消える村
「別に、お花は痛くありませんもん。リボンとか付けて、ピンク色くてみたいなのが痛々しい武器と言うものです。そんなの、魔法少女好きのおっさんしか使いませんからね。でも僕のこれなら、老若男女迷うことなく使用ができると思いますね」
ちょっと待ってくれ、悠馬は本気で言っているのだろうか。らしくない、わざとか?
何にしても、私は悠馬の考えることなどどうだって言いさ。だって考えたところで、そんなの分かるはずが無いのだから。
「そんなどうしようもないこと言ってないで、光の魔物って奴を呼び出しましょ。そんなに強いなら、早く見てみたいものだわ」
いつまでも言い合ってようとしているので、仕方がなくこの私が直々にとめてあげる。
「はい、準備を進めた方が宜しいでしょう」
さっきまで子供のように望海と悠馬は言い合っていた、しかし今は別人のような表情をしている。完全に笑みは消え去り瞳は真剣な眼差しそのもの、この人たちから笑顔が消え去るんじゃ相当不味いんだろうな。
「しかしあまり派手に行って、勘付かれてしまえば厄介です。そこで望海さんにお願いです」
そこで一旦口を閉じ、頭を下げて悠馬は続きを言う。
「村を消し去ってしまって下さい。誰にも気付かれないように……、完っ全に完璧に消滅させて下さい」
村を……、消し去る?
「了解致しましたわ、少々お待ち下さいまし」
しかし望海は待っていたとでも言うように、ニヤリと笑って了解してしまったのであった。
「結界を張り直す、そういうことでいいのかしら?」
簡単に言ってくれた歩の言葉は、どうやら正しかったらしく悠馬は小さく頷いた。
表情を見る限り、大正解ではなさそうだけどね。
「結界とは少し、ほんの少しだけ違うんです。出来るだけ魔力消費は少なくしたいので、侵入は可能の状態にしておきましょう」
侵入可能って、そんじゃどんな結界なのよ。
「入ろうと思えば入れるような状態、なら入ろうと思わせなければいいのです」
へえー、どーすんだろー。
「空中にでも浮かばせますこと?」
ぼけているのかと思えば、バリバリマジな顔で望海は問い掛けているのであった。
「それでもいいのですが、魔力の消費量を抑えることが難しいでしょう。……言い直します、不可能でしょう」
最初は難しいと言った悠馬だったが、少しして不可能に言い換えた。
「入る気さえなくす、そんな村になさるのでしょう?」
分かってるとでも言いたげなドヤ顔で言った望海だが、悠馬が首を横に振ったのを見て顔を赤くする。
「そんなんじゃありません、もっと簡単なものですよ」




