冗談はやめて
「そんじゃ、このまままおーだって倒せちゃうんじゃない? えっへん」
胸を張るスターちゃんは、残念ながら優秀そうには見えなかった。が、力は確かなのだろう。そう言えば攫われたときだって、悠馬のことを驚かせたもんね。
「そんなことないなのです。魔王はとっても強いなのです。勝てないなのです。絶対に、あんなの倒せないなのです」
下からそんな声が聞こえて来たので、不思議に思って私達はその場所まで降り立った。そして私と悠馬は、酷く驚愕したのであった。
そこにいたのは、大体十歳くらいだと思われる少女だった。緑色の髪を腰ほどまで伸ばし、恐怖に怯えたような表情を浮かべている。
「まどか、まどかなの? ねえ、まどかなのよね」
それは、ここにいる筈のない存在。私が殺してしまった筈の少女だったのだ。
「はいなのです。陽香お姉ちゃん、どうしたなのです? まどかはどう見てもまどかだと思うなのです」
ええ、どっからどう見てもまどかそのものだわ。でもどうして? まどかは生きていたとでも言うの? まさか、あれだけの力で殴ったってのに。
「ね、陽香お姉ちゃん」
しかしそれは、やっぱりまどかではなかったらしい。まどかの姿はどんどん変化していき、凜子が現れたのだった。つまり、凜子がまどかに変化していただけってこと? まあ、そりゃそうよね。騙され掛けた私が可笑しかったわ。
「はっはっは、お前らが私を倒せる? 冗談はよせ」
しかしまあ、この人は暇なのかしら。話をしたりすると、結構そのタイミング出現するわよね。もしかして見張ってたり? そこまでの暇人じゃないと思うけど。
「じょーだん? 何言ってるのさ。じょーだんはきみの顔だけだよ☆」
ニッと笑いながら、何気に酷いことを言うスターちゃん。でも魔王はそこまでの短気ではないので、それだけで怒ったりはしない。だってそんな短気な奴なら、簡単に挑発出来てそのまま簡単に嵌められちゃうじゃないの。
「お前の貧弱さも冗談レベルだろ? 全くもう」
でも言い返してる時点で、あまり大人ではないのかも。この人のことだから、笑って終わりにするもんだと思ったわ。
「あ~ら、じょーだんレベルはそっちでしょ。ちょーしにのらないで、人間さん」
二人でそんな言い合いを繰り広げている。もしかしてこの人達、実は仲がよかったりとかするのかしら。だって言い合いが、なんだか喧嘩するほど仲が良い的なレベルなんだもの。
「で、よーは何? あたし、そんな暇じゃないんだけど」




