人間の心
魔界を許さないってことは、魔物を許さないってことよね。魔物を絶滅へと追い込むってこと? それはいくらなんでもえげつないかしら。
「レジェンド様の元へ向かった部隊との合流。ここにいても仕方ありません」
落ち着いた低い声で、ブックちゃんはそう言ったわ。でもその声は震えていた。俯いていて顔は見えないが、泣いているんだと思う。
「そうですね、急ぎましょう。失敗に終わらせない為に」
折角二手に分かれたのに、そのせいで人数不足両方失敗なんて避けたいわ。急いでレジェンド様のところへ向かって、合流を図るべきよね。ブックちゃんの判断は正しいと思う。
「全速力で行くわよ」
頷き合い、私達は全力で飛んだ。先頭を悠馬が、そしてその後ろに私達が続く感じである。だってレジェンド様がいる場所知らないんだもん。着いて行くことしかできないわ。でも、力を緩める必要なんてないわね。だって悠馬が私の限界のスピードに合わせてくれてるだろうから。
「多分ここだと思います。さあ、急いで着いて来て下さい」
辿り着いたらしいが、誰にも会うことはなかった。まああっちも全速力で行ってくれただろうから、追いつく訳なんかないわよね。
「恐ろしいですが、急がないといけませんよね」
山を登るのは面倒なので、山の上まで飛んで行った。しかし途中で、上へ上がれなくなってしまう。
「これ以上は無理らしいですね。仕方がありません。道には障害が多いでしょうが、走って行くことにしましょう」
悠馬の指示を受けて、私達は道へ着地した。妖精すら飛べないらしく、小さな体で走るのは私や悠馬より大変だと思う。
「僕に着いて来て下さいね? 行ったことありますので、変わってなければ案内できます」
私は必死に悠馬の後を追った。でも、飛べないってこんなにも不便だったのね。大きな岩も懸命に登り、悠馬の後をどんどん追っていく。所々妖精には登れないだろうとこもあるので、私が手を差し出して登らせてあげたりもする。でもだったら、妖精たちはどうやって進んだんだろう。もしかして、どっかで迷っちゃったりしてるのかな? あぁあ、急に心配になってきたわ。
「この先です。もう少しですので、何とか頑張って下さい」
どれくらい進み続けたか、体力も限界に近付いていた頃悠馬はそう言ってくれた。でも、悠馬にも優しいところがあるのね。自分も辛いだろうに、励ましの言葉をずっと掛け続けてくれたんだから。
「レジェンド様、失礼致しますね」




