魔物を消す為に
「扉はもう開いてしまっています。だからここに来たのですよ」
微笑んだ悠馬は走り出した。
「折角来て頂きましたが、急いで山を降りますわよ。急いで下さいまし」
レジェンド様も後を追って走り出した。レジェンド様が動くだなんて、中々ないことなのよね。こんな山に封印されて、死んだようなものだもの。
「ボーっとしてるんじゃないわよ」
私も妖精たちに声を掛け、二人の後を追って走り出した。登るときに比べて、何だか体が軽いように感じるのはなぜかしら。すぐに降りて行けるわ。
「ここからは飛行可能ですから、いい降り方がありましてよ」
微笑んだレジェンド様は、山から離れたところへ飛んで行く。どこへ行くつもりなのかしら。
「ここまで来れば大丈夫ですわ。力を抜いて落ちれば早いでしょう」
そしてレジェンド様は高速で落下していく。なるほど、それは速そうね。楽に終わるし。そう思い私も落下していく。
「意外に痛かったですわね」
そりゃそうでしょうよ。
「まあ、時間短縮できたからいいじゃない」
別に死ぬわけじゃないんだし、急ぐにはいい手段だったと思うわ。
「まず魔界の扉があるところへ連れて行って下さいまし」
「はい、了解です」
他の妖精たちが来るのを待たずに、悠馬は飛び立ってしまった。
「大丈夫? 急いでね」
私らしくもない応援の言葉を掛け、私も悠馬の後を追った。
「これは不味いですわね、以前だってここまでではなかったですもの」
驚愕の表情でいうレジェンド様。以前って何なのかしら。
「はい、相当不味いんですよ。僕のこの姿では、魔界の扉を消すことは出来ないのです。魔物を消し去ることすらできないのです」
悠馬の元の姿だったら、魔界の扉を消すことは出来るのね。しかし、魔物を消すことくらい出来る筈だわ。消し去ることは出来なくたって大丈夫よ。人数がいるわ、何とか頑張ることくらいできると思うわよ。
「あたくしに任せて下さいまし」
さすがはレジェンド様ね、たった一言で魔物を消してくれたわ。
「本当に任せて大丈夫なのでしょうか」
あまりに湧く魔物に、レジェンド様の顔は引き攣り気味だった。その様子を見て、悠馬は心配そうに問い掛ける。
「ごめんあそばせ。遠慮させて戴きますわ」
確かに、この数を消し去るのは無理でしょうね。たとえレジェンド様だとしても、発生源を何とかしない限り無理よ。
「どうしましょうか。魔界の扉を消せればいいんですけど」
そんなことが出来るなら苦労はしないわ。開くのを止めるのすらできなかったのに、消すだなんて以ての外だわ。




