溢れてく呪い
「まどかは、陽香お姉ちゃんを守れたなのですか?」
まどかはふらふらと立ち上がって言った。
「うん、まどかは私の恩人よ」
私はまどかの頭を、優しく撫でてあげた。
「陽香お姉ちゃんのこと助けたから、今度は陽香お姉ちゃんがまどかを助けてなのです」
そう言ってニコッと笑うと、まどかは近くに落ちていた巾着を拾った。ああ、気になるわよね。その巾着、何なのかしら。
「ねえまどか、何が入っていたの?」
巾着の中をのぞいたまどかに、私は問い掛けた。
「えっとね、お金なのです。いっぱい入ってるなのです」
お金って言うのは、ここでの富の表しでいいのよね。ならば、持っていて損はなさそうだわ。取り敢えず拾いましょう。
「全部拾い集めてみて。きっと何かに使えるわ」
「はいなのです、まどか頑張るなのです」
まどかは次々に、巾着を拾っていった。さて、私も拾うとしようかしら。ぼろくて汚いから触りたくないという気持ちもあるけど、どうせ手は黒いスライム状の何かが纏わり付いていてグチャグチャに汚れているわ。今更いいでしょう。
私達は、手分けして沢山の巾着を拾っていった。そして私が最後の巾着を拾ったとき、掴んでいる右手が酷く痺れた。何!?私は驚いて、つい巾着を投げ捨ててしまった。その衝撃のせいなのか、巾着から可笑しな毛虫のようなものが大量に溢れ出てきた。そしてそのまま飛んで、何匹も私に当たった。
その毛虫は私の体を、うねうねと動いて行く。気持ち悪いのよっ!
「…っ、…ゃっ、…こんのっ!」
私は手を振り回したりして、気持ち悪いそれを振り払った。しかしそんなことしたので当然、私を離れた毛虫は隣のまどかについた。
「嫌なのです、痛いなのです」
まどかは小さな手で、精一杯に毛虫を取っていく。しかし私に、それを助ける為に入る勇気なんてなかった。
「痛かったなのですぅ」
周囲にその毛虫が見えなくなった頃には、毛虫が動き回った場所が赤く腫れ上がっていた。私は右手足くらいのものだったが、まどかは違った。
私より体が小さいのもあるのか、体の色々な所が腫れていた。もう目も当てられないようなものだ。
「陽香お姉ちゃん、大丈夫なのです?陽香お姉ちゃんが痛くないなら、早く街に行こうなのです」
は?まどか!?まどかは何と、そんな状態なのに歩き出した。
「ちょっと、大丈夫なの?」
私は慌ててまどかのところに行き、聞いた。
「まどかは全然痛くないなのです。だから、大丈夫なのです」
赤どころか青紫色のような色になって腫れているところも所々あるし、もしかして神経殺っちゃったのかしら。だったら、痛がってるのよりずっと危ないじゃない。でもまあ、街に行けば医者もいるでしょう。