悲しみの果て
「なんで、なんでですか? 神は神相手でなければいけないのですか? 私では不釣り合いと、そうおっしゃるんですかっ!? ううぅ」
泣きそうになりながら、梨乃は攻撃を続けていた。必死に、必死に攻撃し続けていた。
「諦めて」
その姿を見ていられなかった。だから私は、見ないよう俯きながらそう言った。素直に諦めて欲しい、二人とも。だって、誰のことも傷付けたくないからっ。
「もうこれ以上傷付けたくないのが分からない? ねえ、分からないの? 諦めて」
二人に向けてその言葉を発した。だけど二人とも聞くつもりはないようだった。
「分かりました。羅刹さんを私に下さるのなら、他は全て諦めてもいいでしょう」
何よ、気持ち悪い。私が上げると言ったところで、そんなのどうしようもないでしょう? 嫌々やってきた羅刹を貰い、何が嬉しいというのよ。
「それも諦めて。他の人と幸せになることを薦めるわ」
そっちの方が、絶対に梨乃も……夜叉姫も幸せになれるわ。無理に羅刹に拘る必要はないと思うの。
「どうしてそうやって、私から全てを奪おうとするのですか? そんなの酷いではありませんか。そんなの、あんまりではありませんか」
別に、全てを奪おうと言うつもりはないわ。ただ、全てにおいて私の方が優れていたと言うだけ。そう、優れているのだから仕方ない。
「神様は不平等です」
んなこと言われても困るわ。だって私が決めた訳じゃないもん。でも、これだけは言えるわよ。
「神のせいではない。貴方が悪いのよ? そもそも、神と接している時点で貴方は間違っている。全く違うの存在なの、それを考えて」
悲しんでいるからって、私は無駄に励ましたりはしない。ただ、私は欲しいものを手に入れたいだけなの。他人なんて関係ないわ。
「なら、やっぱり間違っているのはそっちです! 普通だったら、神がやってくることが可笑しいんじゃありませんか? 神が来なければ、私たちが会うことなどないではありませんか」
それもそうかもしれないわね。でもそれは仕方ないわ。呼ばれたから、来ちゃったんだもの。
「ごちゃごちゃ五月蝿いな」「ぎゃーぎゃー五月蝿いですね」
凛子と羅刹が同時にそう言った。その二人の冷たい言葉に、梨乃は必死に涙を堪えている状態だった。可哀想に、そうは思うけど助けようなんて思わない。
「どうして私ばかり、どうして私ばっかり……。こんなの不平等です」
何も不平等ではないわ。訳の分からないことを言って、死にたいのかしら。むしろ殺したいわ。




