理不尽な戦闘
絆してたら遅くなっちった。こっちは毎日更新頑張りたいなと思っています。
「うわああぁぁぁあ!」
反射的に手に持っていた広辞苑でゴブリンを殴りつけるとグシャアと広辞苑からするはずの無い音がした。
恐る恐るゴブリンを見ると広辞苑の形に頭蓋骨が陥没していた。
いくら広辞苑が重くて強度があるからって魔物の頭部を破壊することなど出来るわけがない。しかし、その事について深く考える時間は無かった。すぐに次のゴブリンが襲ってきたからだ。
「やめろぉ!こっちに来るなぁ!」
今度は広辞苑を真横に振り抜く。するとゴブリンの首が180度以上回転した。そいつが倒れると辺りのゴブリンが一斉に襲い掛かってきた。どうやら、一撃で二匹もゴブリンを倒したため、危険分子と判断されたようだ。手前の一匹が手にしていた錆びたサーベルで斬り掛かってくる、とっさに広辞苑で防御した。しかし、すぐに失敗を覚った。ただの高校生が魔物の攻撃を受けきれる訳が無いのだ。しかし、その心配は杞憂に終わった。キィン!という音と共にゴブリンの使っていたサーベルが根元から折れたのだ。
「えっ」
きっと俺は今とても間抜けな顔をしているだろう。だって広辞苑で防いだらサーベルが折れたんだぜ?動揺しない方がおかしい。
そんな事をしている間にゴブリンが体制を立て直し拳を振りかぶっていた。
「やっべぇ!」
どうにか広辞苑を斜めに当て受け流す事に成功した。拳を流されたせいでゴブリンが鑪を踏む。その隙に蹴りを叩き込む。グニュウと肉に威力を吸収された。とてもダメージが入ったようには見えなかった。あっれー、おっかしいなー、広辞苑だとあんな簡単に倒せてたのになー。くっそ、ふざけやがって半引きこもりの蹴りなんて効かねえってのかよ。突然ゴブリンから血が吹き出し倒れる。
「おい、あんた!大丈夫か!?」
ゴブリンを倒してくれたらしい武装した男が話掛けてくる。
「なんとかな!」
「ならいい!戦えるのなら協力してくれ!」
「そうすれば助かるのか?」
「少なくとも生存する確率は上がるな!」
「だったらやってやるよ!」
「武器はあるのか?」
「こいつがある!」
そう言いながら俺は広辞苑を見せる。
「そんな物で戦えるのか!?」
「大丈夫だ問題無い。もう二匹倒した」
「そうか!だったら期待してるぞ!」
「そっちこそくたばるんじゃねえぞ!」
「当たり前だ!妻を残して死ねるか!」
あかん、それ死亡フラグや。そう思ったが口には出さない。
「おい!魔術師!召喚術は成功したのか!?」
「魔力をごっそり持っていかれたから成功したはずよ!」
「何も来てないじゃないか!」
「辺りに何か新しいの来てない?」
「知らん!自分で確認しろ!」
なんか向こうに俺がこの世界に来る原因になったっぽい人が居そうだけどそれどころじゃない。ゴブリンを広辞苑で撲殺するのに忙しい。しかし本当にきりがない。さっきからかれこれ20匹は殺したはずなのにまるで減ってる気がしない。
「どういう事だ!全然減らないぞ!」
「奴等は何か得たいの知れない繋がりを持っているみたいだからな!何処からかワラワラ集まって来やがるんだ!」
「ふざけんな!じゃあ終わらねえじゃねーか!」
「大丈夫だこの森で魔物発生しないはずだから群れを狩尽くせば居なくなる!」
「群れの規模は!?」
「わかったら苦労しない」
「だろうな!」
更にゴブリンを狩ること数十匹ようやく数が減り始めた。
「よし!後少しだ!」
「くっそぉ。もう腕が上がらねえ!」
「頼む、後少しだ!頑張ってくれ!」
「つーか、魔術師とかは居ねえのか?」
「実は一人居るんだ・・・・」
「じゃあそいつは何してる?何故援護がないんだ?」
「恐らく召喚術のせいで魔力が底を尽きかけてるんだろう」
・・・・・あれ?だったらこの状況半分俺のせいじゃね?召喚されたのに使えない俺のせいだよな?・・・・・これ以上考えるのは止めよう、死にたくなる。取り敢えずは目の前の敵の殲滅だ!
