忍び寄る黒い影
「そうだね、じゃあ食べ物がありそうな街を探そうよ。まだどこかに残ってるんじゃない?平和な場所が…」
私はまどかを安心させるように、出来るだけ優しく微笑んで見せた。
「なのですか。じゃあ、早く探しに行くなのです」
微笑み返してくれたまどかの後ろに、黒い影が見えた。危ないっ!私は咄嗟にまどかを突き飛ばした。何なの…?
「ギュルル、グルラァ!」
声に驚き振り向いた私の視界に入ったのは、スライムのようにどろっとした暗闇を放つ黒い存在。こいつは、闇の魔物…!ってことは、魔王は関係しているのね。
「ギャラゥ、ギュアァ!」 「ギルル、リュリャラァ!」
凄い量だわ。数十、いや数百くらいいるんじゃない?でもこれくらいなら、今の私の力でも何とか出来るはずよ。
「ハアァァッ!!」
私は腰に刺さっていた剣を抜き、魔物共に切り掛かって行った。いくら私の力を封印されている上、剣の力となる宝石がないとはいえ、こんな雑魚に負けたりはしないわ。
次々に魔物を切りつけて行く。しかし宝石の力が無い為浄化が出来ず、気持ちの悪い体は再生されていってしまう。クソッ、私は負けない。
「まどかは、陽香お姉ちゃんを守るなのです!」
途中でまどかも、闘いに参戦してきた。…はあ、それにしても、疲れて来たわね。
「ギュルルゥ!」
体力の限界が近付いて来て尻餅を搗いてしまった私の真上に、闇の魔物によって黒いボールが出来ていった。このままじゃ不味いわ、死ぬ…。しかし何も出来ず、そのボールが放たれそうになった時に私は、思わず目を瞑ってしまっていた。
「まどかが、守るなのですぅ!!」
これは何?私には眩し過ぎる光が降り注ぎ、辺りに見えるのはまどかと沢山の巾着だけとなった。何があったの?
「ゴホッ!オエッ!」
まどかが吐き出した痰の中には、薄ら血も交じっていた。大丈夫なの?って言うか、本当に今何があったの?