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legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”九章” 陽香の力
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数千年の想い

 それもそうね。凜子が何と言おうと、私達が勝てば凜子は悪になるわ。そして悪を倒したのなら、私達は正義となることが出来る。

「それだから汚い神と言われるのでしょう? 私は救うわ」

 汚い神をやめるつもりはない。でも、汚い神を見せるつもりもないもの。こうすると、私の方が羅刹よりも汚そうね。ふふっ、だって汚くたって構わないもの。

「いい神ぶらなくて結構。ステッキの拒絶、これで汚さは証明されてるんだ」

 可笑しいわね。ステッキが私達よりも凜子を選んでいるとでも? それは有り得ないわ。だって凜子は神ですらないんだもの、少なくとも完璧に当てはまる存在ではない。ならどうして? 信じたくないわ。

「拒絶なんてされていませんよ。ステッキをお渡し下さい、使用して見せますから。それに、僕が拾ったんだから僕のものですよ」

 拾った? あのステッキって、拾って来ていたの。大神様に譲り受けたって、そう言ってくれたじゃない。あの時は本気でカッコいいと、凄いと思ったのに。

「あっ、姫神様。騙した訳ではないのです。ただ、ただ……」

 何よ。騙した訳じゃない? ただ何なのよ。もじもじしやがって、男がそんなもじもじしてカッコ悪いわ。

「ただっ、大好きな貴方の前ではそう言いたかったんですっ! 凄いって、思って欲しかったんです。たとえそれが嘘だとしても、…………ごめんなさい」

 そう言って頭を下げる羅刹。頭を下げる前の表情は、とても恥ずかしそうにしていたように見えた。耳まで真っ赤にして、目には涙も溜めて。それを隠すように、頭を深く深く下げている。

「愛の告白か? はっはっは、私はお邪魔かな」

 そんなことを言って、からかうように笑いながらも凜子は近寄って来る。どんだけ性格悪いのよ、こいつ。邪魔なのが分かるなら、この場で消え去ればいいのに。

「凄いとは思ったわ。でも、嘘だったとはね。まあいいわ、ステッキを拾ったことも凄いと思うわ。さすがね」

 私の言葉には皮肉も込められていた。別に私は羅刹を傷付けようってつもりはないんだけど。でも恥ずかしくて、私はそう言ってしまっていた。

「振られちまったな? 可哀想な死神さん」

 分かってる。こんなこと言ったって、愉しむのは凜子だけだって。そんなことは分かってるわよ。でもいきなりそんなこと言われたら、恥ずかしくなっちゃうでしょ? 仕方がないと思うわ。

「五月蝿い、違います」

 怒りに震えているような様子の羅刹。違うと言って、凜子のことを睨み付ける。

「僕は死神じゃありません! ……………………鬼神です」

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