恋の予感
信じてくれると言っているのだから、素直に喜ばせて貰おう。
「着いて来て下さい。それでは、ファイヤーちゃんは行って下さい。皆はファイヤーちゃんに続きますよ」
同時に返事をして頷くと、私達はファイヤーちゃんの後を追って飛び立ったのであった。レジェンド様が住む山、どれくらい過酷なところなのだろうか。きっと、そう簡単には登れはしないのだろう。だけど、私は皆を守りたいから。
何だかんだ言ったって、人間のことを守りたいと思っているから。だから、どんなに過酷な戦いだって耐えて見せるんだ。平和が好きだから。平和を好む彼のことが好きだから。
誰なのかは覚えていないのだけど、誰かの為にいつも一生懸命な彼のことが好きだった気がする。弱きものをいつも助ける、弱い者虐めを絶対に許さない彼が。
「しかし陽香さん、レジェンド様ってどのような方なのか知っていらっしゃいますか? 見た目とか性格とか……」
小声で私にそう問い掛ける悠馬の声は、どこか震えているような気がした。
「何? ビビってる訳? だっさ」
私だって怖いわ。だからこそ、自分も怖がらないよう悠馬にそう言ってやった。
「妖精王ですよ? 確かにフルパワーの僕からしてみれば恐れるに足りない存在ですが、今の僕は殆ど力を持ちません。その状態で妖精王と対面するのは、精神的にちょっときついんじゃないかと思いましてね。あまり正義に接し続けていると、鬼神としての自分を失ってしまいそうでして……」
鬼神としての悠馬? 想像できないけど、失っちゃいけないものなのかしら。
「はぁあ、鬼神と言う物は嬉しくないものです。同じ神である陽香さんでも、力を持ち続けてしまった気持ちは分からないのでしょう。力を失うという事は、僕が昔から望んでいたことでした。だって、力さえなければ恋をすることが出来ると思っていましたから。彼女に近付けると思っていましたから」
恋? 何それ、鬼神姿の悠馬より想像できないんだけど。恋する悠馬? 無理無理、絶対想像できないって。
「好きな人、いたんだ。ちょっと意外ね。私もさっきさ、好きな人を思い出した気がするの。それが誰なのか分からないけど、優しい人だと思うわ。それで私、その人の為に戦ってるんじゃないかって気分になって来ちゃったわ。可笑しいわね。顔も名前も分からないのに……」
悠馬からしてみれば、恋する私なんて想像できないんでしょうね。ええ、私自身も意外だと思っているわ。似合わないわよね。




