ストーンを守る為
「弄るって、形を変えるって……どうなさるおつもりですこと?」
望海の目は最早、悠馬を敵として捕らえてしまいそうなくらいに怯えていた。
「この人、本当に信じられるわけ? ストーンを預けるなんて、していいわけ? ストーンは村にとって、大切なものなのよ」
歩は最早、悠馬を信じようなんていう気からしてないらしい。
「別にお断り戴いても結構ですが、どのようにして魔王から守るおつもりですか? 貴方は自分の村で、それが出来たのですか? 出来ると仰るのならば、僕は貴方達にお任せいたしますよ」
あっ、こりゃ腹立つ。悠馬はわざと腹立たしいいやらしい表情を浮かべて、歩に向かってそう言うのであった。
「魔王に取られようと悠馬さんに盗られようと、どっちでも同じでしてよ。だったらまだ、悠馬さんの可能性に賭けてみる価値もあると思いますわ。黙って魔王が来るのを待ってるなんて、絶対に嫌ですもの……」
ほぼ絶望に近いような表情ながらも、望海は悠馬の意見を許可したということだろう。
「さあ悠馬さん、ストーンを弄って下さっても宜しくってよ。魔王にばれないように、お願い致しますわね」
「はい☆」
望海の言葉を受けて、悠馬は本当に嬉しそうな表情で返事をした。
「いいの? ストーンをあんな奴に任せちゃって」
走り去っていく悠馬を見て、絶望の表情の望海を見て。それでもまだ歩は、そんなことを言っているのであった。
「悠馬は確かに性格悪いけど、騙し取ったりはしないと思うわ。コソコソと窃盗なんてしない。欲しいものがあれば、堂々と奪い取るわ。嫌味まで言ってね」
望海はもう喋る気もしなそうなので、私が特別に親切に悠馬のことを庇ってあげる。
「それに悠馬はね、人間を大切にしていたわ……。自分でも不平等を感じてるくらいに……、だからストーンを奪ったりしないの」
魔物側を成敗して、人間を救おうとしていたわ。だから人間を守るストーンを、魔物に力を与えるストーンにしたりはしない。そんなこと、絶対にしたくない筈。
「訳分かんない。そもそも、あんたたち信じられない過ぎんのよ」
はぁ? 何私まで悠馬と同じ分類にされてる訳? こっちが信じらんないわ。
「私は大丈夫でしてよ。もし悠馬さんが盗もうと計画されていらっしゃるのなら、絶対にこの手で止めて見せますわ。止めて、見せますわ……」
うわ、どうしよう。何か望海さん、完全に故障しちゃってますね。
「だ、そうよ。本人もこう言ってるんだし、余計な心配したって無駄ね」
しかし私は歩に言ってやる為に、故障中の望海には何も言わないことに決定した。




