あと少しだけ……
エンドレスに言い合いを続けていると思ったが、スターちゃんがそう言ってくれた。
「妖精が逃がされた、これが気に入らないのだ。犯人は誰だか分かっていないらしい。果たして誰がやったんだろうな……。皆大騒ぎさ」
犯人は分かっていない? 分かっていないのなら、この場にいる筈がないわ。わざわざ私達にそう言っている時点で、分かっているのでしょう。だって妖精だって、この場にいるんですもの。
こんなこと言うんだから、何か狙いがあるのよね。何かしら、何がしたいのかしら。こんなことをして、何の意味があるのかしら。分からないわ。
「はぁい、僕が逃がしましたぁ」
私が考えていると、悠馬がそんなことを言い出した。ニッコニコ笑っていて、何だか楽しそうというよりも嬉しそうだわ。いつもは微笑みだけど、今は笑っているって感じだし。どうかしたのかしら。
「本当なのか? なら来い」
何を言っているのかしら。真偽の判断をする必要ある? どうせ自分で犯人と名乗ってるんだし、それなら罰を与えても大丈夫じゃない。嘘だろうと関係ないわ。
「面白いことを仰るんですね。行く訳ないじゃありませんか、あははー」
どうしたんだろう、このハイテンション。最早悠馬の様子は、故障中って言うようなレベルだった。わざと演じられたハイテンション、なのかしらね……。
「じゃあ連れて行く。妖精共と一緒に」
そんなこと言われてもね? 連れて行くで連れて行かれたりなんかしないわ。
「嫌だなぁ、連れて行くだなんて言われても困りますよ。僕にだって心の準備と言う物がありまして」
もじもじしているように指を動かしたりして、凜子をチラチラ見る悠馬。どうしたのかしら。悠馬に何があったの? 誰か教えて欲しいものだわ。
「まだ、まだちょっと待って下さい。これだけの人の前で、恥ずかしいですが」
どうしたのかしら、明らかに様子が可笑しいわ。何が恥ずかしいのよ、全然意味が分からないわ。
「何を言ってやがる。ただ着いてくればいいんだよ。話をしてやる」
話? 説教のようなものかしら。でもそんなことしそうには見えないわよね。
「きゃっ、お話? どんなお話なんでしょう。でもなぁ、聞きたくないかも」
そんなことを言って悠馬は右手を前に出す。すると凜子は吹き飛ばされてしまったのだ。何をしたのかは分からない。ただ悠馬が手を前に出しただけで、触れてもいないのに吹き飛ばされてしまったのよ。
「何しやがる」
しかしそんなの何ともないらしく、普通に凜子は戻って来て文句を言う。




