心の苦しみ
そうですね。どう反応していいのか分からない言葉だった。確かに凜子は死神と言ったかもしれないわ。羅刹は鬼神、でもどうでもいいじゃないそれくらい。
「そうか。すまなかった」
反応に困るのは凜子もそうだったようだわ。でも前から、ずっと前からこうゆう子だったわ。ちょっと困る天然なことばかり言ってくるんだもの。だからそんなとこが私は、姫神は。
-ー好きだったんだ。
「鬼の中の神、神の中の神なんです。そう、僕は神なんです」
ええ、そんなの分かっているわ。どうしてしまったのかしら。
「僕は神なんです。ふふっ、ステッキなら持っていって構いませんよ? きっと、後悔することになると思いますが。ふふっ、ふふふふっ。それは神の、神の為にあるアイテムです。神である僕らにしか扱えません」
壊れた訳ではないのよね? 本当に凜子が後悔するようになるのよね? 羅刹、大丈夫なのよね……。
「分かった、ありがとう。しかし前に教えてやったこと、覚えていないのか? 私が新しい神になる、そう言ったじゃないか。はっはっはっは」
そんなことを言っていたような気がしないでもない。でも無理に決まっているわ。神の力が無ければ、神にすることなんて出来る筈がない。神になれる筈なんてないわ。こんな奴、絶対に神として認められないもの。
「はい、覚えていません。歳をとると、昔のことを忘れて来てしまうんです。ごめんなさいね」
本当に覚えていないの? まさか、そんな筈はないわよね。私より年下な訳だし、神の中ではかなり若いわ。まだ一万年ちょっとしか生きていないのでしょう。
「全然年寄りには見えないんだがな。どう見たって、お前は若いじゃないか。覚えているんだろう? それとも、私の恐怖で記憶から消えたとかか。はっはは」
何を言っているのかしら。神の中でも最強級である羅刹が、こんな人間恐れる筈がないじゃない。冗談なら、もっと楽しい冗談にして欲しいものだわ。
「若い? そう言って貰えて嬉しいです。いくつくらいに見えますかね」
どうしてだろう。羅刹の無邪気な笑顔が、なぜか本物に見えるわ。こんなことで笑えるとは思えない。そんなのは分かっているわよ。
「普通に、十六くらいじゃないのかよ。どんなに上に見ても二十歳で限界だな」
何この人達。どうしてこの場面で、そんなにもどうでもいい話をしていられるのよ。両方で余裕を感じているってことなのかしら。
「その感覚が人間だって言ってるんですよ。何百年も、何千年も。ずっと壊し続けている僕に対して……っ」




