伝説の山へ
でもだったら、今は何をすればいいんだろう。
「魔界の扉? あれが今現れてしまっているのですかっ!? 魔王を名乗る方が現れたのでヤバいとは思いましたが、それは相当ヤバいタイプじゃないですか」
一人で驚き慌てているのは、一番頭がよさそうなブックちゃん。
「確かに大変な事態ではありますが、妖精たちの力を合わせれば何とかなるのでは? 魔界の扉を元の場所に戻す為にも、勿論協力してくれますよね」
冷静に喋る悠馬は、慌てている気配など微塵もないのであった。
「今すぐ行動しなくていいのですか? 魔界の扉以上に警戒すべきことが、優先すべきことがっ! 今どこかで起こっているとでも言うのですか」
しかしブックちゃんはかなり慌てている様子。だとしても、だとしても悠馬が冷静なんだから大丈夫なのよ。信じるしかないわ。
「魔界の扉の元に向かったところで、今の状態では何も出来ないでしょう。一旦妖精王と話をしに行きます。妖精たちの力を合わせると言うのに、妖精王がいなくては力が足りませんから」
妖精王? それって、レジェンド様のことよね当然。でもどこにいるのかも分からないし、そもそも存在が伝説だとも言われているわ。どうやって話なんてするのよ。
「レジェンド様と話なんて無理っすよ! アタシが守ってた村が、レジェンド様が住むと言われている山に近かったんすよ。でもあれムリっすって。たまに伝説の山に挑むんもいたんすけど、帰ってくる人なんていないんすから! あんな危険なとこ、行ける筈がないっす」
不可能と悠馬を説得しようとしているのはファイヤーちゃん。赤いショートな髪は、元気に色んな方向へ跳ねている。赤く薄い羽は、他の妖精に比べてもかなり大きい。
「行ける筈ない……、ですか。それでも行くしかありません。僕達の中に一人も人間なんていません。人間と同じ結果が帰って来るとは限りませんよ」
確かに、私達の中に人間なんてもういないわ。だってまどかを、この手で殺してしまったから……。
「あたしらは無敵、伝説の山だって負けるわけないもんね」
他の皆が無理だという表情をしているのに対し、ただ一人スターちゃんだけは自信満々のようだった。
「それでは、早く行きましょうか。ファイヤーちゃん、場所を知っていらっしゃるんですよね? 案内お願いします」
一番不可能と否定していたファイヤーちゃんだが、渋々と言うように頷いたのであった。
「アタシは山に挑戦して、それから見なくなる人もいっぱい知ってやす。危険なところだってことは、メッチャ知ってっけど! でも、アタシらを助けてくれた奴を信じることにするっすよ」




