも居なかった。


「どういう事だ?」


「まだ着いてないんじゃない?」


近くにいた騎士に話を聞いてみると。魔物が町の方向へ移動しているのが観測されただけでまだ町に来るかは判らないとの事。


「なんだよまだ来てねえのかよ」


「来る前に戦力を揃えるのも大切な事よ」


「あーあ、走って損したぜ」


「そんな事言わないの、そんな事よりもあんたほんとに身体強化だけで戦う気なの?」


「んな訳ねえだろ。さっきので俺の中の魔力の流れは把握出来たからそれを応用すれば魔法位撃てる様になるだろ」


「魔法はそんなに簡単じゃないわよ」


「心配すんな、何の為の完全記憶だと思ってんだ?」


「そんなんで安心できる方がおかしいわ」


「自分を信じないで何を信じるんだ?」


「あんたのそういうとこが羨ましいわ」


「お、お二人共走るの速すぎますわ」


「おいおい、待ってろって言っただろ?」


「やっぱり自分だけ安全地帯で待ってるなんてできませんわ!」


「死んでも知らんぞ」


「全力で護ってくださいな」


「クロア任せた」


「ちょ、何で私になるのよ!」


「え?だって俺まだ何も出来ませんしおすし」


「一人で魔物から護りきるなんて無理に決まってるじゃない!」


「魔術師だろ?どうにかしろよ」


「魔術師は基本後方支援なのよ」


「それは俺に前衛をやれと?」


「勿論よ」


「身体強化しかねえんだぞ?」


「なんとかするんでしょ?なら問題無いわ」


「その前に一つ聞いていいか?」


「なにかしら?」


「魔法って失敗とかあんの?あったとして失敗したらどうなんの?」


「魔力が暴走して爆発するわ」


「それってどんくらいの規模?」


「使った魔力の量によっても変わるけど、術者が吹き飛ばされるだけの時もあれば村が一つ吹っ飛ぶ時もあるわ」


「オーケー把握、俺やっぱ身体強化しか使わねえわ」


「ちなみに勇者召喚レベルの魔力量になるとここら辺の見える範囲全部が吹き飛ぶわよ」


「絶対抜かれる訳にはいかないな」


「そういう事、死ぬ気で守るのよ」


「転移そうそう死にたくないぜ」


「き、来たぞ!」


「どうやらお出ましのようだぜ」


「じゃ、前衛頑張ってね♪」


「討ち漏らしは任せたぞ」


「なるべく回さないでね」


「そっちこそ援護しっかりしてくれよ」


「任せて頂戴」


「おい、あんたら喋ってないで戦ってくれ!」


「ああ、悪い」


「グオオオオオ!」


「んー、あれはゴブリンじゃねーな。オークか?」


「他にももっと来てるぞ、油断するなよ」


「まーた余計なフラグを建てる」


「キェェェェ!」


「おーおー、空からも来んのかよ。あれは流石に身体強化じゃどうにもなんねーな」


「くそ!どうなってる!何でこんなに魔物が統率されてるんだ!」


「大方これをけしかけた奴が居るんだろうよ」


何故戦闘中にも関わらずこんな会話をしているのかというと。先ほどからずっと色とりどりの魔法が空に大地に撃ち込まれていてとても前線に向かえる状態じゃなかった。魔法の着弾点は土煙で確認できないため魔物側にどれだけの被害が出ているのか判らない。


「白兵戦の前に飛び道具で敵の数を減らすのは何処の世界でも同じなんだな」


「第一波撃ち方止め!上空の敵に集中せよ!」


「さーて、行きますか!」


魔法が途切れた瞬間騎士達が前線に向かって走っていく。最初の獲物はゴブリンだった。


「まーたお前かい。雑魚は引っ込んでろ!」


身体強化を使い、物質強化を施した広辞苑で頭を殴り付けた。すると先ほどとは違いゴブリンの首が千切れ横から来ていたオークのわき腹にめり込んだ。ベキィ!と骨の折れる音が聞こえた。


「広辞苑ってこんな殺傷兵器だっけ?補正が俺じゃなくて広辞苑に掛かってたりしないよな」


否定しきれない可能性が出てきて人知れず不安になる颯人だった。そんな事を考えているとゴブリンの頭部をめり込ませたオーク大地を揺るがす咆哮を上げながら向かってきた。


「オオオオオ!」


「うっさいお前」


ゴシャア!やはり広辞苑の一撃で動かなくなった。動かなくなったオークが突然颯人に向かって飛んできた。慌ててそれを回避すると回避した先で狼型の魔物が爪を振り上げていた。


