伝説の始まり
「ありがとうございます。それでは、早速お願いをします。魔界の扉を消すことは出来ますかね」
本当にできるのかしら。こんな扉、消してしまうことなんて。こうして今現在も闇の魔物が溢れている訳だし、急いだ方がいいとは思うけど。
「試してみます。しかし、可能という保証はありませんので」
一匹がそう言うと、そいつらは扉へ向かって突っ込んで行った。そして一斉に呪文を唱えていた。しかし呪文を唱え終わっても、扉は消えていなかった。失敗だった、そうゆうことなのかしら。
「命令は最優先です」
そう呟き、また呪文を唱え始める。そして呪文が終わったとき、扉と共に光の魔物も消え去っていた。私と悠馬が握っていたステッキも、もうなくなっていた。
「魔界の扉を消すことはできました。しかし、もう力を失ってしまうとは。どうしましょう。このままでは、魔王と戦うことなど不可能に決まっています」
悠馬が不可能っていうんだから、きっと不可能なのでしょう。でも私は、そんなことで諦めたりなんかしたくないわ。何かできないのかしら。
「”legend stone”をお貸し致しますわ。それでどうですこと」
絶望したような表情で、レジェンド様はそう言った。その瞳に希望はなかったが、希望を探そうとしているようにも見えた。
「危険すぎますね。魔王が全てのストーンを手にすれば、もう僕達に出来ることはなくなります。それを阻止する為にも、”legend stone”だけは守りたいものです。そのような賭け……」
悠馬は迷っているようだった。妖精たちも躊躇いがあるみたい。でもまあ当然よね。どうせそれが最後のストーンになるだろうし、守り通さなきゃならないわ。
「でも、そうでもしなきゃ勝てはしませんわ。それに、いずれは奪いに来るに決まっていますもの。その時に足掻くのなら、チャンスを狙って挑んだ方がマシじゃなくって? 少なくともあたくしはそう思いますわ」
なるほど、さすがはレジェンド様だわ。伝説なのは名前だけじゃない、そう考えていいのかしら。私もレジェンド様の意見に賛成しようかしら。
「気を付けなければなりませんからね。警戒を緩めない、それならいいのではありませんか? 出来るだけ、持っているということを隠すことも必要ですよね」
まあ確かに、見せびらかして悪戯に警戒心を高めさせる訳にはいかないわ。魔王だなんて、そんな生意気な奴はこの私がぶっ倒してやるんだから。
「任せて下さい。隠蔽などは得意分野です」




