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legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”九章” 陽香の力
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魔王と神

「正義と悪だったら、絶対に悪の方が強いんだよ。だって周りを気にしなくて済むから」

 確かに凜子の言う通りだわ。でも残念ね、その前の段階よ。

「生物と神だったら、絶対に神の方が強いのよ。だって周りを気にしなくて済むから」

 思い出したわ。私は、姫神よ。過去のことも、羅刹のことも思い出したわ。能力も魔法も、魔王の倒し方だって思い出したわ。

「陽香さん? いえ、姫神様……ですね。これも使えますか? 思い出しているといいんですけど」

 羅刹が渡してくれたのは、リボンのステッキであった。

「ええ、思い出したわ。任せて、行きましょう」

 二人で力を使えば、魔王なんて恐れることは無い筈だわ。ただ問題点としては、力を使い切ることが出来ないところよね。この体が不便だわ、そしてそれは羅刹もずっと思い続けてきたことなのでしょう。

「はい。陽香さんの姿をもう必要としないのでしたら、力を解放することも可能です」

 最後に”悠馬”は微笑んだ。それに”陽香”は微笑み返した。そして悠馬の姿は失われ羅刹となり、陽香の姿も失われ姫神となっていた。

 肩に掛かる綺麗な黒髪、全てを闇へと誘う漆黒の瞳。不気味に笑う口、それなのにどこか優しそうな表情。だぶだぶの黒い布に包まれた細い体、その手に握られた可愛らしい花のステッキ。この懐かしさを感じる姿こそ羅刹って感じだわ。

「……あ」

 驚きの表情を浮かべる凛子。前にもいたわね、魔王を名乗る人間。

「あの時は本当に、全てを破壊してしまったわ。でも気付いたの、それじゃ魔王の思い通りだって。今回はもうそんなことしないわ。もう繰り返さない、絶対に」

 守るんだ、人間も妖精も……魔族も。魔王を守ることは勿論、闇の魔物たちもしっかり守り通して見せるわ。

「はい、そうですね。僕だってもう分かっています。絶対に守りましょう、全てを」

 微笑み合ってステッキを握り締める。そして二人同時に唱え始めた、全てを守る為に呪文を。成功するかは分からない、もしかしたら私達が神じゃなくなるかもしれない。少ないチャンス、全力で! 必死に呪文を思い出し、唱え続けていた。

「全てを守る? 笑わせるな。お前は全てを壊す鬼神だ。全てを絶望へ導く、それがお前の任務だろ? こちら側の筈だ」

 でも、ここまで知っていてただの人間? さすがにそれじゃ片付けられなそうね。

「お前らに使える訳がないだろ! そのステッキが」

 気付いたときには、ステッキを奪われてしまっていた。どうやら、前回の魔王とは訳が違うみたいね。ただ殺したい、ただ壊したい。そんなんじゃない、凜子はそんなんじゃないのね。だから私や悠馬に反抗できる、だから神を否定できる。

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