言葉と気持ち
いくら私と言えども、救世主と呼ばれるのは何か……。助けた覚えがないからこそ、そう言われると何か……腹立つわ。
「救世主だなんて、そんなことないわ。私こそ、望海に助けて貰ったわ」
うわ~、私滅茶苦茶いい人じゃん。こんなこと言えるんだよ? 作り笑顔だって、あんま好きじゃないけど出来はするんだよ? さすが私、超演技派女優じゃないの。
「陽香ちゃんか……、宜しくね! 私のことは、気軽に姫様とでも呼んでくれればいいよ」
ふざけんな! この私が、この私がそんなこと言う訳ないじゃないの。
「歩ちゃん、冗談を言っている場合じゃなくってよ。村人の生き残りや妖精を、助け出さなければならないんですもの……」
いや、望海のこのテンションもウザいわ。あんましんみりしててもウザったるいけど、冗談とか言ってふざけててもウザったるいわ。まあ最終的な結論として、こいつらウザったるいわ。
「望海ちゃん、スターちゃんも攫われてしまったの? 生き残りはどれくらいなのよ」
望海がうつったかのように歩も深刻な顔になり、腕を組んで低い声で問い掛けて来た。
「ええ、スターちゃんも攫われましてよ。最後までストーンを守りましたのよ、スターちゃんが追い返して下さったんですもの。でも攫われてしまった為、無事かどうかも分かりかねますわ」
確かにスターちゃんは最後までストーンを守った、そう言うことなのかもしれないわね。でも梨乃にあんなことしたわけで、無事でいられているのかしら。凜子だったらともかく、梨乃なら大丈夫? そんなことないわよね。
「さすがスターちゃんね、伝説の妖精を除けば妖精界最強だものね」
今度は明るい声で言ったのだが、歩の声は少し震えていた。それに歩の声には何だか、怒りが籠もっているかのように感じられた。
「ユメちゃんは……、御無事ですこと?」
望海の質問に歩は、少し悔しそうな表情で首を傾げた。
「分かんない、攫われちゃったもん。私は無事だって信じてるけど……、でもユメちゃんみたいに目立たない子をわざわざ攻撃もしないでしょう」
まあ脅しに使うにしてもストレス発散用にしても、目立っちゃうような人を使う筈だものね? 誰でもいいからという、その場合に限るのだけれど……。
「じゃあ、スターちゃんみたいな子はどうなりますのよ」
ああ、丁度いいわよね。だって妖精がいろいろ並べられてたら、私だとしてもスターちゃんを攻撃の対象……人質代表に選ぶもの。
「そんなの知らないよ、私に言わないで! でも……、スターちゃんの方が危険なのは確かでしょうね」




