満面の笑み
「うぉおぉぉ!!」
私は雄叫びをあげながら、魔物に薙刀を振り下ろす。驚いたようだったのだが魔物たちは、さすがの反射神経で華麗にかわす。そして反撃に入ろうとしたところを、悠馬が容赦なく切り捨てた。黒いスライム状のものが周りに広がっていく、しかし悠馬は気にする様子もない。
私も沢山の魔物たちを、躊躇なく殺していった。やがて私達の足元は、真っ黒に染まっていった。そんなのは関係ない、気にする必要もない。ただただ夢中になって、薙刀を振り回した。抵抗したって私達に魔物たちの攻撃は届かない、届く筈がない。だって攻撃の体勢になんて入ったら、切りやすくなるだけだもの。
暫く私達は、薙刀を振り回し続けていたわ。かなり多くの魔物たちが、今私たちによって殺されたと思う。どれだけの命が消えたかなんて分からない、あれを命だとは考えたくない。そう、私は村人の敵を討ったの。
「酷いなあ、私の仲間をこんな哀しい姿にするなんてね」
え? この声は、あの時の……。
「こんにちは、私凜子って言うんだぁ。今悪い人に、仲間を沢山殺されちゃった」
やっぱり、あの時の少女/凜子……魔王がやって来たのね。ええ、上等じゃないの。勝てるとは思っていないわ、でも二回目。さすがに会うのが二回目なら、前回みたいに恐怖に支配されたりもしない筈。私が私のままでいられれば、取り乱したりしなければ、自分だけでも助かりたいだなんて思わなければ……まどかは……。
「悪い人だなんて、随分と失礼なことを仰るんですね。あくまでも僕達は、正義を称しているのですよ? ははは、桃太郎の鬼退治です」
ニコニコニコニコ、悠馬はいつもよりも笑顔で喋っていた。悠馬は私に何もしてこない、そう思うのだけど怖かった。凜子と言う魔王少女よりも、悠馬の方がずっと怖く感じてしまった。
「そうか、でもそれって……私達のことを悪扱いしてるじゃないか」
声だけだったのだが、遂に凜子は私達の前に姿を現した。変わらずに笑顔だ、満面の笑みを浮かべている。
そう、悠馬と同じように……。




