王都で起こした問題とその処分
俺達は未だに城下町を歩いていた。原因はスフィナがあれこれ理由を着けて王城に着くのを引き伸ばしているからだ。
「あ、あそこの食品店に」
「もう寄り道はしないぞ」
俺はスフィナの首根っこを掴み引き摺っていく。
「は、放してくださいな!わたくしは王城に帰りたくありませんの!」
「喧しい、これ以上時間はとらん」
「どうしてですの!わたくしも年頃の少女として色々な事を楽しみたいのですの!」
「だったら姫として生まれてきた自分の運命を恨むんだな」
「嫌ですわ!帰りたくありませんわ!」
そうして喚くスフィナを引き摺って歩いていると、衛兵に囲まれた。
「貴様姫に何をするつもりだ」
「何って城まで引き摺って行ってるだけだ」
「そんな事が信じられるか。貴様を不敬罪で拘束する」
「ですよねー」
うん、こうなる予感はしてた。
俺とクロアは拘束され、城まで運ばれた。
「理不尽だ」
「それはこっちの台詞よ。何で私まで捕まってんのよ」
「そりゃ、傍に居たからだろ」
「貴様等、王が御成りになる。私語を慎め」
「へいへい」
「喋るなと言っている」
シャッと首筋に剣が突き付けられる。
ナイフ等の武装は没収されているが、ラーンが懐にいるので問題では無い。
すると、何か無茶苦茶偉そうな筋骨隆々としたおっさんが出てきた。
「お前達か儂の娘を誘拐しようとしていたのは」
「だからそれは誤解だと何度も言ってるだろ」
「ならば何故お前達はここにいる」
「そこの衛兵の早とちりで連れてこられた」
「どうなんだ」
「はっ、その者が姫の首を掴んで引き摺っていたのを捕らえました」
「成る程、お前それは誘拐とどう違うと言うのだ」
「仮に誘拐をするならもっと静かに素早くやるさ」
「方法は」
「眠らせて酒樽にでも放り込んで商人に変装して町を出る」
「成る程その方法ならバレずに素早く誘拐を遂行できると言うわけか」
「取り敢えず放してくんね?俺悪くないし」
「ちょっと待って、百歩譲ってこいつは良いとして私が捕まったのが納得いかないわ」
「傍に居たのだから捕まったのだろう」
「いや、それだけで捕まえるとか雑過ぎね?」
「親しそうに話していたのだ捕まえない方がどうかしている」
「お前達の処分についてはスフィナと話し合って決める。それまでその者達を牢に入れておけ」
「はっ、承知しました」
あーあー、牢屋ですか、そうですか。良いですよ脱獄してやろうじゃあないの。
俺とクロアは別けて牢に入れられた。
牢に入れた為か枷は外されている。全く油断しすぎじゃない?
取り敢えず現状確認、使えるのは己の体と存在のバレていないラーンだけである。ナイフとポーチはどうにか回収せねば。しかし、地下なので当然窓など無いので、正面突破しかないのだが、衛兵が巡回しているのでリスクが大きい。
恐らく王国側は脱獄された場合、事実を揉み消し秘密裏に捜索を行うだろう。
格子の材質は質感的に恐らく鉄だろう。まあ、何であろうと土魔法で別の物質に変換するだけなんだが。
ラーンにしごかれてから一日徹夜するくらいは何ともないので朝まで自分の脈を計りながら衛兵の巡回の周期を割り出し、武装を確認する。
朝まで寝ずにいて確認できた事は衛兵の主な武装は両刃の剣とバックラーだという事と巡回の周期は凡そ一時間おきだという事ぐらいだった。
どうするかね、バックラー持ちに素手はキツいぞ。
そんな事を考えていると衛兵がやってきた。
「立て、王が呼んでいる」
「何だよ、もう話し合いの結果が出たのか?」
「行けば分かる事だ」
半ば無理矢理に立たされ手足に枷を填められ昨日と同じ場所に連れていかれた。そこには既にクロアがいた。
「お前も連れてこられたのか」
「そうよ。あんた何か聞いた?」
「いや、何も。着けば分かるって言われた」
「私もそう言われたわ」
俺とクロアが話をしていると、王と豪奢なドレスを着たスフィナが出てきた。
「お前達の処分が決定した」
え?まじで?早すぎね?現代日本なら訴訟もんだぜ?ってことはやっぱり不敬罪で打ち首かな?
とか俺がどうでもいい事を考えていると、言い渡された処分は予想の斜め上をいく、無罪放免だった。
「いいのか?」
「娘の話を聞く限りでは衛兵の誤解だということになるからな」
「ならもう自由になるのか?」
「そうだが」
「まだ何かあるのかよ」
「お前は今日中に町を発て」
「国外追放って事か」
「そうだ、ギルドで依頼を受けるなりして出ていくがいい」
「わ、私はどうなるのですか?」
「お前はもう少しここに残れ、娘が話がしたいそうだ」
「しっかし、こんなんでいいのか?」
「王と姫がお決めになった事だ我々があれこれ言っても変わらん」
「そうか、なら俺もそれに従わせてもらうか」
「そうしろ、王も言っていたが、ギルドで依頼を受けて他の町へいくんだな」
「いや、その事なんだけどさ。ギルドで依頼受けて町を出るって言うけどさ、他の町のギルドで報酬って貰えんの?」
「ああ、依頼書を提示すれば報酬を払ってくれる」
「そうか、ありがとよ」
「いいから行け、王の気が変わらんうちに」
「え?気が変わって死刑とかあんの?」
「過去に何度か」
「そんなんで大丈夫なのかこの国は」
「いままで成り立っていたのだから問題あるまい」
「うーん、まあ、じゃっかんモヤモヤするけどいいか」
俺は衛兵に別れを告げ王城を後にした。そして言われた通りにギルドへ向かった。
扉ごしの奇襲を二度ほど受けたし、二度あることは三度あると言うので警戒していたがそんな事はなく無事にギルドへ入る事が出来た。
依頼の貼られている掲示板を見ると丁度国を結ぶ道の脇に建っている屋敷の調査というのがあったのでそれを受けて屋敷を目指して出発した。
書き上がったので投稿。短いのでもう一つあげるつもりです。




