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legend stone ~伝説の意志~  作者: 田中稚夏
”九章” 陽香の力
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守り合う力

 普段からは考えられない程、悠馬は乱してくれていた。勿論いいことではないけど、私は素直にそれが嬉しかった。

「ありがとう。私なら大丈夫よ」

 優しく優しく、悠馬は私に微笑んでくれていた。

「本当に鬼神に?」

 戻ってきた凛子は完全に驚愕の表情を浮かべていた。しかし、傷とかは見当たらないわ。さすが、この程度ではどうってことないのね。

「いえ、鬼神となってはいません。僕が努力していますから。しかしこのままでは、制御し切れません」

 恐ろしげに微笑む悠馬。私に向けてくれた微笑みとは違う。全然違う、恐ろしい微笑みだった。

「それに、考えてもみて下さい。今のが鬼神の力な筈がありませんよ。神の力でしたら、魔王を名乗る人間ごとき」

 そこで止め、悠馬は右手をきつく握り締めた。左手では優しく私を抱きながらも、強く強く……。

「死にたくなければ、今すぐ僕の目の前から消え去って下さい」

 低く冷たい悠馬の声。表情は見えなかったけれど、優しい表情はしていないと思う。だから私も、見なくてよかったと思うわ。見たら忘れられなくなると思うから。

「僕が全て壊してしまう前に、去って下さい。早く、早く……!」

 私を抱き締めてくれている。でもその暖かい腕は、少しだけ震えているような気がした。

 だから安心させてあげたい。それで、少しでも力になりたい。そう願った私は、悠馬の左手を両手で握った。

「殺せるもんなら殺してみろ。壊せるもんなら壊してみろ。果たしてお前にそんなことができるのかね。はっはっは。ずっと私を苦しめて来たくせに、不平等だな」

 確かに悠馬は優しいわ。だから私は、悠馬の手を汚して欲しくないの。

「ええ、いいわ。貴方には屈しない、貴方の思い通りにはならない。残念だったわね、ふん」

 恐怖を自分で宥めながら、なんとか喋ってみせたわ。なんとか強がって、そう言ってやったわ。私を守ってくれた悠馬を、私が守る為に。

「陽香さん、大人しくしていて下さい。僕が守ります、僕に守らせて下さい」

 悠馬の微笑みは、優しくて悲しそうで。

「いちゃつくな、気持ち悪い。全部纏めて、消し去って貰うんだ。そこの心優しい神様に」

 何かをしようとする凛子、何かしら。いや、なんだって関係ないわ。私が悠馬を守るんだからっ! 悠馬が私を守ってくれるんだから……。

「はっはっはっはっ!」

 大声で笑う凜子。そしてそのまま、何を思ったか私達へと突っ込んで来たのだ。驚いた私達は、全員で急いでバリアを張った。私と悠馬の魔力じゃ足りなかった。感謝しないとね。

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