村人救助
ストーンを封印する、そう約束したものね。まあそう言われてみれば、約束を守ったといえないこともないかもしれない。
「僕の後を着いて来て下さい。しかし陽香さん、危険を感じたらすぐに避難して結構ですので」
悠馬の言葉に小さく頷き、私は取り敢えず気配を消す。そして悠馬の後を追い、どんどん下って行く。光の道は見えないけれど、多分悠馬はもう場所は分かっているのだろう。
「ここのようです」
突然悠馬は立ち止まり、建物の屋根に着地した。
「恐らくここに妖精はいますので、気配だけじゃなく姿を透明にしていきましょうか。目に見えてしまうようじゃ、気配を消していても仕方がありません」
ふっと微笑んで悠馬は、私と悠馬に何かの魔法を掛けた。知らない魔法だったけど、きっとこれで私達は透明になっているということなのだろう。
「物音をたてないよう、慎重に慎重にお願いしますね」
小声でそう言うと、悠馬は屋根から飛び降りて入口から入って行く。隣を通っている人が不審がらないのを見ると、本当に目に見えていないのだろう。しかし不安を拭うことは出来ない。物凄い不安を抱きながらも、私は急いで悠馬の後を追った。静かにを意識してはいるが、悠馬はさっさと行ってしまうんだから酷い。
いきなり止まり悠馬は、何かを指差しているようだった。指差している先を見てみると、そこには捕らえられたと思われる村人たちが乱暴に押し詰められていた。
『このままじゃ死んでしまいます』
魔力を発生させたくないせいか、悠馬は手話なんていう方法でそう伝えてきた。
『助けるしかないわね』
手話にはあまり自信がないのだけれど、私は必死に悠馬にそう伝えた。それに対して悠馬頷いて返し、ストーンを取り出した。そして何かを念じていると、ストーンが一部欠けてしまった。
『これで効果発動です。御心配などいりません』
そう伝えてくれると悠馬は、自信満々とでも言うように強気な笑顔を向けてくれた。
欠けたストーンの一部は飛んで行き、光を発し始めてしまう。するとぐったりしていた村人たちは起き上がり、光に触れてワープして行った。
『魔物たちに、光は見えていません。突然村人たちが起き上がり、そして消えて行ってしまった。驚き慌て、考えても理由は分からないでしょう』
これがストーンの力なんだ。ストーンが本当に力を発揮するところなんて、正直な話初めて見たわ。
「下がざわついてますし、これなら話しても声は聞こえないでしょう」
気付いた魔物たちが慌て始めると、ニヤリと笑って悠馬はそう言った。