俺が気合いを入れ直したとき後ろから声がした。
「雷撃!」
激しい稲妻が目の前にいたゴブリンを俺ごと貫いた。
「がああぁぁぁぁあ!?」
激しい電撃に打たれたため体が麻痺して動かない。あのやろお召喚しておきながら俺ごと殺す気かよ・・・・。後で一発ぶん殴ってやろうかな。
「ヤバイヤバイどうしよう。前線の人に当たっちゃったよ」
意図的にやった訳ではないらしいから許してやるか。しかし、どうするよこの状況、俺絶対死ぬよ?俺の人生終わっちゃうよ?誰か助けて下さい。
「くそっ!あの野郎ふざけやがって!おい、お前!一先ずこれを飲め!麻痺が解ける!」
まじで!?俺は転がってきたビンに必死に手を伸ばす。感覚も麻痺しているので掴めているのかよく判らないので見ながらやらなければならなかった。掴んでからの方が問題だった。蓋が取れないのだ。
「・・・・・蓋とれねぇ」
「チッ、しょうがねえな」
蓋を外して飲ませてくれた。いや、最初からそうしろよ。
「動けるか!?」
「ああ、バッチリだ」
「ならいくぞ。後二匹だ。くれぐれも油断するなよ」
どうやらあの魔術師は人のいない方の殲滅をしてくれたらしい。さてとこっちも片付けますか。
「オラァ!」
近づいてきたゴブリンの頭に広辞苑を全力で叩きつける。ベギョォ!一撃で頭が平らになり息絶えた。隣はというと、ゴブリンに胸を貫かれていた。・・・・・・・・きっちりフラグ回収してんじゃねえよぉぉぉぉお!何でよりにもよって最後に油断してんだよ!お前が一番油断してんじゃねえか!人の振り見て我が振り直せって言うだろうがよぉぉぉぉお!
言いたいことを心の中で叫んだ。
「くそやろぉ!」
俺はあいつを殺したゴブリンに殴り掛かった。
「まてぇ!」
が鋭い一喝で止められてしまう。
「そいつは私に殺らせてくれ。部下の仇だ」
どうやらあの人が隊長のようだ。
「我が部下の仇!討たせてもらう!」
隊長は腰を落とすと爆発的な勢いで踏み込むとゴブリンの腕を斬り落とし、返す刀で反対の腕も落とした。
「お前は簡単には死なさん。部下の仇だ、存分に苦しむがいい」
そう言うと両足も斬り、ゴブリンの頭を剣の柄で殴り始めた。何て言うかこれにはもう狂気を感じる。俺はこの人は敵に回さないでおこうと心に決めた。それから小一時間ほどしてようやく拷問が終わりを迎えた。ゴブリンの死によって。ゴブリンの顔はもはや原型を留めていなかった。例えるなら分量を計り損じたスライムだな。
「すまない、取り乱してしまった」
取り乱すとかそんな次元じゃ無かった気がするが一先ず置いておこう。
「それで、お前は何物だ?」
「何物って言われてもなぁ。気がついたらここにいたんだよ」
「どういう事だ?」
「そのまんまの意味だよ。光に包まれて気づいたらこの場所にいたんだよ」
「原因に心当たりがあるんだがな。なあ、魔術師よ」
「な、何の事だか判らないわね」
そう言いながら魔術師と呼ばれた少女は目を逸らした。あ、これは嘘ついてるな。
「恐らくお前はその魔術師の召喚術によってここに呼ばれたのだろう」
「そうか。で、ここはどこだ?」
「サリヴァン王国の横のシュラビィの森だ」
「うっわ知らねぇ。異世界かよここ」
「なに!?お前は異世界から来たと言うのか!」
「そうじゃなきゃ俺の知らない地名の説明がつかねぇ」
そう!ご存知の通り、俺は図書室の本をほぼ全て読破しているそれにはもちろん世界地図帳も含まれている。よって、俺が知らないという事は、ここが異世界だという事である。そもそも俺の世界魔法とか無いしね。
戦闘回でしたがいかがでしたか?
楽しんで頂けたのなら幸いです。