もう一枚上手
こんなところに家。そんなの明らかに可笑しいから、ここにレジェンド様がいるとみていいのでしょう。
「どなたですこと? あたくしのところに来るなんて、普通の人間ではありませんわね。まあ、辿り着けたからご褒美に入っても宜しくってよ」
あまり好きじゃないタイプの、偉そうな声で偉そうな言葉が聞こえてきた。
「感謝します。皆、くれぐれも失礼が無いようにするんですよ」
振り返って微笑むと、扉を開けて悠馬は入って行った。それに続いて、私達も入らせて貰う。でも先に行っている筈の部隊がいないわ。もしかしてどこかでっ? 心配になって来るわ。どうしたのかしら。
てか、さすがはレジェンド様ね。煌びやかなドレスに身を包み、羽は他の妖精など比べ物にならないほど大きい。レースのように可愛らしい模様の付いた薄い羽は、キラキラと輝きを放っている。後ろ髪は腰まで真っ直ぐ伸び、一部だけカールが掛かっていて前に出してある。
そして何よりも金色だ。服も羽も髪も、全部金色だった。もう眩しくて眩しくて仕方がなかった。
「あら、羅刹さ」
「僕は川崎悠馬と申します。お初にお目に掛かりました」
レジェンド様は何か言おうとしていたが、悠馬はそれに被せてそう言った。
「何を仰っているんですの? まさか、あなたのことを忘れると思いまして? あたくし、結構記憶に残っていましてよ。珍しいお客でしたもの」
確かに悠馬、行ったことあるって言ってたわ。でもさっきお初にって、どうゆうことなのかしら。可笑しいわよね。
「ここに来るのは基本的に魔物か妖精。来たとしても、天使や悪魔で限界でしたわ。人間が来た! そう思って驚きましてよ。そしたら神だったなんて、もっと驚きでしたわ。それまでもそれからも、神はあなたしか来ていませんわよ」
まあ、神が直々に動くなんて聞かないものね。緊急事態の時と、好奇心旺盛な神だけでしょう。
「何の話ですか? 僕はこの通りただの人間ですよ。魔力を感じて下さい、そうすれば納得できる筈です。鬼神の魔力ではありませんから」
確かに魔力がかなりないらしいし、人間とは思えなくても神とも思えないでしょうね。妖精よりも弱い程度、今の悠馬の魔力はそれくらいしか感じないわ。
「あら? あたくし鬼神だなんて言いましたかしら。神としか言ってなくってよ」
ニヤリと嫌らしく笑うレジェンド様。うわぁ、完全に嫌なタイプの人だわ。
「……いいえ、羅刹と仰ったではありませんか。それくらい知っております」




