時は満ちて
「そんなの分かっています、僕もそう思いますよ。だから当然、協力して下さりますよね? 光の魔物、望海さんもお気付きになっていらっしゃることでしょう」
ああ、そういえば話してたわね。歩が出てきやがったせいで、完全に記憶から消え去ってしまっていたわ。
「次闇の魔物が出現した時、その時こそ光の魔物を呼び出す時だと私は考えますわ」
そして望海と悠馬は顔を見合わせ、同時に私の方を見て微笑んでいる。何よ、何だって言うの? 気持ち悪いわね。
「いいえ、僕はそう思いませんね。だってわざわざこの村に闇の魔物が来るのを待つなんて、僕だったら億劫になってしまいますよ」
まあ悠馬の言っていることも、私は分かるわ。望海が言っていることの方が私たちに有利だとは思うけど、そんな安全策を取らなくとも問題ないような気がするわ。
「光の魔物? そんなな伝説に、今は頼っている場合じゃないでしょ。望海ちゃん、もうちょっと現実的な方法を考えた方がいいと思うわ」
ヤル気は満々そうだったのだが、歩は真面目そうな顔で否定してきた。
「歩ちゃん……、あのね。もしかしたら光の魔物が、現実的な話になるかもしれないんでしてよ。実現可能な話だからこそ、現実可能な話になったからこそ……。私、他の方法を考える気になんてなりませんわ。だから歩ちゃん、伝説に頼っている私を信じては貰えませんかしら」
それでも歩はまだ、納得できないというような表情で考えていた。
「人間の運命が掛かっているってのに……、そうゆうところ……望海ちゃんらしいわ。でもそうゆうとこ、私は好きじゃない望海ちゃんよ。ふふっ、仕方ないわね。望海ちゃんはそれを実行して、失敗した時の為に私は他の策も考えておくわ」
めんどくさいわね。念には念を入れてとか、そうゆうのはめんどくさいから私嫌~い。
「歩ちゃんは慎重ですわね。宜しくお願い致しますわね、私は光の魔物の呼び出しに挑戦致します」
そこまで言って微笑むと、望海は再び歩き始めた。その時、私は多大なる悪い気配を感じた。
「……っ! 陽香さん、分かりましたか?」
私に近寄ってきて、耳元で悠馬がそう言ってきた。『分かりましたか』というこれは、先程私が感じた気配のことを差しているのかしらね。
「ええ、一応」
しかし望海や歩は何も感じていない様子だし、わざわざ悠馬が小声で言ってきたのだから。そう思って私は、悠馬にも小声で返した。
「普通の魔物の物ではないと思います。この気配、何から感じられる物でしょう」
えっ? 悠馬でさえ分からないって言うの? そんなことを私に言われたって、分かる筈がないじゃないの。




