全ての罪を背負い
いきなり羅刹な顔から笑顔が消えた。心から笑顔を浮かべる姿はあまり見ないけど、笑顔が消えるのはもっと見ない。どんな時だって、私に笑い掛けてくれてた。どんな時だって、笑顔を振り撒いていた。ずっとずっと笑顔だったから。
「何もかもを壊しているんです。魔界なら一度滅ぼしました。しかし滅んでしまった魔界を、姫神様は救って下さったのです。だからそれを無駄にしないで下さい」
あの魔王は本気でただのクズだったわ。殺すことを楽しんで、人々を散々苦しめて。あんなの魔王でも何でもなく、クズそのものよ。だから、私も救おうとしなかった。救えなかったのも確かだけど、救おうとすらしなかったんだ。それは女神失格よね。分かっているわ、でももう同じ過ちは繰り返さない。凜子を救うんだ。
それは正義なんかじゃない、それは分かっている。自己満足、そうよね。だけど凜子を救うことで、あの間違いを許して欲しいの。壊してしまった、女神が。だからステッキにも拒否されるんだ。羅刹は苦しみながらも、鬼神として壊してきた。でも私は女神として全てを救う立場だった。恵まれているのに、捨ててしまった。
「じゃあ、その時救ったことを後悔するといい。何を言っても、私は新しい神になる。古い神を消し去るんだ。皆を助ける為に、私が頑張らないといけないんだ!」
皆を、助ける為……? 凜子は救うために戦っているのかしら。それなら、壊す為に戦うあいつとは強さが違う。そんなの、考えなくたって当然のことだったね。
「ごめんなさい。でも私はもう間違いたくないの。ねえお願い、私に助けさせて。貴方は苦しまなくてもいいの。私が自らの仕事を放り出したせいで貴方が苦しむのは、可笑しいよね。私が悪いよね? 貴方は悪くないのよ。私が一番知ってる」
人間界に私が逃げたから、凜子は苦しむことになってしまった。人間界に私が逃げたから、人々は苦しむことになってしまった。妖精も、ストーンだって……。
「もう一度神を信じて欲しい。古い神を、信じて欲しいの。もう逃げたりしない。もう逃げないからっ。だからお願い、貴方は少女に戻って。全ての罪を一人で背負わないでよ。短い一生を、思いっきり楽しんで頂戴よ。貴方に罪はないのだから」
これ以上暴れたら、凜子は本当の罪人となってしまう。これまでの殺害は、神が見捨て世界が混乱したためということでいいでしょう。でも殺すことに快感を覚えては、あのクズと一緒になってしまう。頑張る凜子をああさせたくはない、絶対。




