二人で越える夜
私達は夕方まで歩き続けていたが、街が見える気配はなかった。
「日も沈むし、今日はそろそろ休みましょう。ご飯も、今日の分くらいはあるし。ほら、食べなさい」
私はバックの中のおにぎりをまどかに渡した。私のご飯、それはどうせ人間よ。おにぎりなんて、私が食べたくて持っていた訳ではない…。
「陽香お姉ちゃんが食べて欲しいなのです」
まどかは私におにぎりを返す。
私が何度渡しても貰おうとせず、頑固に返してきた。
「私はさっき食べたわ、早く貴方も食べて頂戴。途中で貴方に倒れられたりしたら、迷惑なのよね。それに今度は私が、貴方を助ける番なのでしょう?」
私がそう言うと、まどかはやっと受け取ってくれた。そしてラップを開け、小さな口で少しだけ齧った。
「陽香お姉ちゃん、ごめんなさいなのです。街なんて、全然ないなのです」
暫くしておにぎりを食べ終えるとまどかは、ラップを折りたたみながら訊いてきた。どうしてラップを折りたたんでいるのだろう。
「どうして貴方が謝るの?それにきっと、もうちょっとで街もあるわよ。だから信じて明日も行きましょう、ね」
信じるなんて言葉が、私の口から出てくるなんて…。驚きね、地獄の誰かが聞いたらどう思うかしら。
「本当なのですか?まどか、頑張るなのです。まどか、信じるなのです」
そのまままどかは、その場で眠ってしまった。まあ、疲れたでしょうからね。あんな状態で、長時間歩き続けていたんだもの。
私も疲れたわ、そしてとても眠いわ。でも流石に、ここで私まで眠る訳にはいかないわよね。だって私が眠ってしまえば、いつモンスターに殺されるか…。
……あれ?日が昇って来ている、可笑しいわね。もしかして私も、寝ちゃってたのかしら。あんなに眠らないようにしていたというのに…。まあ私も無事だし、まどかも隣で眠っている。いいとしましょう。