光の魔物を
「光の魔物? それは初めて聞くわ。魔物って、あの黒い奴以外にもいるのね」
生き残りがいないかキョロキョロとして、探し続けながらも私達は会話を続ける。因みにあの少年には、悠馬がいる湖に向かう様指示してあるわ。
「私も実際に見たことがあるわけではありませんが、光の魔物を呼び出すことが出来ると言う道具がこの村にありましてよ。しかしそれは、特別な時に特別な人が使わないと発動しないらしいんですの」
特別な時に特別な人がって、どんだけ特別特別なのよウザったるいわね。
「存在がばれたら盗まれてしまうかもしれません、だから今まで必死に隠してきましたわ。でも今こそ、特別な時なんじゃないかと私は考えますの」
確かに特別と言えば、特別よねぇ? こんだけ村がボロボロになるなんて、滅多にあるもんじゃないわ。
「仮に今が特別な時だとして、特別な人とか……それと方法とかってのはどうなってんのよ。確かなものじゃないのなら、使うべきじゃないと言うのが私の考えね」
慎重に慎重に、それは奥の手にでもしておけばいいわ。光の魔物ってのがどれだけの強さかは分からないけど、守ってきたくらいだから闇の魔物より強いのよね。
「特別な人も、今は穴見村にいますわ。方法も記されているから、問題ないと思いましてよ」
え? 特別な人もいるって、そもそも人自体見当たらないわよ? 何を言っているのかしら。
「随分と、不思議そうな顔をしていらっしゃいますのね? 私、何も不思議なこと言っていないと思いましてよ」
もしかしたら特別な人って、望海自身のことを指しているのかもしれない。……でもだとしたら、今”は”何て言わないわよね。
「望海ちゃん、生きててくれたんだね」
誰? ……ああ、当初の目的を忘れていた。生き残った村人だと思われる若い女性が、苦しそうに笑って望海にそう言った。でも歩いているんだから、そこまでの重傷じゃない筈だわ。
「歩ちゃん、こんなところでどうなさいましたの? 歩ちゃんこそ、生きていらしましたのね。良かった、良かったぁ」
望海の知り合いかしら、でも泣いて喜ぶほどなんじゃ相当よね。
「紹介致しますわね。この方は私の大親友、山吹歩ですわ。私と同じく若くして村長の座に着いたのですが、私よりも先に魔王に襲われてしまわれたんですの。とっても心配で御座いましたけど、……無事で良かったぁ」
二人は抱き合って喜び、やがて話を続けてくれた。
「こちらの方は私を助けてくれた、旅のお方で御座いますわ。小鳥遊陽香さん、救世主と呼んでいれば結構だと思いますわ」




