光の魔物
「ええ、そう致しましょう。私は気配などで捜索致します、陽香さんは私と一緒に宜しくお願い致しますわね。悠馬さんはここで、ストーンを見ていては頂けませんか? まだ諦めてはいないと思われますので、瞬時に対応を」
望海がリーダーぶって私に命令すると言うのが気に喰わなかったのだが、そんなことで不機嫌になってても仕方がないので私は従っておくことにする。
「あっ、望海さん。村の皆は? どうしちったんだ」
綺麗になってしまった村に私達が行った瞬間、幼げな少年が駆け寄ってきた。私にナイフを向けて来た、あの少年だ。折角私が殺さずに説得してやったんだから、生き残ってくれないと困るわ。ちゃんと、ちゃんとまだ生きていたのね。
「お前、助けられたのかよ。もしかして間に合わなかったのか? もしかして、おれのせいなのか……」
間に合わなかったのは正しいけれど、こいつのせいとは言えないわね。あの短い時間で、間に合ったとはとても思えないわ。確かにこいつのせいで無駄になった時間が無ければ、数人は助かったかもしれないわ。でもドラゴンの下に会ったあの死体の数、その短期間で出来たものとは到底考えられないもの。
「貴方のせいではないわ、責任を感じる必要なんてないの。お兄さんを殺されて、貴方も悲しかったのでしょう? これ以上悲しまないで」
気持ち悪い、どんだけいい人ぶってんのよ有り得ない。でもちょっと意外でしょ? 私にだって、優しい言い方くらいできるのよ。見直した? そうよね~。
「どうなさったんですの? 陽香さん、お知り合いでして?」
一方望海は、私の素晴らしい演技の横で不思議そうにしている。
「何でもないわ、他の生き残りを探しましょう」
しかし優しさマックス状態の私は、説明したら少年が悲しくなるんじゃないかと思い何も言わないことにする。
「了解致しましたわ」
まだ不思議そうにはしていたのだが、望海は了解してくれたらしい。
「あっ、質問しても宜しいかしら。ねえ陽香さん、貴方は魔物のことを知っていまして?」
意味が分からない、魔物のことくらい知っているわ。バカにしているのかしら?
「ええ、知ってるわ」
でも私は不機嫌を出さずに、爽やかに優しくそう答えた。
「闇の魔物は先程お会い致しましたわね、でも陽香さんは……本当に光の魔物のことも知っていまして? 魔物は二種類存在致しますのよ」
え? 光の魔物って……? 知らないわ。でも結局、私をバカにしたかったのかしらねぇ。てかそれだったら最初から、光の魔物を知っているか訊けばいいじゃないの。腹立つわね! それでも私はまだ、不機嫌を顔に出さないように努力し続けていた。偉いでしょ~。