「やばっ!」


その一撃を広辞苑を構えて防御する。凄まじい衝撃を受け颯人の両足を中心に蜘蛛の巣状にヒビが入る。


「ぐっ、ああああああ!」


降り下ろされた腕の関節を折る様に回し蹴りを放つ。ゴキッと鈍い音がしたが折るには到らなかったようで狼型の魔物はバックステップで距離を取ろうとした。


「逃がすかよ!」


未だ空中にいる狼に向かって広辞苑を投げつける。べシャア!と音を立て狼を頭から撃ち抜いた。狼を貫いた広辞苑は後ろにいた数体の命も同時に刈り取った。


「うっしゃあ!だてに小中と野球やってねえんだよ!」


しかし、広辞苑は魔物の壁の向こうへいってしまった。


「さてどうしよう、武器がねえぜ」


その時視界の端にオークの持っていた棍棒が映った。


「あれ使えっかな?身体強化でどうにかなるといいが」


持ってみると意外と軽かった。


「これならいけるな」


棍棒をバットのように構えて魔物の群れに飛び込む。


「だらっしゃあ!」


フルスイングでゴブリンの頭を打ち抜く。ベリィ!と肉が狙い通りに首が千切れ、隣にいた別の魔物の頭部とぶつかり破壊する。


「やっべぇ、これ狙ってやるとチョー楽しいわ」


俺は半ば発狂気味に魔物の頭を打ち、砕き、ぶつけながら魔物の群れを蹂躙しながら広辞苑を探していた。


「くっそ、どこまで飛んでったんだよ。投げんじゃなかった」


気がつくと魔物の数が目に見えて減っていた。この様子だとあと三十分ほどで殲滅できるだろう。


「先に魔物を処理した方が良さそうだな」


俺は一旦広辞苑を探すのを止め、残りの魔物を倒す事にした。

程なくして地上の魔物の殲滅が終わった。しかし上空にいた魔物がまだ残っていた。俺はすることはもう無いので、クロアの元に戻る事にした。


「クロアさんや、ちゃんと仕事したのかい?」


「その言い方凄くムカつくわね。心配しなくてもきっちり働いたわよ。あんたこそ仕事したの?」


「しっかり役目は果たしたよ。上のどうすんの?」


「どうするもなにも落とすしか無いじゃない」


「出来んのか?」


「楽勝よ。これだけ人が居るんだもの」


「一人じゃ無理なのか?」


「これだけの量の魔物を一人で殲滅出来たらそいつは化け物よ」


「あいつら町の方に飛んでってるけどいいのか?」


「指示が無いから何か策があるんじゃないかしら」


「ふ~ん、なああんた町の方にあれが飛んでったけどあいのか?」


「なに!?ま、魔術師組!あいつらを撃ち落とせ!」


「気づいて無かったかだけらしいな」


「ふざけてんのかしら!?フレアブラスト!」


クロアの撃った炎弾に遅れて他の魔術師達の様々な魔法が撃ち込まれていく。色とりどりの魔法は魔物に直撃すると爆発し、空を彩っていく。


「おーおー綺麗なこった。まるで花火だな」


「魔法が使えないからって他人事すぎない!?」


「なら俺に何をしろと?」


「パサー位しなさいよ!」


「魔力って渡せるのか?」


「渡し方も知らないの?」


「召喚されて半日と少ししか経ってないのに知るわけねえだろ」


「はぁ、それも含めて後で教えてあげるわ」


「おう、頼むわ」


「そろそろ魔力切れだわ」


「一発しか撃ってねぇだろ」


「周りに魔力付与してると燃費がすっごい悪いのよ」


「そんな魔法もあるのか?」


「そんなわけないじゃない、私が作ったのよ」


「お前って凄かったんだな」


「じゃなきゃ異世界召喚なんて出来るわけないじゃない」


「それもそうか。っと、そんな事話してる内に終わったみたいだぞ」


「あー、疲れたわ。明日はゆっくりしたいわね」


「なあ、これって報酬って出るのか?」


「これだけ人がいるからあまり期待は出来ないわね」


「どうすっかなー、今日は野宿すっかな」


「あー、あんた無一文だったわね」


「そういう事だ。起きてれば死にはしないよな?」


「さあ?野宿するなんて見たことも聞いたことも無いからわからないわ」


「まじかよ・・・・・・」


「どうするの?宿賃一日位なら持ってあげてもいいけど?」


「いいのか?」


「こうなったのは私の責任でもあるもの」


「だったら一日世話になるよ」


「といってもこれから一緒に旅をする仲じゃない」


「え?あれ本気だったのか?」


「冗談であんなこと言わないわよ」


「まあ、いいか。それと俺は今日宿に泊まらないから」


「何でよ!?」


「森の中で魔法を練習したいからな」


「そ、なら頑張りなさいよ」


「おう、明日には進化した俺を見せてやるぜ」


「期待せずに待ってるわ」


「んじゃ、また明日なー」


「ええ、また明日」


そう言ってその日は別れた。


「さて、広辞苑探すか」


魔法の練習というのは建前で、本当はただ広辞苑を探したかっただけである。

次回は広辞苑捜索回ですので短くなるかもしれません。

それと私は宿題と言う名の天敵と戦わねばならないので遅くなると思います。

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