犯し続ける罪
「そうですね。しかし”legend stone”は持っていますし、妖精なんか居なくても戦えます。まあ、居るに越したことはありませんが」
確かに、羅刹の言う通りかもしれないわね。大事なのは妖精ではなくストーン。それでも、妖精たちを逃がしたってのが気に入らないわ。絶対捕まえる。
「探しましょ。それに、妖精がいれば魔王のことも探しやすいじゃない。普通に探したら、魔王は絶対に見つからないもの。呼んだら出てきたりもするけど、もっと不意打ちじゃないと勝てない」
まさか、魔王を名乗る少女にあれほどまでの力があるなんて。信じられないわ、何を使ったのかしら。
「分かりました。では妖精を見つけ出し、その妖精にストーンの気配を辿って貰います。そして隙を見て全て奪ってしまいましょう」
大体合っているけれど、奪うという表現は可笑しいと思うわ。元々は神の持ち物、そしてそれを守護するのが妖精。奪うと言うよりは、取り返すと言った方が正しいんじゃないかしら。
「でも、妖精たちをどうやって探すって言うのよ。闇雲に探したところで、見つかりはしないわ」
魔王を見つけられない私たちが、妖精たちをそう簡単に見つけられるのかしら。ふん、そんな筈がないわ。魔王よりは見つけやすいかも知れないけれど、妖精たちを探すのだって困難。何か手掛かりがないとほぼ不可能ね。
「呼び寄せると言うのはどうでしょう。命令にはさすがに逆らえない筈です」
羅刹は簡単に言うけれど、そんな簡単なことじゃない。呼び寄せるということは、大神様ということ。つまり、大神様に呼んで貰うように頼まなくてはいけないということ。
彼はそんなに暇じゃない。魔王一人の為に、動いたりすることは出来ないわ。
魔王を倒す為に、ストーンを奪う。ストーンを奪う為に、ばれないように近付く。ばれないように近付く為に、魔王の居場所を探知する。魔王の居場所を探知する為に、妖精を捕まえる。妖精を捕まえる為に、大神様に呼んで貰う。
そんなことの為に大神様を? 無理無理無理無理。そんなの絶対無理に決まっているじゃないの。大神様を何だと思っているのよ。
「何も本人である必要はありません。大神様の振りをすればいいのですよ」
つまり、大神様の振りをして無理矢理妖精を呼び寄せる。そして逃げないように檻にでも入れて、拷問にでも掛けて案内させる。と? ある意味魔王よりも酷い気がするわ。
「それ、詐欺ってことじゃない。通報でもされたらどうするのよ」




