妖精救助へ
私達は悪いことをする訳じゃない。だって、魔王に掴まった妖精の救助をするんだから。
「ストーンの力を解禁します。陽香さん、少し目を瞑っていては貰えませんか? ストーンの力を解禁した瞬間は、いくら僕と言えども本来の姿に戻ってしまうことでしょう。僕の鬼神としての姿、女神でない貴方には見られたくありません」
悠馬の鬼神としての姿? 見たくて仕方がないが、取り敢えず頷いておいた。目を瞑り私は、悠馬がストーンの力を解禁する瞬間を待つ。
ストーンの力が解禁されれば恐らく、莫大な魔力が発生するんじゃないかと思う。そして大きな魔力であれば、いくら私でも気付くことが出来る筈だわ。
目を瞑ってじっと待っていると、隣で大きな魔力を感じた。遂にストーンが、遂に悠馬が……っ! 興味津々で目を開けようとするが、私の目は開かなかった。つまり悠馬は、本当に見られたくないってことなのね。魔法で目を開くことが出来なくする程なんて、相当なコンプレックスなのかしら。益々気になるわ。
「陽香さん、もういいですよ」
そんな悠馬の優しい声が聞こえてくると、私はやっと目を開くことが出来た。
「それでは、この道を辿って妖精の元へ向かいましょう。早くしないと、望海さんや歩さんに邪魔をされてしまいます」
確かに私達は妖精を救うためにやるけれど、そんなことを信じる筈がないものね。元々嘘を吐いているのだから、持ち出すなんてこと何があっても出来ないわ。
「ええ、そうしましょう」
私は取り敢えず悠馬に肯定の言葉を返しておいて、光の道を進み始めた。ふっふーん! いくら今の私の魔力は弱いって言ったって、空を飛ぶくらいの魔力はあるんだから。
「大丈夫ですか? 一応ストーンによる補佐のおかげで魔力不足になることは少ないと考えられますが、今の陽香さんの体では飛ぶことすら結構な負担となるでしょう」
心配の言葉を掛けてくれる悠馬だけど、そんなの余計な御世話だっつーの。私もそこまで衰えてはいないわ。
「大丈夫よ。空を飛ぶことは、以前常にやっていたと思うから……。やり方はマスターしてるもの、魔力消費も私の技術で最低限まで抑えられるわ」
光の道を辿って私達が飛んでいると、ずっと登る一方だった光の道が途中で下りに変わった。
「この近くにスターちゃんがいる。光が下りになったということは、それを表しているのです。それでは陽香さん、ここからは気配を消して行きましょう。念には念を、ここでストーンの封印を行いましょう。これで約束は守ることになりますね」




