戦乱の中
羅刹の言い方に、凜子は少し驚いたような表情を見せた。
「今度は、貴方を正しい場所に戻して差し上げましょう。ふふっ」
笑顔で羅刹はステッキを構える。私もステッキを構えた。それに合わせて、光の魔物たちも構えた。
「それじゃあ、私は抵抗させて貰おうかな」
凜子も笑顔で呪文を唱え始める。それに合わせて、現れた闇の魔物たちも呪文を唱える。
「今です。行きましょう。皆さん分かっていますね? 闇の魔物たちも殺めたりしてはいけません」
羅刹の指示で一斉に動き出す。光の魔物と闇の魔物の力の差は歴然。殺さないよう手加減しながらでも戦えるでしょう。
「二対一なら戦えるでしょう。行きますよ」
今回はその言葉の否定もない。二対一ではなく二対二だ! そんな言葉は聞こえてこなかった。
「神はその程度か? もっとしっかりしろよ」
最初は手加減をしながら戦っていた。でも、しっかりしろと言われてしまう。そう言われてしまっては、本気で行くしかなくなってしまう。
我武者羅に、何も考えずに私は闘った。そして気が付くと、凜子も羅刹も倒れていた。魔物だって、光も闇も全ていなくなっていた。
「え……、嘘でしょ? 皆、大丈夫よね」
もしかして全て殺してしまったのかも。そう思って私は怖くなった。
「ああ、嘘だぜ。大丈夫さ」
そんな声が聞えてくる。驚いて、私は声のした方を見る。そこには、凜子が立っていた。
「どうした? そんなに乱して、心に隙を作って。嘘も見抜けないなんて、落ちた神め」
その通りだわ。心に隙を作ってはいけない。いついかなるときも、冷静さを保っていられないとよ。これだから私は未熟なんだわ。
「落ちたのとは違うわ。逆ね、まだ登っていないの。若くて未熟な神だから、これから上がって行くのよ。勉強になったわ。ありがとう、感謝するわね」
まだこれから上がっていける。いくらでも、私は上がっていけるわ。ここで魔王を救うのも、一人前になる為のいい経験だわ。
「そうか。なら、私と一緒に上がって行こう。そして、私と一緒に大人になろう」
優しく微笑む凜子。いくら未熟と言えども、そんな言葉に騙される訳ないじゃない。少し馬鹿にし過ぎじゃないかしらね。
「ええ、そうね。貴方と一緒になら、私も成長できる気がするの」
そんなことを言いながらも、私は魔法を溜めている。会話していることで、少しでもそれに気付かせまいと努力しているの。
「では、僕のことは捨てるのですか? 姫神様」
羅刹の声が聞えた。と思ったら、凜子は吹き飛ばされてしまう。




