一番汚い存在
なんか、こっちが照れ臭くなってくるわ。告白後、羅刹は恥じらう様子もなく大好きだとか言ってくる。勿論嬉しいのよ? でもさ、恥ずかしいじゃん。
「帰る? 今帰るのなら、これ以上傷付かなくて済むわよ。貴方なんて追ったりしない。帰ってもいいわよ」
親切な私は、そんな優しいことを言ってあげた。私がそんなにも優しくしてあげたというのに、それでも梨乃は去ってくれないの。
「ここで帰る訳にはいかないのです。ここで帰れば私は笑いものです」
最強と調子に乗って神を呼び、魔王を付け回して最後には捨てられて逃げ帰る。確かに結構な笑い者だわ。
「ここで殺されれば、もっと笑い者ですよ。むしろ生きて帰った方が弁解できるではありませんか。そちらの方が賢い判断だと思いますよ」
羅刹も説得に入ってくれる。それでも、梨乃は動こうとしてくれなかった。無駄に殺したくはないんだけどな……。
「死を望むのなら、やむを得ませんが」
呪文を唱え始める羅刹。すると私達の手にステッキが戻ってくる。そして、目の前には光の魔物たちが現れた。
「夜叉姫様のおかげですよ? こうして僕はステッキに認められる、聖なる神となれたのです。感謝します。僕に感謝されるなんて、特別だと思いますよ? 満足ではありませんかね」
ってことは、私も聖なる神に戻れるチャンスじゃない。間違ってしまった梨乃のことを、この世から消滅させることで正しい場所に誘う。そうして私と羅刹は聖なる神になるんだ。
「あとで後悔させてやるのです。梨乃の、夜叉姫の力を思い知らせてやるのです。だから今は殺すがいい」
なぜ笑い始めたの? 少し怪しさを感じるけれど、こんなの強がりに決まっているわ。だから私も光の魔物を呼び出し、梨乃を消滅させた。結局彼女は、最期まで笑い続けていた。抵抗もせず、笑顔で消えて行った。
「楽しいショーをありがとな。お前は、いい奴だったぞ……」
光となった梨乃。その光のクズを抱き締めると、凜子は悲しげに微笑み優しく声を掛けた。やがてその光もなくなってしまう。
「絶対、滅茶苦茶汚かったんだけど。今の行動が聖なる神なのか? 神は本当に汚い奴らなんだな。魔族なんかよりも、ずっとずっと汚いさ。一番汚い存在さ」
分かっているわ。今更何を言っているのかしら。
「はい、そうですよ。神は汚れた存在です。何よりも、神は最も強く最も汚いのです。知らなかったのでしょうか」
ええ、誰でも知っていることよね。汚く卑怯だから、力を手に入れ神と呼ばれるまでになった。
「ふん。そんなの知っていた」




