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legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”十章” 花とリボン 光の魔物召喚
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一番汚い存在

 なんか、こっちが照れ臭くなってくるわ。告白後、羅刹は恥じらう様子もなく大好きだとか言ってくる。勿論嬉しいのよ? でもさ、恥ずかしいじゃん。

「帰る? 今帰るのなら、これ以上傷付かなくて済むわよ。貴方なんて追ったりしない。帰ってもいいわよ」

 親切な私は、そんな優しいことを言ってあげた。私がそんなにも優しくしてあげたというのに、それでも梨乃は去ってくれないの。

「ここで帰る訳にはいかないのです。ここで帰れば私は笑いものです」

 最強と調子に乗って神を呼び、魔王を付け回して最後には捨てられて逃げ帰る。確かに結構な笑い者だわ。

「ここで殺されれば、もっと笑い者ですよ。むしろ生きて帰った方が弁解できるではありませんか。そちらの方が賢い判断だと思いますよ」

 羅刹も説得に入ってくれる。それでも、梨乃は動こうとしてくれなかった。無駄に殺したくはないんだけどな……。

「死を望むのなら、やむを得ませんが」

 呪文を唱え始める羅刹。すると私達の手にステッキが戻ってくる。そして、目の前には光の魔物たちが現れた。

「夜叉姫様のおかげですよ? こうして僕はステッキに認められる、聖なる神となれたのです。感謝します。僕に感謝されるなんて、特別だと思いますよ? 満足ではありませんかね」

 ってことは、私も聖なる神に戻れるチャンスじゃない。間違ってしまった梨乃のことを、この世から消滅させることで正しい場所にいざなう。そうして私と羅刹は聖なる神になるんだ。

「あとで後悔させてやるのです。梨乃の、夜叉姫の力を思い知らせてやるのです。だから今は殺すがいい」

 なぜ笑い始めたの? 少し怪しさを感じるけれど、こんなの強がりに決まっているわ。だから私も光の魔物を呼び出し、梨乃を消滅させた。結局彼女は、最期まで笑い続けていた。抵抗もせず、笑顔で消えて行った。

「楽しいショーをありがとな。お前は、いい奴だったぞ……」

 光となった梨乃。その光のクズを抱き締めると、凜子は悲しげに微笑み優しく声を掛けた。やがてその光もなくなってしまう。

「絶対、滅茶苦茶汚かったんだけど。今の行動が聖なる神なのか? 神は本当に汚い奴らなんだな。魔族なんかよりも、ずっとずっと汚いさ。一番汚い存在さ」

 分かっているわ。今更何を言っているのかしら。

「はい、そうですよ。神は汚れた存在です。何よりも、神は最も強く最も汚いのです。知らなかったのでしょうか」

 ええ、誰でも知っていることよね。汚く卑怯だから、力を手に入れ神と呼ばれるまでになった。

「ふん。そんなの知っていた」

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